平山和充/ちくまプリマー新書
心惹かれる景色を撮っていたら、かなりの確率でそれは世界遺産だった・・南米生活の長い著者は、誰よりもたくさん南米の世界遺産の写真を撮っていると評された。今は拠点を日本に移し、南米に限らず世界中を歩いて世界遺産の写真を撮っている。
だが、世界遺産と世界遺産でないものの違いってなんだろう・・・世界遺産の基準は意外に曖昧な解釈が可能であったりするのだ。おそらく著者は、世界遺産にはまだ登録されていなくても、それに匹敵する・・あるいはそれを凌駕するような素晴らしいものは、まだ世界にたくさんあるのだ・・・ということを写真を通じて主張しておられるのだろう。
著者の写真を見て、私が心惹かれた、景観を3つピックアップしてみると
1.チリのパイネ国立公園
2.イエメンのハジャラ
3.ミャンマーのマンダレー
が挙げられる。
「チリのパイネ国立公園」から見える山々の景観は、日本のものとまるで異なる。山肌にまるで温泉マークの湯気のような、捻じ曲がった地層の褶曲が見られる。ノコギリの刃のようにごつごつした尖った山々に朝日が当たり、真っ赤に染まったトレス・デル・パイネの姿は、異世界のように美しい。
「イエメンのハジャラ」は断崖絶壁に林立するアラベスク模様の四角柱群のような石の家々。1000年以上前に作られたもので、山岳民族が住んでいる。民族紛争で逃げてきた人たちが長年暮らしてきた場所なのだ。
「ミャンマーのマンダレー」には巨大な白い大理石の仏塔カウンムードー・パヤーをはじめ、サンダームニ・パヤーの1774基の仏塔の写真など、圧巻である。ミャンマーでは9割が仏教徒であり、これらの仏塔は過去のものではなく、現在進行形で生活に密着したものなのだ。日本はもちろん、中国、インド、スリランカ、タイ、カンボジアなどでいろんな仏教寺院を見てきた私の目にも、ミャンマーの仏教寺院はまだ馴染みがなく、見ていてなんだか不思議な気分がする。
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ずっと旅行行けてないけど、また行きたいなぁ・・・そういう気分を掻き立てられる本である。