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アポロ 13:ジム・ラベル&ジェフリー・クルーガー

2010-10-27 08:35:48 | 書評
デトロイト郊外に日本人向けの雑貨屋さんっぽい店があり、古本も扱っている。漫画の方が多いくらいで、たいした品揃えではないのだが、文庫本に時々私のツボにはまる本がある。マイナーなものは価格設定も低めである。

先日書評エントリーした『ただ栄光のために』とか、今回の『アポロ13』は、2週間前に娘にせがまれて学習帳を買ったついでにそこで購入したものだ。『ただ栄光のために』が$0.49、『アポロ13』が$0.99、申し訳ないような値段だ。

さて、映画 "Appolo 13" を見たときから原作の "Lost Moon" を読んでみたいと思っていたが、ひょんなきっかけで翻訳本を先に読む事となった。随分昔に立花隆が訳した『アポロ13号 奇跡の生還 』を読んで、原書を探したのだがかなわず、読むアポロ13号は、不完全燃焼のままであった。

さて、『アポロ13』だが、会話や専門用語で訳のこなれていないところが多々あるものの、内容の重厚さに支えられて読み応えがあった。

原作は、アポロ13号の船長であった Jim Lovell とジャーナリストの共著になっており、Jim Lovell 本人も一人称での登場ではなく、事故全体のドキュメンタリーとなっている。

出だしの毒薬の錠剤(宇宙飛行士がいざと言うときに飲むと言う噂が常にあった)の話から、Jim Lovell の孫娘がアポロ13号の記念品を壊しそうになる最後まで、彼自身の個人的な経験や家族の事も上手く挿入されて、時代背景を上手く映し出している。

アポロ計画は、巨大なプロジェクトの割りに手作り感がある。Jim Lovell も高校生のとき手作りロケットを友人と一緒に打ち上げたりしている。アポロ13号が帰還した要因に NASA の素晴らしいチームワークがあったことは間違いないが、究極的には危機に直面したときの的確な咄嗟の判断をするクルーの力量も大きい。宇宙船の設計から関与しているからこそ次々に持ち上がる問題点に対応可能なのが、ひしひしと伝わってくる。

技術的な詳細とは別に全く知らなかった事実があった。月着陸船には、月面に設置する各種の計測機器の電源として小型の原子炉が搭載してあった。打ち上げに失敗して地球に墜落することも考えて頑丈な耐熱性のセラミック容器に封入してあったのだが、司令船の救命ボートとして地球の引力圏内まで戻ってきたために、地球に墜落する事となった。容器は衝撃に充分耐えれる設計であったが、念の為にニュージーランドの沖の深海に沈むように起動修正を行っている。(結果は書いてない。追記:フィージーの沖で漏れずに沈んでいる。詳細は、コメントで頂いたリンクで)月着陸船に載る位の小型原子炉の出力がどの様なものかは不明だし、原子力発電所から出た使用済みウランがどの位危険なのかは知らないが、究極のリサイクルとして電気自動車の電源に使えないものであろうか?

アポロ11号が月に着陸した夏、漠然と月に行けると思っていた小学2年生であった。アポロ17号以来、人類は地球の引力圏からもう40年近く抜け出せていない。今では考えもしないような事で人工衛星の恩恵に与っているのだが、宇宙開発も、実現しなかった21世紀の夢の一つになりそうだ。

火星は、もっと遠い。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-10-27 18:40:51
>>小型の原子炉
これ原子力電池(RI generator)ではないでしょうか?
http://en.wikipedia.org/wiki/Radioisotope_thermoelectric_generator
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RTG (YS Journal)
2010-10-27 20:02:32
Unknownさん
情報ありがとうございました。その通りです。アポロ13の事も詳しく書いてありました。(SNAP-27) 出力は73Wとたいした事なさそうです。但し、半減期の23年までフル出力、その後も83%での出力が続くそうです。(その後23年?)

電気自動車には出力のキャパでダメそうです。
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