丸一週間、ずっとおむすび通貨一色でどうもすんません。
なんせ、地域通貨のことはずっと頭の片隅で引っ掛かったままで、いつか整理したいと思っていたんで。それに、地域通貨を考えるということは、通貨一般を考えるということでもありやして、シロートが頭の体操をするには面白い素材なんですな。ギリシアもユーロを離脱しないで、地域通貨を並行して使うなんて、どうかな、とか。
そろそろ通常モードに復帰したいんですが、もういっちょだけ。
例の番組が書籍化されてるんで、この週末で読んでみました。
映像だけでは今一つわからない点まで、活字なら踏み込んでいるはずですよね。
先週、いろいろ書いてきたわけですが、大体のことは、本書にすでに書かれてますな。
先に読むべきであったか。
ただ、ちょっと気がついたことを書いときますと。
1.ウォルマートへの対抗
米国イサカのケースで、未来学者のなんとかさんが、富を地域に留める機能がある、っておっしゃってました。
本書によると、はっきり名指しされてはいませんが、大手安売りショッピングセンター、つまりウォルマートへの抵抗運動も背景にあったみたいです。ウォルマートが進出してくると、物価は安くなるが、地域の購買力は吸収されて、ウォルマート本社へ。そしてその先の中国なんかの生産地に行ってしまう。生産地では子供や女性がひどい労働環境で・・・というパターン。これまでここでも何回も見てきましたやつですね。
反東京、反全国チェーンと前に書いたと思うんですが、イサカじゃウォルマートがはっきりと意識されていたってことで。
2.大規模農場への対抗
イサカアワーで地元の土地を守るって番組で誰かが言ってました。大規模農場は土地が荒らしてしまうんでイサカアワーで地元の零細農家を支援するんだと。これも名指ししてませんが、モンサントなんかの遺伝子組み換え種子と、除草剤の組み合わせで手間いらずの大規模農業のことを言ってるんでしょう。
市場原則を突きつめると、とことん効率化を進めることになりまして、
一つは規模の経済。
一つは省人化。
これが極限まで進んで、結構グロテスクなことになってしまう。
地場の商店や、農家を支援することで、地域を保全する。
少々できるのが遅くなっても、形が整っていなくても、そこは消費者も許容する。
家族経営でやってるんで、給与を払う必要がなくて、つまり、奥さんと子供が無償労働で、作ったものが売れさえすれば儲かりはしなくても何とかやってゆける。地場の消費者が買うかどうかが問題なんで、イサカアワーが地域の提供者と消費者を結びつけるって感じですな。
3.理論、思想面
(1)『悪貨は良貨を駆逐する』原理について
地域通貨が流通するのは、悪貨が良貨を駆逐する原理があるからだ、と私は書いたんですが、地域通貨は悪貨じゃないのか、という議論も、なんと本書にあって、
経済学者のフィッシャーが、米国で減価する地域通貨を広めようとしていた時に、
『悪貨は良貨を駆逐する。代用貨幣が現金にとってかわるなら、これは代用通貨が悪貨であることを証明している』
との批判されてまして、それに対し、
『そのような主張はインフレ時以外は間違っている。流通にある貨幣が流通していないとき、これを駆逐し本当に流通するどんな貨幣も悪貨ではなく良貨である』
と答えたそうです。まあ、流通にある貨幣が流通していないとき、なんて、訳はメタメタですけど、なんとなくわかりますな。インフレでなくて、ひどい不況にあって、貨幣が退蔵されて流通しないとき、減価する代用通貨なら流通するってだけで、それは悪貨にあたらない、という主張です。
フィッシャー大先生には申し訳ありませんが、私は、悪貨だから流通する、減価させて人為的に悪貨度を高める、と一般化した方が、すっきりして、一貫した説明ができると思いますがね。悪貨でいいじゃん。
まあ、呼び方が悪ければ、言い方を変えて、反保蔵需要を高める、とか、わけがわからなくしてしまって。専門書でみかけるような、アホ用語を使ってしのぎましょう。
(2)内輪通貨と本格通貨
地域通貨にも内輪でだけ通用する信任度が低いもの、世間一般に通用する信任度が高いものといろいろあって、低いものほどメンバー間の信頼関係による補完が必要だ、と私は書いたんでした。同じ地域通貨でも求める機能によって、性質が違ってくる
。内輪通貨に減価機能なんて、ほとんど関係ありませんな。そういうことを理論化するには通貨の信任度という概念がどうしても必要になるんですが、本書でこの問題がどう扱われているかと言いますと、
こうした、通貨間のレベルの違い、区別はなされておらず、金利をひたすら強調するのみです。今の貨幣の悪い点が金利に集約されている、という見方なんですな。金利があるから邪魔になって、貨幣が流通しない、てな具合で。
まあ、本書は理論書じゃないんで、そういうことはどうでもいいのかも知れませんが、私にすれば、地域通貨の主催者が金利のつかない通貨が世の中を変える、みたいなことを言うのが、どうも引っかかるんで。本書が発端だったのか。
ゲゼルは、減価する通貨が、経済を変える、と言っただけで、ゼロ金利ではだめでしょう。
地域通貨について考えていたわけでもない。国家レベルでの改革を考えていたんで、小さな町単位の成功であっても、十分ではなかったでしょうナ。
地域通貨は金利がつかないから良きものだ、というのは、ほとんど根拠も意味も不明です。
おむすび通貨が流通するのは、金利がつかないから?
アホか!!
内輪通貨も本格通貨も、一般化して説明するには、これまでやってきたように、『悪貨が良貨を駆逐する原理』と『通貨への信任とその補完論』が必要なんですな。内輪通貨は減価機能をつけなくても悪貨として流通する。信任度の高い本格通貨では減価機能を付けないと悪貨にならない、という風にですな。
(3)ゲゼル
ゲゼルは、労働者のために立ち上がろうとか、平等な社会を、とか考えていたんじゃなさそうですな。彼はビジネスで大成功した実業家であって、反ビジネスでもない。
ただ、反金融資本なんですな。
今、アメりカで議論になっている、
ウォールストリート VS メインストリートの戦いで、
ゲゼルはメインストリート側なんですな。
同時に、彼は土地改革も提唱していて、土地の政府による収用を主張。
つまり、お金は劣化せず放っておいて金利がつく、土地も劣化せず貸すと地代が稼げる。おんなじなんですな。
これが滞留の原因になっててイカンというわけで土地も収用しちゃう。
ゲゼルは市場がどん詰まるのをなんとか掃除しようとした不況の経済学を考えたに違いないんで、地域通貨の親分と呼ぶにはちょっと遠過ぎる感じなんですけど・・・。
ゲゼルの自由通貨運動の一環ってことで、自由に通貨を発行させろってこと ?
とまあ、考えは尽きないんで、ずっとこのまま、地域通貨ブログにしちゃっても良いくらいですけど、とりあえずこの辺で。イロイロととっかかりができたんで、またこのネタに戻ってくることもあるかもですね。
タンザニアのビクトリア湖のナイルパーチのハナシをやってる『ダーウィンの悪夢』って映画があって、あれ、地域通貨で考えると・・・、
ってもうやめときます。
なんせ、地域通貨のことはずっと頭の片隅で引っ掛かったままで、いつか整理したいと思っていたんで。それに、地域通貨を考えるということは、通貨一般を考えるということでもありやして、シロートが頭の体操をするには面白い素材なんですな。ギリシアもユーロを離脱しないで、地域通貨を並行して使うなんて、どうかな、とか。
そろそろ通常モードに復帰したいんですが、もういっちょだけ。
例の番組が書籍化されてるんで、この週末で読んでみました。
映像だけでは今一つわからない点まで、活字なら踏み込んでいるはずですよね。
![]() | エンデの遺言―「根源からお金を問うこと」 |
河邑 厚徳,グループ現代 | |
日本放送出版協会 |
先週、いろいろ書いてきたわけですが、大体のことは、本書にすでに書かれてますな。
先に読むべきであったか。
ただ、ちょっと気がついたことを書いときますと。
1.ウォルマートへの対抗
米国イサカのケースで、未来学者のなんとかさんが、富を地域に留める機能がある、っておっしゃってました。
本書によると、はっきり名指しされてはいませんが、大手安売りショッピングセンター、つまりウォルマートへの抵抗運動も背景にあったみたいです。ウォルマートが進出してくると、物価は安くなるが、地域の購買力は吸収されて、ウォルマート本社へ。そしてその先の中国なんかの生産地に行ってしまう。生産地では子供や女性がひどい労働環境で・・・というパターン。これまでここでも何回も見てきましたやつですね。
反東京、反全国チェーンと前に書いたと思うんですが、イサカじゃウォルマートがはっきりと意識されていたってことで。
2.大規模農場への対抗
イサカアワーで地元の土地を守るって番組で誰かが言ってました。大規模農場は土地が荒らしてしまうんでイサカアワーで地元の零細農家を支援するんだと。これも名指ししてませんが、モンサントなんかの遺伝子組み換え種子と、除草剤の組み合わせで手間いらずの大規模農業のことを言ってるんでしょう。
市場原則を突きつめると、とことん効率化を進めることになりまして、
一つは規模の経済。
一つは省人化。
これが極限まで進んで、結構グロテスクなことになってしまう。
地場の商店や、農家を支援することで、地域を保全する。
少々できるのが遅くなっても、形が整っていなくても、そこは消費者も許容する。
家族経営でやってるんで、給与を払う必要がなくて、つまり、奥さんと子供が無償労働で、作ったものが売れさえすれば儲かりはしなくても何とかやってゆける。地場の消費者が買うかどうかが問題なんで、イサカアワーが地域の提供者と消費者を結びつけるって感じですな。
3.理論、思想面
(1)『悪貨は良貨を駆逐する』原理について
地域通貨が流通するのは、悪貨が良貨を駆逐する原理があるからだ、と私は書いたんですが、地域通貨は悪貨じゃないのか、という議論も、なんと本書にあって、
経済学者のフィッシャーが、米国で減価する地域通貨を広めようとしていた時に、
『悪貨は良貨を駆逐する。代用貨幣が現金にとってかわるなら、これは代用通貨が悪貨であることを証明している』
との批判されてまして、それに対し、
『そのような主張はインフレ時以外は間違っている。流通にある貨幣が流通していないとき、これを駆逐し本当に流通するどんな貨幣も悪貨ではなく良貨である』
と答えたそうです。まあ、流通にある貨幣が流通していないとき、なんて、訳はメタメタですけど、なんとなくわかりますな。インフレでなくて、ひどい不況にあって、貨幣が退蔵されて流通しないとき、減価する代用通貨なら流通するってだけで、それは悪貨にあたらない、という主張です。
フィッシャー大先生には申し訳ありませんが、私は、悪貨だから流通する、減価させて人為的に悪貨度を高める、と一般化した方が、すっきりして、一貫した説明ができると思いますがね。悪貨でいいじゃん。
まあ、呼び方が悪ければ、言い方を変えて、反保蔵需要を高める、とか、わけがわからなくしてしまって。専門書でみかけるような、アホ用語を使ってしのぎましょう。
(2)内輪通貨と本格通貨
地域通貨にも内輪でだけ通用する信任度が低いもの、世間一般に通用する信任度が高いものといろいろあって、低いものほどメンバー間の信頼関係による補完が必要だ、と私は書いたんでした。同じ地域通貨でも求める機能によって、性質が違ってくる
。内輪通貨に減価機能なんて、ほとんど関係ありませんな。そういうことを理論化するには通貨の信任度という概念がどうしても必要になるんですが、本書でこの問題がどう扱われているかと言いますと、
こうした、通貨間のレベルの違い、区別はなされておらず、金利をひたすら強調するのみです。今の貨幣の悪い点が金利に集約されている、という見方なんですな。金利があるから邪魔になって、貨幣が流通しない、てな具合で。
まあ、本書は理論書じゃないんで、そういうことはどうでもいいのかも知れませんが、私にすれば、地域通貨の主催者が金利のつかない通貨が世の中を変える、みたいなことを言うのが、どうも引っかかるんで。本書が発端だったのか。
ゲゼルは、減価する通貨が、経済を変える、と言っただけで、ゼロ金利ではだめでしょう。
地域通貨について考えていたわけでもない。国家レベルでの改革を考えていたんで、小さな町単位の成功であっても、十分ではなかったでしょうナ。
地域通貨は金利がつかないから良きものだ、というのは、ほとんど根拠も意味も不明です。
おむすび通貨が流通するのは、金利がつかないから?
アホか!!
内輪通貨も本格通貨も、一般化して説明するには、これまでやってきたように、『悪貨が良貨を駆逐する原理』と『通貨への信任とその補完論』が必要なんですな。内輪通貨は減価機能をつけなくても悪貨として流通する。信任度の高い本格通貨では減価機能を付けないと悪貨にならない、という風にですな。
(3)ゲゼル
ゲゼルは、労働者のために立ち上がろうとか、平等な社会を、とか考えていたんじゃなさそうですな。彼はビジネスで大成功した実業家であって、反ビジネスでもない。
ただ、反金融資本なんですな。
今、アメりカで議論になっている、
ウォールストリート VS メインストリートの戦いで、
ゲゼルはメインストリート側なんですな。
同時に、彼は土地改革も提唱していて、土地の政府による収用を主張。
つまり、お金は劣化せず放っておいて金利がつく、土地も劣化せず貸すと地代が稼げる。おんなじなんですな。
これが滞留の原因になっててイカンというわけで土地も収用しちゃう。
ゲゼルは市場がどん詰まるのをなんとか掃除しようとした不況の経済学を考えたに違いないんで、地域通貨の親分と呼ぶにはちょっと遠過ぎる感じなんですけど・・・。
ゲゼルの自由通貨運動の一環ってことで、自由に通貨を発行させろってこと ?
とまあ、考えは尽きないんで、ずっとこのまま、地域通貨ブログにしちゃっても良いくらいですけど、とりあえずこの辺で。イロイロととっかかりができたんで、またこのネタに戻ってくることもあるかもですね。
タンザニアのビクトリア湖のナイルパーチのハナシをやってる『ダーウィンの悪夢』って映画があって、あれ、地域通貨で考えると・・・、
ってもうやめときます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます