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持ち家購入は大家と優良店子を兼務する

数年前に衝動買いに近い形で駅近マンションを購入した。先日友人に「家を買ってどう?」と聞かれ、その場では酒を飲んでいたので曖昧に「勢いとタイミング」などと答えたが少し掘り下げてみる。むろん当時考えたことではなく今考えていることであるが。ちなみに現時点ではマンション購入は正解だったと思う。

不動産購入/借家の論争を見ていてなるほどと思ったのは「家の購入は大家になることである、そして自分から店子になる。」というもの。そうだ大家と店子を分けて考えれば損得が分かりやすい。そしてこの論者は「大家になるとは投資で、借金してまで投資する必要は無い」という考え方であった。

この考え方に足りないのは優良店子(自分)が居るという点を無視している。大家の心配は回転率(稼働率)と資産の目減り(店子がきれいに使うかどうか)が最大の関心でその点に短期的には心配が無いことは明白だからだ。あとは大家と言うリスクの小さい投資が割に合うか、転勤時のリスクをどう考えるかという点をすっきりさせればよいことになる。

大家の収益率を仮に6%と設定し、30年の減価償却を見込むとする。これは大家の一般的な収益率と減価償却期間は住宅ローンの返済期間を参考にしている。ということは大家は 収益(年6%)-利息(年3%)-固定資産税が正であれば儲かるということになる、負であれば大家としての投資は負けだ。店子としては家賃と相場がかけ離れていなければ得ということになる。家の購入額÷30(償却年)÷12(月数)×6%+管理費等を家賃として周辺相場と比べれば良いのだ。この場合ほとんどが大家店子共にWin-Winとなるであろう、更新料や回転率などを気にしなくて良いからだ。通常はこのリスクをかけた値が家賃の市場価格であると言える。

大家としてのリスクを考えよう。優良な店子は転勤などで居なくなってしまう可能性もある。周辺家賃相場と大家として欲しい家賃が逆転している場合、投資物件を売却した場合の逆ザヤを考慮する必要がある。また流動性の低い一戸建ては往々にして値が付かないリスクもある。転勤リスクが高い場合は流動性の高い不動産にする方がいいと思われる。当然であるが30年経つと家賃は丸々懐に入るのは言うまでも無い。

店子としてのメリットを考えよう。自分で家賃を払っている人は関係ないが社宅に住んでいる場合、周辺相場と支払い家賃に差があることが多い。会社が家賃補助をしているからだ。家賃補助は収入なので社宅を出ると収入ダウンを意味する。転勤の少ない職場では家賃補助に年限があることが多いので最終的には持ち家を考える場合があると思うがこの場合大家としては30年の減価償却後の家賃丸儲けのメリットが少ない。40歳で社宅補助を打ち切られて家を購入した場合、70歳で完済するので、それから家賃が丸儲けといってもメリットは著しく小さい。その場合減価償却年限を短めに見積もると家賃が高くなり店子にとって損となる。これは頭金を損金として日々貯金しておくことで回避できる、具体的に言えば30歳で3千万の家を買うことを想定すると、同じ家を40歳で買う場合、+1千万の頭金を確保すれば残り20年で減価償却しても良いわけだ。ということは最低年1百万を住宅のためだけに貯金が必要となる。

店子の精神的なメリットを考えよう。家賃補助は収入だが、そのデメリットも同時に存在する。1つ目は家賃の上限、広さの上限が定まっている場合が多い。子どもが大きくなり、個室をあてがう場合自由が効かなくなる。家賃補助という収入と自由度を天秤にかけることになる。2つ目は精神的な自由だ。一国一城の主という言い方がなされるが気分は結構良いものだ。まぁ金には換算できないが。また持ち家は転職時、通勤可能エリアを狭めることになるが、細く長く転職活動を行うことが出来る。通常転職は「直ぐ来てください」と言われる事になると思うので、その時点から家を探すとなると大変だ。「通える範囲」というのはエリアを狭めているが子どもの通学や嫁が働いている場合を考えるとそんなに不自由を感じないものだ。

 また社宅在住者は家賃を払うようには貯金できない、強制力が無いからだ。社宅に入っている人も通常の家賃との差額以上の額を貯金できればあせる必要は無いかもしれない。当然出来るはずだがなかなか出来ないのが現状であろう。一方家を買った人は繰り上げ返済を目論む、子どもの学費や老後の資金を貯めなくてはならないのだが、銀行に貯金するよりは大家に貸した方が(繰り上げ返済した方が)金利差分だけ儲かるので一生懸命貯金することとなる。この「一生懸命」が差し迫っていない社宅在住者との違いであろう。本来社宅在住者は収入が上なので余計に貯金できるはずなのだがそうはなかなかならない。

 

家を買った当時はこんなことを考えているはずも無かった、あとから考えて見て正解だったということだ。景気回復基調が見えない時代で、マンションの値段が底値だったと言う事情がある。なにごとも仕入れ値が大事なのは言うまでも無い。現在まで不動産価格の増大と、さらにガソリン価格の上昇のせいか、駅近マンションは強気の値付けだ。先日も同じマンションに売りが出ていたが買った値段よりも高いではないか(階や場所が違うので単純比較はできないが)。現在のところ私の転勤リスクは小さいのだがいざと言う事を考えると流動性が高いに越したことは無い。

*30歳で30年ローンを組むと返済終了時は60歳、いわゆる定年近い。なので40歳でローンを組む時の目安は20年ということになる。それが無理そうであれば大家として投資不適格と言うこととなる。

コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
家ほしい (shinpei02)
2008-06-15 18:23:31
>持ち家購入は大家と優良店子を兼務する
 なるほど。ちょっと意表をつかれましたが、その通りだと思います。説明もわかりやすかったです。
 
 
 
お金持ちは賃貸 (wood)
2008-06-16 23:39:16
コメントありがとうございます

家関連のエントリー
http://blog.goo.ne.jp/y-tech/e/94559878ba99b56a12e5e10ee8ce330f
でも触れたのですが金持ちは賃貸が多そうですね。
住居費が所得に対して小さければそこで少々の無駄遣いは許される上、生活環境に柔軟に住環境を変えられる方が有利でしょう。だから超高級マンション(六本木ヒルズ等)では賃貸のほうがいいのでしょうね。ITバブルの経営者がマンションを購入していたらその支払いで今頃アップアップでしょう。身の丈生活をするには賃貸のほうが有利そうですね。
 
 
 
Unknown (wood)
2023-08-06 00:42:59
賃貸派はリスクを取らないとも言える。当然高コストだ。考え方は人それぞれだが。/ この記事の後、10年後マンションを売却して、別のマンションを買った。駅前のマンションだったからか買った値段で売れた。売買の手数料他よりは給与の自宅手当の方が高かったのではないかな(それでも固定資産税分赤字)。
 
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