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とつぜん対談 第46回 蚊との対談

さて、そろそろ寝ようか。お酒もいいあんばいにまわってきて安眠できるぞ。
ん、いまブ~ンといったな。蚊か。こんな季節になってもまだおるんかいな。あ、こんなとこに停まりやがった。ようし。

蚊 
 あ、たたかないでください。

雫石
 うわ、びっくりした。だれがしゃべってんねん。


 わたしです。

雫石
 どこや。どこにおるねん。


 あなたの腕です。

雫石
 蚊やないか。お前がしゃべっとるのか。


 はい。

雫石
 で、蚊がなんの用や。ちゅうても蚊が人間にすることは決まってるな。


 はい。お願いです。あなたの血を吸わせてください。

雫石
 いやや。かゆくなるやんか。


 私はメスです。卵を産まなくてはなりません。栄養をとるため人の血が欲しいのです。

雫石
 よそ行って吸ったらええやん。ワシは嫌やで。


 私はこんな体です。ちょっとの風で吹き飛ばされます。今夜は風が強いです。ほかの家に着く前に死んでしまいます。

雫石
 病気うつされるかも知れんやんか。日本脳炎になったらあかんやろ。


 私はコガタアカイエカではありません。私は病気はうつしません。

雫石
 そんなこと信用でけん。病気うつします、ゆうて血吸う蚊がおるんか。


 私、ジョウモンアカマダラカというめずらしい蚊です。ものすごく少ないのです。絶滅寸前です。私が卵を産まないと絶滅します。

雫石
 蚊なんか絶滅したらええねん。

蚊 
 そんなさみしいこといわないでください。蚊もせいいっぱい生きてます。

雫石
 そんなめずらしい蚊やったらなんで国が天然記念物にせえへんねん。


 蚊だからです。同じ昆虫でもオオムラサキなんかは蝶だから、国蝶といって大切にされます。コウノトリや雷鳥は鳥だから保護されます。蚊なんか、どうなっても知らん顔です。ううううう。

雫石
 泣いとんのか。


 蚊だって生き物です。生きたいのです。うう。

雫石
 判った判った。かゆくなく吸うのんやったら吸うてもええ。


 無理です。血が固まらなくなる液を注入して血を吸うんです。そうしないと固まって吸えないんです。その液がアレルギー起こしてかゆくなるんです。

雫石
 かゆいんやったら嫌や。


 お願いです。あなたが死んで万が一地獄に落ちたら、私が飛んでいって助けて極楽までお連れします。

雫石
 芥川の「蜘蛛の糸」のパクリかいな。桂米朝師匠の「地獄八景亡者戯」を聞くと、極楽より地獄のほうがおもろそうや。ワシ、いっぺん人呑鬼の腹の中であばれてみたかったんや。SFのお仲間と閻魔の庁の前で落ち合う約束しとんや。で、お仲間と「おぇー」「へーくしょん」「あいたたた」「あっはははは」「ぶー」「おぇー」「へーくしょん」「あいたたた」「あっはははは」「ぶー」「おぇー」「へーくしょん」「あいたたた」「あっはははは」「ぶー」をやんのん楽しみにしとんねん。


 しかたありません。どうも失礼しました。さようなら。

雫石
 あ、ちょっと待て。ちょっとだけやったら吸わしたる。
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