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利益無き繁忙

10年位前、工場稼働のために注文を赤字覚悟で取ったという話をよく聞いた。小さい受注を取ると大規模生産現場では品種換えで時間が掛かり文字通り利益無き繁忙が起こる。
結局のところデフレは生産能力>消費で、供給能力が余っていたという事なのであろう。

一方で大量少品種生産から多品種少量生産への移行も進んだ。冒頭のようなことは各社横並びで行うので投資をしたから利益が上がるのではなく、投資をしないと死ぬという事である。なので投資は行われた。利益は当然出ない。固定費は上がる。

僕が金融緩和が景気に直結しないと考えているのは上記の事例による。投資は進んでも利益は確保できず、給与は上がらない。投資のために損益分岐点は上がり、経営は疲弊する。

 

この間品質コストは増大している、経営が『機会損失』を品質保証部以下製造部隊に求めるからである。売上げが上がらず、製造への投資は増え、品質コストの増大は明らかに経営の戦略が間違っているからであろう。
ロジックで売上げと利益が確保できるのであればそれはそれは簡単であるが現実はそうではない。経営が現場に結果責任を追及し出したらもう終わりである。経営が判断しなくてはならないのは『リスクの投資』を求めることであり、その妥当性を判断することだ。 

 

ということは、経営の勝ち負けはあっても全体が好景気になるというのは理解できないのだ。例えば米国でシリコンバレーの好景気が報道されたりするけど、シリコンバレーにオフィスを構えたら好景気に浴するのではなく、勝った企業が価値を提供できたのだと思うのが普通である。シリコンバレーで失敗したベンチャーは成功した企業よりも何千倍も多いであろう。シリコンバレーがベンチャーを構え易いということは想像できるけれども、成功するかしないかは全く別の次元だという事だ。

 

結局、日本の企業も新しいアイデアや新規技術を提案することでしか利益はおろか売上げは叩き出せない。『好景気』という幻想がボンクラでも稼げると思っているのであればそれは大間違いだという事だ。せいぜい利益なき繁忙に付き合うことしか出来ない。最悪の場合暇だ。

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