会計スキル・USCPA

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クルーグマン2

2008-07-08 06:56:17 | 貧困問題
クルーグマンによれば、

①かつて60年代の繁栄の時代は政治によって作られたもの

ルーズベルトによって始められたニューディール政策によるものだ、というんですな。この政策によって税の累進性は高められ、相続税も高くなって、富を維持することが容易でなるなった、組合活動は奨励されて労働分配率が高めれらた、戦時下では賃金統制がなされて低所得者の配分が高まった、等々の政策によって、

もともと格差の大きかった米国経済が、極めて短期間のうちに経済的平等が進んだ、というわけです。『大圧縮の時代』と呼ぶんだそうで。

この政策によって、誰もががんばれば豊かになれる、という中流社会が築かれた。

一般的な理解では、60年代成長の時代は、経済の発展段階がそうだったから、というものというあたりですが、これが政治による、という点が本書の主張の一つです。

政治によって経済的平等が高まって、多数の人が豊かになった、というのが真実であれば、経済的格差が拡がって少数の人が豊かで大多数は貧しくなったということも本当だ、というのが次の、ハナシでして、こちらが本論になるんですが、

②今の格差も政治によって作られたもの

『保守派ムーブメント』とクルーグマンは呼んでますが、特定の、少数のリッチな人たちを代弁する政治的立場が、レーガン以来実際に権力を握るようになって、ニューディール政策を逆転させる政策を取り続け、富裕層の税はどんどん軽くなり、組合は撃退され、セーフティネットがどんどん削られてクリントンの国民皆保険の動きもつぶされて・・・。

経済のグローバル化と技術革新で格差が拡大したという通説には根拠が無いのだ、実際には政治によって作られたのだ、というわけなんですね。

なぜ、こんな政策が民主国家の米国で通用しているのか。

背景には人種差別がある、とクルーグマンは指摘してまして、低所得者への手当てを厚くすることは、黒人に厚くすることにつながる、というわけで、低所得者層の白人と黒人を政治的に分断することで可能になっている。本来低所得者ということで政治的には利害をともにするはずだが・・・。南部の白人が共和党に投票するようになって、・・・。

レトリックのうまいレーガンがそこをたくみにそこをついて、大統領になった。


その後クルーグマンはいろいろと提言してますが、本書についてちょっと注意すべき点としては、

①陰謀説であること。クルーグマンまでこういうことを言い出したということは、かなりそれらしく、状況もひどいということですね。ちまたではエコノミックヒットマンから、911インボー説から,いかさま選挙とか、ありとあらゆる・・・。

②70年代のインフレ,失業、強い組合の時代状況について、かなり閉塞感が高まっていたことについては触れてません。あの時代も若者は親の時代ほど自分は豊かになれないと感じていたはずで、こうした流れから強い保守、レーガンが霧のかなたから登場したという文脈を外してしまうとわけがわからなくなりますね。

もっとも、クルーグマンは新自由主義そのものを否定しているわけではなくて、英国の制度はある程度、見習うべきものとしてあげてます。レーガン、サッチャーによって始まった保守革命ですが、本書は米国の特異性を問題にしています。

で、いまの米国をグローバルスタンダードとみなすのは、やっぱまずいよな、というふうに本書は読むんでしょうかね。



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