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1月24日(木) 半導体の仕入れ

 リストラされるまで27年いた会社は、財閥系の某電機メーカーの下請けで、通信機器を主に製作している会社だった。光通信、衛星通信、ITV.防災無線などを手がけていた。
 小生はこの会社で資材部に所属して、購買仕入れ、在庫管理、外注管理、生産管理などの業務を担当した。この中で購買仕入れが一番長かった。
 電子部品の購買をやった。半導体、抵抗、コンデンサー、コネクター、リレー、スイッチ、などのパーツを主に扱った。メインは半導体だった。LSI,IC,トランジスター、ダイオード、LEDなど。いまはどうか知らないが、小生が購買をしているころは半導体は農産物と同じだった。つまり、半導体市場は供給過多か供給不足かどちらかの状態が多く、需要と供給のバランスが取れている時の方が少なかった。こちらは買う方だから供給過多の時はいい。困るのは供給不足の時。設計者が指定したICを入手するのに困難を極める。こういう時こそプロの購買担当者の腕のみせどころ。
 昔、なんのゲームだったか忘れたが、あるアーケードゲームが流行った時、テキサスのSN74LS175NというゲートアレイのICがこのゲームで多く使われた。このICは小生の会社でも多く使う。何社かの取引先の電子部品専門商社から情報を得ていたので大量に仕入れて在庫していたが、在庫も無くなってきた。取引先も最大限努力して納品してくれたが限界がある。こういう半導体は投機の対象になり大量に買い占めている者がいて、それがさらに品不足に拍車をかけている。この手のゲートアレイは他の半導体メーカーでもコンパチがあるが、各社の74LS175という型名のICはいずれも不足。
 代替えのICで設計変更して本チャン用はなんとかしのげそうだが、実験用にどうしても74LS175が数個必要になった。それほど親しくはないが、時々半導体を仕入れているパーツ屋が日本橋にある。そこに買いに行った。
「まいど」
「あ、久しぶりでんな」
「74LS175はあるか」
「おまへん」
「そうか。凸凹無線にやったらあったで」
「そうでっか」
「うちな、設計変更してこのIC次のオーダーから使わへんねん。かわりにモトローラのIC使うねん。凸凹無線に見積もりだそ思てんねん」
「ちょっと待っておくんなはれ。確か倉庫の奥に74LS175があったかもしれまへん」
「あったあった。何個いりまんねん」
「50個や。モトローラのICあんたとこにも見積もり出すわ」
 実はこの店のショーケースの中にテキサスのSN74LS175Nは数個並べてある。価格は小生がいつも仕入れている価格の10倍。素人の客ならその値で売るのだろう。ところが小生はプロ。そんなICは有っても無いのと同じ。相手も小生にそんな価格で売ろうとはしない。で、ショーケースの中のICを無視しつつ上記の商談となった。

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