さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】「岩宿」の発見

2008-07-23 23:59:12 | 読書録
「岩宿」の発見
 ~幻の旧石器を求めて

 相沢 忠洋 著 
 講談社文庫

【おすすめ度】★★★★☆

先日友人に薦められたこの本を読んでみた。
大体の流れは、週刊古代文明73号に載っていた記事と同じ・・・というか、週刊古代文明の方がこの本を参照していると思われるのだが、相沢氏が実際に経験した一家離散は、記事で読んでいたものと比べてはるかに深刻なものであったことが分かった。それだけに相沢氏が石器や土器を通じて、いかに一家団欒への郷愁を抱いていたかという点について、より説得力をもって感じられた。

面白いのは、日々の行商の中でも、お客さんや周りの人達が情報を提供してくれること。「そういうのなら、誰々さんの畑でも出る」とか「誰々さんも持ってる」とかいう情報を聞きつけて、色々出かけていったり、行商の行き帰りに、切り通しを調べたり・・・ということを続けながら、どんどん人脈と知識と研究成果が上がっていること。そういえば私の小さい頃は、むき出しの赤土の切り通しなど、たまに目にすることもあったが、最近はむき出しの赤土そのものをとんと見かけないね。コンクリで塗り固められたものばっかりだ。相沢氏の頃は、日常観察でそういうものを見れたわけだし、普段遊んでるような場所からも土器や石器が出てきたりしていたわけだから、観察環境としては今より申し分ない。でも当時の考古学者の思考を狭めていたのは、日本には旧石器文化は存在しないという固定観念だったのだ。

生々しい話もあった。相沢氏が発掘した住居跡から、土器が盗まれた話。しばらくして粉々になって戻ってきたらしいが、どうもずっと相沢氏に強力してきた人物が一枚噛んでいるらしかった。真相は闇の中なれど、両氏は袂を分かち、相沢氏は執拗な攻撃に遭ってきたようだ。そこらへんの話が固有名詞入りで載っている。研究者仲間の間では、苗字さえ書けば誰のことだと分かってしまうだろうが、相沢氏に軍配が上がり、この本が学生の読書感想文課題図書にまでなるにあたって、敵役として実名を挙げられちゃった人達や関係者は、辛い人生を送ったことだろうな、と思ってしまう。まぁ、それでも書かざるを得ないような立場に、相沢氏が追い込まれていたのかもしれないのだが。
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