つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ・蛍を見にいきました。

2010-07-24 11:12:30 | エッセイ

毎月歩いている里山で、夏に蛍が飛ぶというところが何箇所かある。
「見てみたい、蛍の飛ぶところを」と皆が言う。だが、夜の話なの
で中々実現しなかった。

5月、所沢の菩提樹池に行った時、又その話が出た。落ち葉が沈ん
で、どんよりと茶色に濁った池はいつも静まり返っている。夕闇に
飛ぶ蛍を想像した。

「見に来ますか?」リーダー格のOさんが言う。「夜は一寸怖いけ
ど来てみたい」話がまとまった。6月の末、曇った蒸し暑い日、夜
7時から8時、雨が降ると飛ばない。大体の日日を決めてその日を
待った。
当日、天気予報では、夜半に雨が降るといっていたが、出かけるこ
とにした。

西武球場前駅で降りたが、この日は野球の試合が無い日で、駅前は
がらんとしている。

菩提樹池へ行くには、大きな墓地に沿った山道を通る。お墓を見な
がら歩くのは、余り気持ちのいいものではない。空は黒い雲が流れ
ている。

池に着いた。風が出てきて、山の木々が大きく揺れている。誰もい
ない山の中で、ざわざわと風の音を聞きながら暗くなるのを待つの
は不気味だ。7時を大分過ぎてやっと暗くなった。目を凝らしてジ
ーと闇の中を見るが蛍の光は見えない。首筋にブーンと蚊が寄って
くる。

ぬかるんだ山道をゆっくり歩いていると、「いた」、たった一つの
かすかな光りが見えた。皆息をひそめた、低木の枝に止まっている。
「あっ飛んだ」「うぁーきれい」小さな声でささやく。子供の頃見
た蛍より、ほんとうに小さい光だ。ジーと見ていると、2~3匹が
同時に光る時がある。思わず声が出る、暗闇の中で蛍と会話をした
ような気持ちがした。

予報どおり雨が降りだした。山道に水が出てきたので帰りは墓地の
中の舗装された道を歩いた。蛍に出会えた幸運で、傘を傾けながら
みんなの声がはずんだ。

  【夏・自由課題】
   先生の講評  人、風景も描写が的確、暮らしの中の美の点景
   

コメント
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