さぶりんブログ

音楽が大好きなさぶりんが、自作イラストや怪しい楽器、本や映画の感想、花と電車の追っかけ記録などをランダムに載せています。

【読書録】ポーツマスの旗〜外相・小村寿太郎

2023-12-14 23:45:24 | 読書録

吉村 昭/新潮文庫

日露戦争の講話で日本が賠償金を取れなかったことで、暴動が起こったんだということを、小学校の塾で習ったけど、この本を読む限り、ロシア皇帝は賠償金も樺太も一切やらぬと言い張っていたのであり、日本政府側も実はどちらも取れなくても会議決裂だけは避けるべし(戦争継続は不可能)・・というところまで来ていたのだ。ロシア側の交渉相手であるウィッテが南樺太だけを日本に割譲する案を、日本政府が腹をくくるより早い段階でちらっと出してくれていたおかげで、どっちも取れないということは免れたのだ。日本で暴動が起こったのは国民が真相を知らされていなかったからだ。

開戦に反対していたという平和主義者のウィッテだったからこそ、講和でき南樺太も取れたのだな。本当にギリギリの決着だ。小村氏は非常に冷徹にことを運んだが、講和がなった途端体調を崩し、暴動の中を隠れるように帰国し、夫婦仲は崩壊し、体重も37.5キロ足らずにまで衰弱し、もうひと働きはしたものの、激務の中で伊藤博文暗殺等、日韓関係の不穏な空気の中でなくなったのである。

小村さんは英語もフランス語も堪能であるだけでなく、タフネゴーシエーターであったわけだが、今より遥かに外国語を学ぶのが難しい時代に、日本からこのような偉人が輩出し、西欧と渡り合ったのだと思うと、それより恵まれた時代に生きている自分は一体何をやってるんだ・・といつも思ってしまう。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする