会計スキル・USCPA

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電子マネーで地域通貨 杉並区

2010-05-30 13:35:22 | 金融
また、地域通貨かいって感じですが、土曜日の日経記事にハッとする記事がでていたんですな。
夕張を電子マネーを活用した地域通貨で経済振興ができるだろうと書きましたが、

杉並区で実際にやるらしい、って言うんですね。


ソニーと東京・杉並区、地域電子マネー展開

ソニーは地方自治体と組み、地域で電子マネーを普及させる事業に乗り出す。第1弾として子会社の
フェリカポケットマーケティング(東京・品川)と東京都杉並区は共同で2011年度から、区が支給する
助成金や商店街の金券などのICカードによる管理を始める。利便性の高い電子マネーを活用することで
地域の消費活動の底上げにつなげ、行政コストの削減も目指す。

 杉並区が発行するカードはソニーが開発した電子マネー用の非接触IC技術、フェリカを搭載し、東日本旅客鉄道
(JR東日本)の「スイカ」やイオンの「ワオン」、セブン&アイ・ホールディングスの「ナナコ」といった複数の
電子マネーを1枚で使える。区の窓口などで希望者に数百円で配り、区役所や商店街の店舗などに設置した
専用端末にかざせば入金や買い物の支払いができる。

 杉並区では子どもを持つ世帯に配る区の独自の支援クーポンや、ボランティア活動参加のポイントなどを電子マネー化し、
カードにためられるようになる。電子マネーは区内の店舗だけで利用できるようにしたり、使用期限を自由に設定したりできる。
商店街で使う金券やポイントでも活用できるため、官民のサービスを一枚で利用できるようになる。


減価機能は付かない。しかし、

区の給付を電子マネーで行うこと、
地域の店舗で使えるようにする、

ってとこは実現するようで。

地域でしか使えない、という点は良いとして、ただ、

地域での還流という点ではどうですかね。

イサカアワーにもあったように、地域通貨の一つの目的は、富を地域に留める、というものですな。これを実現するには商店街で使われた地域通貨が、さらに、地域の卸業者ないし、生産者からの仕入れに使われなければならない。

そういう手当なしには、結局、商店街が受け入れた電子マネーは円に転換されて終わり。
現状では、『区の給付が、区の業者に支払われることは確保される』、というところまでですな。

それでも、区の業者振興という点では意味があるんですが、地域で流通する地域通貨、とまでは呼べません。企業間で取引ができるようにし、円への転換に制限を設ける必要があるんですな。

このニュースを読んで、あれこれネットを探ってみましたが、ドコもこの視点が欠けてます。
地域通貨の議論は、大きく二手に分かれているようで、

一つは、『うちわ通貨』を発行している主催者のような、どっちかと言えばひだり系の議論。
もう一つは、地公体をからめた上で、地域振興券や、こういう電子マネーを使って地域通貨を実現しようという議論。

ブームを作ったのは前者の方ですが、本筋は後者で、後者は前者を包含しながら、さらに先に進んで行ける議論の力、潜在力がある。前者はやってることと言ってることがマッチしていないし(利息がつかないことが重要なのか)、もともと閉じた世界を志向していて広がりようもない。

ただ、後者の、実際に地公体を巻き込んで考えられている電子マネーは、『電子マネー』を導入することに目を奪われてしまっていて、電子マネー業者のロジックの範囲にとどまってしまう。

商店街独自ではコストが高すぎるんで、地公体が支援して導入しましょうよ、ついでに、区の給付もこれでやれば、参加する業者しか使えず、区外に流出せず、区内で使われることになりますよ、バウチャー方式の給付は面倒でコストかかるがこれなら簡単安い、区長さんの政策に合致してますよ、みたいなセールストークの範囲にとどまっている感じなんですね。『便利になる』ことだけがウリなんですな。


ここまでやるんなら、もうちょっと手を加えて、還流できる仕組みにしちゃえば良いのにって感じなんですがね。

まあ、杉並区は農業や畜産があるわけじゃなく、卸業者を巻き込んでどうなるってのは難しいかもですな。つまり区だけでは経済が完結しにくくて、還流する流通ルートが作りにくい。人口はそれなりにあっても地産地消は難しい。そういう面で外部と組んで経済圏を作ってゆくことがないと、すぐには無理かも。

ただ、さっすが杉並区、というハナシがあって、

『子育て応援券』という給付が住民に出ていて、これも電子マネーに統合されることになるんでしょうが、

日本一!6万円の「杉並子育て応援券」とは

■おむつやミルクを買う時に、使えないの?
物品の購入には使えません。地域の子育て支援サービスの、「量と質の向上を目的としている」からだそうです(納得)。現金で6万円もらっていたら、きっと将来の教育費のための貯金か、いいお肉や、お刺し身に消えてたかも。それでは、地域の小売業は潤っても「子育て支援サービス」の量と質向上にはなりません(反省)。


物品の購入には使えない。ココ、さすがです。大手スーパーで、おむつを買われても地域に貢献しない。売上の一部は地域で雇用されている従業員の給与なんかで支払われますが、結局本社に吸い上げられて、杉並区にはとどまらない。

地域の、しかもサービス業なら、お金が出ていかない。そもそも仕入れるモノがないですからね。

よーく見てゆくとザルになってて、結局何にも変わらずに特定の人だけが得する政策、みたいなのに慣れさせられている身としては、こういう細かな配慮、良くみないと気がつかず、ぱっと見不便じゃん、だけどこうすることが区のためになる、みたいな工夫には関心させられますな。そういうのがホンモノの政策ってもんでしょう。

サービス業を重点に置いて、電子マネーの参加業者を募って、業者の給与も受け取った電子マネーを一部、そのまま電子マネーで支払う、みたいな形ならば杉並でも還流可能でしょう。サービス業はモノの仕入れがなくて、コストは地域に落ちやすい。

区長さん、もう一歩どうですかね。

おむすび通貨 その8  電子マネーでどうよ

エンデの遺言を読んでみた  地域通貨





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