つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ 国分寺駅

2024-08-29 10:49:25 | 楽しい仲間
  エッセイ 国分寺駅  課題【駅・(空)港】 2008.7.11

   先生の講評……在日問題だが、子どもを通した描写だけに鮮度が高い。
   つつじのつぶやき……エッセイ教室に通いだして3か月の作品です。


 「オボジ、あっちだよ」
長男が五歳の頃、国分寺駅のホームで夫に呼びかけた言葉だ。
オボジ、朝鮮語でお父さんのこと。
国分寺駅から私鉄に乗り換えると、朝鮮大学がある。
多分、朝鮮大学のお兄ちゃん達が話していた言葉に刺激を受けて、
自分も、リクちゃんになっていたのかもしれない。

近所で一番仲良しだった二歳上のリクちゃんは両親が北朝鮮の人だ。
3人兄弟の末の子で、お兄ちゃん達から年が離れていたのと、
幼稚園に行っていなかったので、いつも一人遊びをしていた。
身体は華奢で内気な子だったが、内に秘めた何かを感じさせ、
声をかける時など、少し気をつけて話さなければと言うような
雰囲気を持っていた。
いろいろな遊び方を知っていて、一つの事を根気よくする
長男はリクちゃんの家来のように、いつも後についてまわり、
リクちゃんのする事や口癖が憧れで、何でも真似をした。
暑い夏の日、暫く声がしないので見に行くと、百日紅の花の下で、
頭をつき合わせて何かを作っていたり、
ある時は、ブロック塀に寄りかかって、真剣に話しこんでいたりした。

その内、リクちゃんは北朝鮮の小学校へ入学して帰りが遅くなる。
長男も幼稚園の友達と遊ぶ事が多くなる。
段々別の世界を持つようになって、以前ほど一緒には行動をしなくなった。
それでも、リクちゃんの通う小学校の方針らしい、「将軍様」とか、
「あの方とお呼びする」とかの影響を受けていた。
私が困った顔をすると、長男もその反応を感じたらしく、
段々距離をおくようになっていった。
リクちゃんが小学校2年生の頃だったか、
何処かへ引越しして居なくなった。

あれから時は過ぎたが、今はいい若者に成ってる筈だ。
時々
何処か遠くを見つめるような眼をするリクちゃんに会いたいと思う。 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする