私の友人たちは、健康のためと称して、狂ったように、歩き続けている。娘からプレゼントされたという万歩計を腰につけて、歩き続けているのである。そして、友人同士で競い合い、今日は「1万9000歩を歩いた。」と勝ち誇ったように、その万歩計を見せるのである。一日1万歩以上というのが彼らの目標である。だが、どうも、その雲行きが怪しくなった。「中之条研究」で知られる東京都健康長寿医療センター研究所老化制御研究チーム副部長、青柳幸利氏によれば、「8000歩/20分」以上の運動は、病気の予防にならないということだ。かえって、抵抗力を低下させるなど、負の要素も多くなるということらしい。中之条研究は、青柳氏が生まれ故郷の群馬県中之条町で2000年から実践している健康実験で、町内の65歳以上の人を対象に活動量計をつけてもらい、そのデータを詳細に分析することで歩数と速歩きの時間による普遍的な健康づくりの指標を編み出したものだ。 この実験は世界的にも高く評価されていて、その実験データは貴重なものだ。何しろ、寝てるときにも、食事をしているときにも、老人たちが計測計をつけていてくれるなどということは、世界広しといえども、この町くらいだろう。そもそも、1日1万歩というキャッチフレーズは厚生労働省がメタボ対策のために、カロリー計算をして、口から入る過剰なカロリーと運動量を計算して、出したものだ。だから、健康とは直接関係ない。副作用も計算されていない。このニュースを聞いて、いかにへそ曲がりな私の友人たちと言えども、「1日8000歩に抑えよう。」と言ってくれることを祈るばかりだ。(2016.2.26)