風に吹かれすぎて

今日はどんな風が吹いているのでしょうか

沈黙

2008年10月20日 | 
沈黙のうちに日は昇り、たなびく雲が黄金色に染まる。
沈黙から溢れ出てくる光に、小鳥たちは鳴き騒ぎ、木の葉は揺れて、人々は新たな一日に胸躍らせる。

沈黙のうちに日は蒼穹を横切り、沈黙のまま日は沈む。
地上はオレンジ色に染まり、やがて紫色の夕闇に覆われる。

なにもかもがなにかを語ろうとするが、なにを言っていいのか分からなくなる。
鳥は羽をたたみ、木の葉は息を潜め、人々は黄色い電灯の下のテーブルの上に頬杖をつく。

やがて漆黒の闇とともに完全な沈黙が地上を包む。
星星も息を潜めて瞼をパチパチしてそんな様子を伺う。

でも、その漆黒の闇の中で大きくうねり動いているものがある、
天を泳いで、地に潜り込んで、音も立てずに呼吸を続けている。

黒々とうろこを光らせる龍だ!
山犬は脅えて吠え立て、悪霊どもは身を隠す洞窟を探し回る。

そんな出来事も、再び登った日の光の中に溶け込んでいく。
豊穣の沈黙、沈黙の豊穣が再び地上にみち充ちる。