つつじの書・・

霧島つつじが好きです。
のんびりと過ごしています。
日々の暮らしを、少しずつ書いています。

エッセイ・息子の声

2009-11-02 12:25:37 | エッセイ

エッセイ・息子の声

夕方、久しぶりに息子から電話があった。息子は隣町で一人暮ら
しをしているが、めったに帰ってこない。たまに電話があっても、
そっけなく、用件だけですぐに切ってしまう。
「携帯電話の番号を変えたからメモして」と言う。

次の日の午後、又電話がかかってきた。
「中村さんと言う人から、電話が無かった?」
「ううん、どうしたの?」私の問いに、得意先に行く途中、電車
の中に鞄を忘れたので、届けを出したと言う、その担当が中村さ
んらしい。

3時近くに、又息子から電話があった。
「まだ中村さんから連絡はない?」
「大事な書類でも入っていたの?」
「うん、書類もだけど、お金を届ける途中だったんだ」という。
「えっ、振込みじゃないの?」
「会社からそうしろと言われてたんだけど、昨日、振込みをして
いなかったので、現金を持って出ちゃったんだ」
「すぐに会社に連絡をして、対応してもらったら?」と言ったら
とにかく、自分で立て替えておくようにと言われたという。

「お金、貸してくれない?」
「いくら?」
「54万円」
「そんなお金ないよ」
「無いの?」

急にしょんぼりした息子の声に、待てよ、あそこのお金と、こ
っちのお金、寄せ集めてと考える。
「お金は何とかする。それをどうするの?」
今、仕事で動けないから持ってきてと言う。
「駄目よ、3時に宅急便が来る事になっているから出かけられな
い、取りにきなさい」

「貴方さ~」お説教する時の呼びかけがでた。
「気持ちが緩んでない?」
「う~ん、ちゃんとやってるよ、あんまり飲まないし」
何時もの調子が出てきて、会話が弾みだした。
「お母さんからお金を出させて、これって、まるで振り込め詐欺
みたいじゃない、本当に○○ちゃんだよね」
「何言ってるの?」
「あのさ、お母さんの誕生日、知ってるよね?」
急に電話が切れた、ドキッとした。昨日から、知らない息子と会
話をしていたのだ。

     課題【善・悪】より     

 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする