goo

SFマガジン2012年12月号


SFマガジン2012年12月号 №681 早川書房

雫石鉄也ひとり人気カウンター

1位 地図作るスズメバチと無政府主義者のミツバチ 
           鈴木潤訳 E・リリー・ユー
2位 アース・アワー 矢口悟訳 ケン・マクラウド
3位 奉仕者と龍   酒井昭伸訳 ハンヌ・ライアニエミ
4位 穢れた手で   小野田和子訳 アダム=トロイ・カストロ
5位 静かに、そして迅速に 田辺千幸訳 キャサリン・M・ヴァレンテ

インタビュー

ジョン・スコルジー 世界を塗ってごらん 内田昌之訳 ローカス編集部
N・K・ジェミシン 神々との暮らし 
             佐田千織訳 ジェイムズ・デイヴィス・ニコル
芝村裕史 編集部
神山健治 小林治 

連載

椎名誠のニュートラルコーナー(第34回)
むかしのエイリアンは成田空港のイミグレーションを通関してきたんだよ。 椎名誠
SFのある文学誌(第12回) 長山靖生
大森望の新SF観光局(第31回) 大森望
パラフィクション論序説(第6回) 佐々木敦
是空の作家・光瀬龍(第11回) 立川ゆかり
現代SF作家論シリーズ(第20回) 監修 巽孝之
新井素子論 「地球をおしまいにする日」 福本直美

「The Best of 2011」と題して昨年の12月号に引き続いて海外SFベスト集成。「2011年の海外SF短編を選りすぐって送る」とのことだが、作者はイギリス人とアメリカ人だけ。昨年はこの企画をほめたが、今号は大はずれ。まったくおもしろくなかった。小生は掲載作5編のうち4篇はまったく評価しないが、早川を叱りはしない。今回ははずれたが、これにこりずに、このような企画は続けてほしい。
 さて、人気カウンターでとりあえず順位をつけたが、おもしろく読めたのは1位の「地図作るスズメバチと無政府主義者のミツバチ」だけ。地図を作ることのできるスズメバチが人間の少年に、巣に石をぶつけられた。スズメバチは奥地に転居。先住者のミツバチを武力で威嚇して支配する。ミツバチの中に無政府主義者が出て来て、スズメバチに対して解放闘争をしかける。なんだか童話みたいだが、いろいろと深読みできておもしろい。
 他の4作はペケ。特に5位の「静かに、そして迅速に」は知床が舞台の北海道SFとかいう珍品らしいが、なんのこっちゃらいっこも判らんかった。
 リーダーズ・ストーリー、今月の入選作は、このブログの友好ブログ、サイトーブログの斎藤想さんの「亜空間」。実は今号でこの作品が一番おもしろかった。
 
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

神戸市営地下鉄 和田岬


 ここから東の方、ハーバーランド方面へかけての海沿いは、神戸の重厚長大産業の拠点ともいう土地である。この駅のすぐそこが三菱重工神戸造船所、少し東には川崎造船がある。海洋国日本を下支えしたのが、この和田岬周辺といっていいだろう。川崎造船はこの駅よりもJR神戸の方が近い。地下鉄の駅でいえばハーバーランドだ。横溝正史生誕地碑は川崎の正門の前にある。
 新長田行きの神戸市営地下鉄海岸線に乗って、ハーバーランドの次が中央市場前、その次がこの和田岬。駅の背後には三菱重工神戸造船所の敷地が広がっている。南に少し歩くと、右にあるのが三菱病院。つき当たりが三菱電機だ。だから、このあたりは三菱村といっていいだろう。
 小生は通勤にこの地下鉄海岸線を使っているが、この和田岬で降車する人がかなり減った。神戸でJRから地下鉄に乗り換えるのだが、かっては、朝、ハーバーランドで乗った時は座れなかった。和田岬でドッと乗客が少なくなり座れるのだが、最近はハーバーランドから座れる。和田岬で降りる三菱の人が減ったのだろう。三菱重工神戸造船所というが、今はこの造船所では商船は建造していない。潜水艦しか船舶は造っていない。パナソニック、シャープといった少し前、日本の製造業のエースだった企業が大赤字を出して苦戦している。韓国、中国といったアジアの国の企業が日本の企業を凌駕しているわけだ。かっては造船も日本製造業のエースだった。朝、和田岬で降りる人が少ないことから、日本製造業の変遷が判る。困ったものだ。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

もう少し民主党を育ててみよう

 いよいよ衆議院が解散になるようだ。野田さんもさすがに「近いうち」といったのだから、なんとか先送りも、そろそろ限界だろう。
 各種世論調査などを見れば、自民党が民主党を支持率で上回っている。自民党としては、一刻も早く解散総選挙して、政権を奪回したいのだろう。
 第3極の結集ということで、石原慎太郎やら橋下徹らが、なにやら蠢いているが、しょせんは右に傾いた保守であることに変わりはない。ここは、ひとつ、革新政党の奮起を望む。このままでは日本は右へ右へ、戦前の日本へと回帰してしまう。右に傾きかけている船を立て直すには、左に重りをつけなければならない。革新政党には政権を取ってもらいたいとは思わないが、左側に重りは必要である。もちろん左に傾きすぎるのも問題だが。
第3極として本当に必要なのは、石原一味や橋下一味ではなく、共産党や社民党の革新政党である。特に社民党の復活を望む。かって、日本社会党のころは、自民党と55年体制を構築していた、日本の政治の片方の翼であった。いまはもう見る影もない。党首も福島瑞穂さん以外なり手がないと見える。人材難だろう。もはや絶滅危惧種である。絶滅させてはいけないと思う。
 世論調査の結果を見ると、国民は民主党に政権を任せたが、期待したほどではなかった、失望したということだろう。しかし、民主党は政権を担って3年。自民党は55年も政権を担当してきた。もう少しだけ民主党に任せてもいいのではないかと思う。まだ3年しか与党をやっていないわけだ。国民としては、ダメならすぐ引っ込めるではなく、育てるという意識で民主党を見てもいいのではないか。
 諸般の情況を見れば、政権を育てるなんて悠長なことはやってられん。確かにそうだ。そのあたりは、自民党が自分の党のことはひとまず置いて、国益最優先ということで、民主党のいたらぬところは、フォローしてやればいい。そして、もう何年か民主党に任せてみて、それでもだめなら政権交代しても遅くはないと思うのだが。もう少し民主党を育ててみようではないか。3年の育成期間ではさすがに短い。もう少し育てて、それでダメならまた自民党に任せればいいだろう。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )

ピンポン


監督 曽利文彦
出演 窪塚洋介、ARATA、中村獅童、夏木マリ、竹中直人、サム・リー

 才能と努力、どっちが勝つか。結局、才能である。才能のないヤツがいくら努力しても、才能のあるヤツには負ける。
 高校の部活映画である。主人公は二人、ペコとスマイル。この二人、幼なじみの友だちだが、正反対の性格。二人とも卓球部。ペコは変人。スマイルはメガネをかけたネクラ少年。スマイルにとってペコはヒーローだった。ふたりとも卓球の練習はあまりまじめにしない。
 この二人を軸に、最強の選手ドラゴン、卓球大国中国からの留学生チャイナ、ペコとスマイルの幼なじみアクマ。
 この5人の卓球選手と、ペコとスマイルの卓球部顧問で、かってのトップ選手バタフライジョー、バタフライジョーの選手時代を知ると思われる卓球場のオババ。これらの登場人物たちのキャラが立ちまくり。この映画を見た人はそれぞれお気に入りのキャラクターができるだろう。小生はスマイルがお気に入り。かっこいいじゃない。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

きのこのカレー



 小生、きのこが大好物。こんなご飯や、こんなピッツァこんな佃煮こんなお鍋をよくするが、今回はきのこのカレーといこう。
 まず、最初にテーマを決めておく。テーマは完全和風とする。ベースとなるスープ、調味料、具は、カレー粉以外和風のものしか使わない。
 スープは干し椎茸の戻し汁をベースに、鰹昆布出汁をブレンドした。そのスープに醤油と味醂を同量混ぜて寝かした、かえしで味付け。小さなボールにカレー粉と味噌を入れ、少しづつ溶かしながらスープに入れていく。
 具はもちろんきのこ各種、椎茸は生と干しの2種類、しめじ、なめこ、まいたけ、えのき。エリンギやマッシュルームは入れない。そしておあいそに鶏肉を入れた。
 戻した干し椎茸は砂糖と醤油、出汁で煮て下味をつけておく。しめじは空炒りしておくと香ばしくなる。鶏肉は魚焼きグリルで焼く。皮をパリッと焼くこと。
 鶏ときのこをスープの鍋に入れて、フタをして弱火で煮る。きのこは多い方がいい。鍋からあふれるぐらいがいい。フタをして加熱を続けると、きのこから水分が出て、カサがだんだん減ってくる。
 フタを取ってきのこのカサが減っていたら水溶き片栗粉でとろみをつける。きのこの香りと旨味がでて、大変においしいカレーとなった。小生のようなきのこ好きには大ごちそうだ。
 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

幕の内弁当


 幕の内弁当でございます。なんですか、お芝居の幕間に食べたお弁当だから、こう呼ばれるそうでございます。
 どんなお弁当かは、別に決まりはないそうですが、焼き魚、卵焼き、かまぼこは3種の神器として、幕の内弁当のおかずの定番だそうでございます。ですから、このお弁当もそうしました。左上から時計回りに鮭の焼き魚、かまぼこ、ほうれん草のおひたし、卵焼き、ご飯でございます。
 鮭は甘塩の切り身を魚焼きグリルで焼きました。普通に焼いたのでございます。卵焼きはだし巻ではなく、卵だけで焼く卵焼きです。砂糖と薄口醤油で味付けして卵焼き器で焼くのでございます。簡単です。だし巻は卵液にだしが混ぜてありますから、焼くのに少々コツが必要ですが、卵焼きは卵液がすぐ固まりますから、簡単に焼けるのでございます。
 かまぼこが一番簡単でございます。買って来て包丁で切るだけです。わたくし水産学科出身ですから、実習の一環としてかまぼこを作ったことがあります。ですから、ハモなど原料のお魚を仕入れてきて、手作りのかまぼこなど作ればいいのですが、それはまた別の機会にするといたしましょう。
 ほうれん草のおひたしは3種の神器には入ってませんが、やはり、なにか緑のお野菜も食べとうございます。わたくしの、ほうれん草のおひたしの作り方はこうでございます
 ご飯は土鍋で炊きました。お米と分量の水を土鍋に入れて火にかけます。火は中火でございます。蒸気が吹いてきたら、弱火にして10分ほど炊くのです。10分経ちましたら、火を止めて10分蒸らすのでございます。ちゃんと炊けているかどうか気になるとは存じますが、途中でフタを開けてはいけません。ご飯が炊けましたらお弁当箱に詰めて、黒ゴマをふって梅干しを乗っければできあがりでございます。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ありがとう藤川球児

 藤川球児がアメリカの球団に行くことを決断した。これで阪神タイガースの守護神であり、日本を代表するクローザーが海外へ流出することになった。アメリカの球団で、取ってくれる球団があればだが、複数の球団が興味を示しているらしい。どこかに入団することは間違いないと思う。
 小生、阪神ファンとして、このことは、藤川にとっては凶、タイガースにとっては吉と見る。
 長年、阪神の絶対的守護神として、われわれファンを楽しませてくれた藤川に酷なことをいうが、藤川はもはや旬を過ぎたピッチャーではないか。高めのストレートで空振りが取れなくなり、三者凡退でピッシャとしめる事がめったに見られなくなった。特に今年はランナーを貯め、ピンチを招き青い顔をして、冷や汗を流しながらのピッチングをすることが目についた。24セーブ防御率1.32と数字だけ見れば充分に合格だが、長年の経験でこの数字を維持しているのではないか。
 藤川はWBCやオリンピックなどで、打たれるシーンが多かった。前回のWBCでも、日本優勝の瞬間にマウンドにいたのは、藤川ではなくダルビッシュだった。だから彼にとっては、国内で野球をやった方がいいとは思うが、本人の長年の夢だから、他人がどうこういうことではない。かくなる上は、どこの地のマウンドに立っても、活躍を祈る。
 もし藤川が来年も阪神でクローザーを勤めるのならば、今年以上にピンチを招くことが多くなるのではないか。そういう事態になれば、先発転向というのもいいのではないか。
 藤川球児、われわれ阪神ファンが最もうれしい瞬間には、つねに彼がいた。彼はまさしく守護神の名に値するピッチャーだった。
 甲子園球場、阪神タイガース勝利目前、リンドバークの渡瀬マキの歌声とともにマウンドに向かう藤川球児を見られなくなるのは、この上なくさみしいが、しかたがない。最後にお礼をいう。たくさんの勝利をありがとう藤川球児。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

自民党には知恵者がいないと見える

 自民党には知恵者がいないと見える。野党に転落してわずか3年。3年で骨の髄まで野党根性がしみこんでしまっている。
 いや、なに、このたびの田中文相の大学を認可するしない騒動。この件を問題にして、やれ罷免だの問責だの野田首相の任命責任だのと、かまびすしいことだ。
 確かに田中文相はいささか暴走気味で短慮にすぎた。本人も謝罪した。しかし、彼女のいっていることは正解で、大学が多すぎるのも、新設大学の認可の仕方も課題があることは誰がみても判っている。
 ところが自民党は、アホのひとつ覚えみたいに、解散総選挙とわめくだけ。まるでおやつをねだるだだっ子みたいだ。そりゃあ、ポンポン痛いゆうて、無責任に首相の職をほっぽり出した安倍晋太郎んちのボンをトップにすえるような党だから、むべなるかな。
 確かに総選挙して政権の座に戻りたいのは判る。そのことはグッと押さえて、
「確かに田中真紀子さんは問題だが、そのことはさておき、田中さんは良い問題提起をしてくれた。ここはひとつ、大学、ひいては日本の教育についても議論をしなくてはいけませんね」
 と、解散とか問責とかを、おくびにも出さず、かような建設的なコメントが自民党からでれば、お、自民党もええやないか。今度の選挙で自民党に投票してやろか、という人もいるかもしれない。相手の足をひっぱることばかり考えないで、自分の足を伸ばすことを考えるべきだ。小生は別に自民党支持者ではないが、老婆心ながらご忠告申し上げる。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

しょせんはよその国のことじゃないか

 アメリカの大統領にオバマが再選された。これは別段問題ではない。小生はオバマでもロムニーでもどっちでもよかった。しょせんはよその国のことだ。
 ものすごく違和感を感じたのは、この件に関する日本の報道の異様な盛り上がりである。確かにアメリカは日本にとって重要な外国だ。そのアメリカの大統領がだれに成るかは、日本に大きな影響を与える。われわれ日本人の生活にも響いてくるだろう。だから関心を持って注目することは必要だ。とはいえ、他国の選挙、われわれは選挙権がないからどうしようもない。
 だから、オバマが当選したらアメリカはこうなる。ロムニーが当選したらアメリカはこうなる。それは日本にとってどうなのか。そして選挙の結果オバマが当選した。で、オバマはこういう政策をとるかもしれない。それは日本にとってどうなのか。こういうことだけを報道するだけで充分ではないか。
 選挙の途中の中間経過など、われわれ日本人が知る必要があるだろうか。あたかも親会社の社長人事に大きな関心を持って見つめる、子会社の社員みたいじゃないか。日本にとってアメリカは親会社ではない。重要な商売相手であり、安全保障上も切っても切れない関係の国ではある。しかし、アメリカと日本は独立した対等の国どうしである。かような報道は、日本はアメリカの子会社である。アメリカがくしゃみすれば日本は肺炎を起こす。と、大声で世界にPRしているみたいだ。ま、そういう面もなきにしもあらずか。困ったものである。 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

二人だけの送別会

 男が二人入ってきた。知らない顔ではない。ほかに客はいない。そろそろ店じまいの時間だが、二人のために鏑木はもう少し店をあけておくことにする。
 一人は還暦を過ぎたと思われる初老。もう一人は40代半ばの中年だ。二人は、以前、このS市にあったM電機の社員だ。M電機がこの市にあったころは、ここ海神の常連だった。M電機がA市に移転してから来なくなったいた。二人はずいぶん久しぶりに海神に来店した。
「マスター久しぶりだな」
 初老の方が鏑木にあいさつした。
「お久しぶりです。中本さん」
「二人だけの送別会なんだ。悪いな閉店間際に来て」
「いいですよ。木村さん」
 鏑木は、残り少なくなったボトルを2本だした。中本と木村の名前が書いてあるスコッチのボトルだ。
「おどろいたな。ワシたちの名前を覚えていて、ボトルまで残してくれてたのか」
「お二人は常連ですから。なんにします」
「水割り。係長は」
 木村がいった。二人はカウンターに座った。
「ワシも水割り。ワシはもう係長じゃないよ」
「長い間ご苦労さまでした。係―、じゃない、中本さん」
「ありがとう」
「定年ですか」
 柿の種の小皿を出しながら鏑木が聞いた。
「そうなんだ」
「中本さんは、おれの仕事の師匠なんだ。マスター」
「お二人が初めてここに来られてからずいぶん経ちますね」
「そうだな。おれが高卒で生産管理部に配属され、部の歓迎会のあと2次会でここに連れてきてもらったんだ」
「あのころワシは外注課の主任だった。30年前だな」
「外注管理のイロハを中本さんに教えてもらったんだ」
「よくいっしょにいらっしゃった方々はお元気ですか」
「みんなリストラされていなくなった。残っているのはこの木村くんだけだよ」
 中本が鏑木に答えた。
「中本さんが定年で、外注課で、おれが一番の古手になりました」
「今度の人事で君は外注課長だろう」
「課長は購買課から移動してきた若いヤツだそうです」
「そうか」
「購買と外注管理は違いますから、そいつは苦労するでしょう」
「ワシは長い間あそこにいただけだ。40年生産管理にいて係長止まりだ」
「中本さんほど外注という仕事が判っている人はいませんよ」
「そんな難しいことはない」
「外注の仕事で一番大切なことは何ですが」
 鏑木が中本に聞いた。
「外注先を下請けと思わんことだ。外注先は仕事にパートナーであって、同列なんだ。仕事を出す方が上で外注先は下と思って仕事をしてはダメだ」
 二人のボトルが空になった。  
「お、もうおしまいだな」
 鏑木が中本の顔見た。顔が赤い。酔っている。
「ワシも酒が弱くなった。そろそろひきあげるよ」
「もう1本キープしませんか」
「いや。よそう。ここはもう、新規のキープをしてくれないんだろ。マスター」
「はい。そうお願いしてます」
「ワシのぶんはいい。中本くんに1本入れてやってくれなか。ワシがおごるよ」
「いけません。それじゃなんのための送別会だか」
「いやいいんだ。今夜の払いはおごってもらうよ。新しい1本はきみへの置き土産だ。いいだろうマスター」
「中本さんがそういうのなら」
「ワシは海神も卒業だ。木村くん、ワシがやったように、きみは後輩をここへ連れてきて、仕事を教えてやってくれ。それじゃ、今夜はありがとう。元気でな」
 中本が出て行った。木村が一人残った。
「マスター、新しいボトルを開けてくれよ」
 ロックを立て続きに飲んだ。かなり酔っている。新しいボトルが半分近くなった。泥酔した木村がポツといった。
「そのボトルの残りマスターが飲んでくれ」
「だいじょうぶですか」
「おれも海神卒業だ。おれ、今度リストラされるんだ。おれに後輩はできない」
 木村はカウンターに突っ伏した。
 ボトルが2本減った。鏑木はキープしてあるボトルが全部なくなれば海神を閉めるつもりだ。海神閉店まで2本分近くなった。
 
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

とつぜんコラム №135 インターネットは地球の神経

 1985年。阪神タイガース日本一の年だ。今から27年前である。この27年の間にいろんなことが変わった。世界も変わったし日本も変わった。社会も変わった。小生もそれなりに馬齢を重ねつつ変わった。ゲキドウの時代であった。一番変わったのは、やはり情報通信の分野であろう。インターネットの出現は功罪ともに社会に大きく影響を与えたのではないか。
 小生は、こうしてブログを開設しているのだから、インターネットには常日ごろ接しているわけだ。もちろん、ブログの閲覧や記事を書く以外にも毎日パソコンを使っている。会社での仕事にもパソコンは使う。社内に回す書類の作成や、物品の仕入先への発注もメールで行う。パソコンのCRTに文字を書かない日はない。
 小生は、若いころコピーライターをした経験がある。そのころは原稿は紙の原稿用紙に手書きだった。判らない漢字を書く時は辞書を引いた。意味の記憶があいまいな言葉は広辞苑にあたった。ところが、今は、かような辞書辞典のたぐいは使わない。誤変換にさえ気をつければ漢字を間違うことはない。判らない言葉も検索にかければ簡単に判る。「文を書く」という作業を行うにおいて、最も変わったことは、辞書辞典を使わなくなったということだろう。ほんとうは、ワードや一太郎(特にワード)の辞書を鵜呑みせず、きちんと紙の辞書をひも解くべきだろう。また、ウィキペディアなんぞをあてにせず、判らない文言は広辞苑でも見るべきだ。とはいいつつも、かような手間はつい面倒くさがる。モノを書く人間として自戒すべきだと思うが、インターネットの便利さは、そんな小生のごとき軟弱な自戒など軽がると粉砕してしまうのである。
 このように、小生のごときいち市井の人間の文章書きという、極めて限定された物事でも、インターネットは多大な影響を与えたのである。世界に社会に与えた影響は計り知れない。最近の中東の政変はインターネットぬきには考えられない。
 このインターネットを悪用した事件も起きている。記憶に新しい所では、大阪市や横浜市などのホームページに犯罪予告をしたとして4人が逮捕され、誤認逮捕と判って警察が4人に謝罪するという事件が起きた。真犯人は4人のパソコンを遠隔操作して、4人になりすまし犯行におよんだというわけ。無実の4人のパソコンにウィルスが感染して、真犯人に操られたらしい。どうも、無料ソフトをダウンロードした時、ウィルスに感染したらしい。
 小生は無料ソフトのダウンロードはしない。必要なソフトは有料でCDの形で購入する。インターネットの発達で、違法適法色んなソフトが無料で手に入るようになった。昔からタダほど怖いものはないという。インターネットの世界でも同じであることが、証明された事件だ。 
 昔はスケベな映像を観ようと思えば、映画館に日活の映画でも観に行けなければ観られなかった。映画館の入り口でだれかに見られていないだろうか、キョロキョロしながら映画のキップを買った。
今は自宅でぬくぬくと、インターネットでお手軽にスケベな映像が観られる。ところが、かような映像を観ていると、思わぬ金額が請求されて驚いたりする。もちろんこんなものは詐欺だから無視すべきだが、人にスケベと知られたくない、後ろめたさか、被害にあうご仁もいるとか。
 このような卑俗な例から、大きくは一国が一国に対してサイバー攻撃をかけるなど、インターネットの功罪の罪は様々だが、この便利なものを手に入れた人類は、もう手放すことはないだろう。
 地球という惑星をひとつの生命として見るガイア理論なる考え方がある。地球の自然環境は、気象、海洋、生物全部が有機的にからみあっていてひとつ大きな1体のいきものとして見る。それぞれの科学のジャンルを部門別個別に思考研究観察するのではなく、巨視的に全体を見ようというもの。
 近年、この地球といういきものに、人類という新たなファクターが加わった。いきもの地球を考えるにおいて人類を抜きには考えられないほど巨大な存在となった。その人類も、原初は小さな集落の小集団であったのが、村を作り、町を作り、都市を作り、それらが統合されて国家となった。複数の国家がそれぞれ覇を唱えていた。ところが最近、この地球に国家間を結ぶ神経ができた。インターネットという神経が。脳を中心とした人体の各部各臓器各組織を神経で接続されているように、いきもの地球の人類という臓器を接続する神経ができたのだ。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

ももへの手紙


監督 沖浦啓之
出演(声) 美山加恋、優香、西田敏行、山寺宏一、チョー

 少女が一人の親と田舎へ転居する。そこで人ならぬ者と出会い、交流し、成長していく。こう書くとジブリの名作「となりのトトロ」を思い浮かべるかもしれない。この映画を「できの悪いトトロ」とひどいことをいう人がいるが、そんなことはない。小生は本作を「となりのトトロ」に匹敵する日本製アニメの傑作と評価する。
 確かにプロットはトトロに似ているが、トトロはお父さんと姉妹、転居先は山間部、本作は母と一人娘、転居先は島。トトロは昭和30年代、本作は現代。こういう表面的なところだけ見れば本作を判りやすくいうと「海のトトロ」といえばいいだろう。しかし、本作とトトロでは全くテーマが違う映画であろう。
 トトロは昭和30年代の日本の田舎。豊かな自然の地に越してきた、幼い姉妹が自然の精霊たるトトロと出会い、木を植え木を茂らせ、自然に抱かれて成長して、病気の母を見舞う。トロロのテーマは自然への畏敬と賛歌である。トトロは自然を描く映画である。
 一方、本作は、夫に死別して自立しようとしている母を持つ少女が主人公。彼女は都会生活に未練を残し、田舎での生活になじめなかった。で、3人(?、3体、3匹、妖怪の数え方はどうなんだろう)の妖怪と出会う。この3人、トトロと違い主人公のももに迷惑ばかりかける。トトロは自然の精霊だが、この3人の担当は人間。仕事は人を「見守る」ことなのだ。俳句は花鳥風月自然を描く。川柳は人間を描く。トトロが俳句だとしたら、本作は川柳といえる。
 トトロとの対比ばかりをいってしまったが、トトロを忘れ、この映画を虚心に観ても充分に楽しめる。
 親と子の物語である。父に死別したももにとって、肉親は母親一人だけ。その母は自立すべく介護士の資格をとる勉強で一日いない。ももは一人。近所の兄妹と知り合うが、完全には仲間になっていない。母とももの間に誤解が生じて亀裂が走る。ももにとってただ一人の母に背かれたことなる。そんなももの心のすき間を埋めたのは3人の妖怪。やがてももは妖怪の助けを得て、持病の発作を起こした母を助けることになる。ラスト、ももは近所の子供たちといっしょに、橋の上から海に飛び込む遊びをする。こわくてできなかった飛込みができるようになった。これでももは完全に島の子供となった。母もももを対等の相手として、なんでも相談しながらやって行こうという。ももは成長した。
 瀬戸大橋が通る(この映画の時点では完成しているが開通前)瀬戸内海の島が舞台。この海に囲まれた町のロケーションが素晴らしい。海も、海岸も、町の中も、大変に美しくリアルでこれらの風景を見るだけでも価値がある。
 3人の妖怪もそれぞれキャラが立って、おもしろい。お勧めの映画である。
 
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

しゃぶしゃぶのあとの雑炊


今夜も牛の鍋だ。きのうはすき焼きだったが、今夜はしゃぶしゃぶだ。で、鍋のあとのしめだけれど、今夜はしゃぶしゃぶだったから土鍋にたっぷり汁が残っている。よし、雑炊と行こう。
 しめを雑炊にするんだったら、しゃぶしゃぶしている時から、気をつけなければいけない。ともかく、汁を濁らせないよう気をつける。アクが出たらすぐすくい取る。雑炊は汁が命だ。
 で、きれいな汁が土鍋に残った。これにご飯を入れるのだが、ご飯は一度水洗いした方がいいだろう。ぬめりが取れてさっぱりとした雑炊になる。これはお好みで、ぬめりが有る方が好きな人もいるだろう。
 塩と薄口醤油で味付けしたあと、卵を溶き入れて、卵が半熟になれば出来上がり。三つ葉をふって食べよう。ちょっと柚子こしょうでアクセントをつけるとおいしい。

 星群の会ホームページで連載中の「SFマガジン思い出帳」が更新されました。どうぞご覧になってください。
コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )

すき焼きのあとのめし


今夜は牛のすき焼きだ。牛すきは高くつくが、小生のごとき貧乏人でもたまに牛のすき焼きを食ってもバチは当たらんだろう。
 ウチのすき焼きはもちろん関西風だ。今夜のお酒は桜正宗。さて、肉食って、野菜食って、鍋には汁が残っている。この時はうどんにしたが、今回はご飯だ。ご飯は炊き立てがいいが、別にひやご飯でもいい。すき焼き鍋にご飯をぶちこんで、かき混ぜて、卵を流しいれる。卵のかたまり具合を見極めるのがポイント。ええ塩梅に卵が固まったら、青ネギを散らして食う。すき焼きのあとのめしを食う。日本人に生まれて良かったな、と思うひと時だ。
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )

柚子こしょう


 
 去年ぐらいから柚子こしょうを愛用し始めた。爽やかな調味料で、重宝している。柚子こしょうというが、こしょうは使っていない。柚子の皮と唐辛子が原料。青唐辛子なら青の、赤唐辛子なら赤の柚子こしょうになる。手作りしようと思えばできる。柚子の皮と唐辛子を塩といっしょにフードプロセッサにかけて、細かく切り刻む。密閉容器に保存しておけばできあがり。
 ところが買った方が確実でおいしく安くつく。写真の瓶詰めはいかりスーパーで買ったが、500円でお釣りがあった。これぐらいの量を作ろうと思えば、青柚子5個ぐらい青唐辛子250g。材料費の方が高くつくのではないか。それにししとうは、そのへんのスーパーでも売ってるが、青い唐辛子はなかなか売ってない。ししとうじゃ爽やかな辛さはでない。瓶詰めを買った方がいいのではないか。
 いろんなことに使ったらおいしい。鶏手羽を焼いて塗る。マヨネーズにちょっと混ぜる。大根おろしに混ぜて焼き魚の相棒に。みそ汁や吸い物の吸い口に。和風スパゲッティのアクセントに。冷奴の薬味に。ちり鍋のポン酢にちょっと入れる。その他いろいろ。柚子こしょう、お勧め。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ 次ページ »