エッセイ 歌 【歌手・タレント・俳優】2015.1.23
その頃、私は流行の歌を何か一つ覚えたいと思っていた。
社内旅行の宴会で必ず何か歌わされる。
お酒がまわると「端の人から順番に」となるからなるべく端には座らないようにしていた。
当時はカラオケが無かったから、アカペラで歌う。
差しさわりのないところで、手拍子にのりやすい演歌がいいのだが、最後まで歌える歌がなかった。
街には「ラストダンスは私に」や「サン・トワ・マミー」等、歌謡曲とは違うおしゃれな歌が流れていたが宴会では歌いに
くい。
「越地吹雪は大嫌い」と言った人がいた。
「目を細めて、大仰に迫ってくるのを見ると鳥肌が立つ」とも。
そんなことを聞くと、歌う人の顔や表情も大事だなと思った。
最近は飲み会の後、カラオケに誘われることが多い。
いつまでも逃げ回っても仕方がないので、何か一つでも歌えるようにとカラオケ教室に入った。
歌詞の生々しいのが一寸気になるが、丁寧なボイストレーニングがあり、聞いた音を声に出すいい経験になった。
教室では時々発表会がある。
最後まで譜面を見ずに歌うのは、かなりプレッシャーになる。
ある人は間違えて、いきなり二番から歌いだして、次に三番にするか、一番に戻ろうか足が震えたとか。
三番の歌詞が真っ白になった頭の中で何も浮かばずに困ったとか、発表会が終わると何人か辞める。
昨年の発表会は、公民館のホールだった。
低い舞台で客席が近い、少し気持ちに余裕があった。
いつも緊張した顔の写真が残るのでスマイル、スマイルと心掛けた。
友人が前の方で動画を撮ってくれた。
「上手だったわよ、後で見てね」とお世辞を言いながら、私のパソコンに移してくれた。
帰った後、余裕でパソコンを開いた。
「なにこれー」。
この日の為に新調したドレープの緩やかなブラウスが、お腹のたるみの上でくちゃくちゃになって見る影もない。
そして怖い顔をして真剣に歌っている、鳥肌がたった。
いっぺんに熱が冷め、カラオケ教室を辞めた。
カラオケにも随分行かなくなりました。
そろそろコロナ禍、退散してほしいです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます