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カーペンターズ/雨の日と月曜日は

2008年08月22日 23時56分56秒 | ROCK-POP
 本作は「雨の日と月曜日は」という当時大ヒットした曲から始まるせいで、70年代このアルバムの邦題は「雨の日と月曜日は」であった(オリジナルのアルバム・タイトルは「Carpenters」)。その後、かの曲以上に「スーパースター」がヒットしてしまったせいか、途中からアルバム・タイトルも「スーパースター」になったような記憶があるが、当時のカーペンターズはシングル・ヒットを連打するいわゆるポップ・グルーブという受け止められ方をしていたせいで、アルバム・タイトルもシングル・ヒットが最大のキーワードとなったいた訳だ。アルバムに収録されたシングル・ヒット曲のタイトルを、オリジナル・タイトルすら無視して付けてしまうのというは、それこそビートルズの頃からあったけれど、それが横行していたのも、思えば70年代前半くらいまでだったのではないだったような気がする。彼らの作品も72年に出た第四作はうまい具合に「ア・ソング・フォー・ユー」がヒットしたせいで、このタイトルで発売されたが、次の73年の第五作では「シング」が大ヒットしてもアルバム・タイトルは「ナウ&ゼン」のままであったから、シングル・ヒットがアルバム・タイトルまで干渉してくるような、日本のお国事情もこのくらいまでだったのもかしれない。

 閑話休題、さてさて、この第三作だがご存じのとおり71年発表のカーペンターズ全盛期を飾る作品のひとつで、前述のとおり「雨の日と月曜日は」と「スーパースター」という2大ヒット曲をフィーチャーしている(ついでにいえば「ふたりの誓い」も大ヒットしたから三大というべきかもしれない)。なにしろ当時は彼らの全盛期だけあってラジオなどでいろいろな曲を聴いてはいたので、過半数の曲は私でも既知であるのだけれど、実際のところアルバムを通して聴くのはたぶんこれが初めてだ。
 アルバム冒頭が「雨の日と月曜日は」で、いきなり例のハーモニカのイントロが聴こえてくるのは個人的にはちと居心地が悪いのだが(これまでライブやベスト盤で定番になっている「スーパースター」からほとんどメドレーの如く「雨の日と月曜日は」につながっていく構成に慣れ親しんでいたので)、収録曲は粒ぞろいだ。この時期のカーペンターズは、その後の彼らのように音楽の幅があまり広くなく、バカラックやポール・ウィリアムス、レオン・ラッセルといった若年寄り風な選曲とアレンジの妙味で聴かせる作品群とナイーブなオリジナル作品のみでシンプルに構成されていて、逆にそれがカーペンターズの核となる部分のみで構成されたような潔さとすっきりとしたセンスを感じさせて素晴らしいと思う。

 それにしても、今聴くとカレン・カーペンターのボーカルは凄い。彼女はほぼリアルタイムで十分に人気、実力共に評価されてきた人だと思うけれど、三十数年を経て彼女のボーカルにあった希有なオーラのようなものが、ますますはっきりしてきたような気がする。ある種ヒューマンな温もりを感じさせる穏和な感触、深いヴィブレーションをさりげなく表現する上品さ、研ぎ澄まされたよう感覚でもって自在にコントロールする精緻な歌唱力などなど、単に「歌のうまいお姉さん」ではなくて、たとえばエラ・フィッジェラルドとかああいった歌手と並び称されていい、まさにアメリカの国宝的な希有な存在だったことがわかるのだ。例えば2曲目にリチャード・カーペンターをフィーチャーした「サムディ」という曲に続いて、カットインするように「あなたの影になりたい」というバラード作品が始まるのだが、オーバーに彼女のボーカルが始まった瞬間、あたりの空気ががらりとかわるような形容しがたい神々しいようなオーラが立ちこめるのだ。そういうの感覚は昔は感じられなくて、今だから感じれられるものだと思う。まさに時の流れを経て、本当の音楽的価値が明らかになったというところだろうか。いや、ひょっとすると昔からそんなことは自明なことで、ワタシの耳だけが鈍感なだけだったのかもしれないが....。
コメント (3)
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