鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

目つき悪ぅ…

2006-08-29 01:45:45 | 鳥・夏
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All photos by Chishima,J.
目つきの悪いキジバト 2006年8月 北海道中川郡豊頃町)


 一大畑作地帯の十勝平野は、これから本格的な収穫の秋を迎えるが、コムギ畑や牧草地など既に刈り取りの行なわれた農耕地も目立つようになってきた。十勝川下流域の湿地近くのそうした畑に特徴的な鳥がタンチョウであるのは、「晩夏の風景」で紹介した通りだが、各地の畑でもっとも普通の鳥は、何と言ってもキジバトであろう。山際から海岸近くまで、ちょっとした刈り取り済みの畑があれば数羽から多い時で数十羽のキジバトが採餌していて、何かの拍子に驚いて飛び立つと、道路脇の電線に鈴なりになることも珍しくない。
刈り取り後のコムギ畑に飛来したキジバト
2006年8月 北海道中川郡豊頃町

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 先日もそんなキジバトたちを観察・撮影した。収穫後間もないコムギ畑は落ち穂や草の種子など魅力的な餌に事欠かないのか、10羽ほどのハトはしきりに地面をつつきながら歩き回っていた。帰宅後、写真をチェックしていると数枚ばかり、ものすごく目つきの悪い表情で写っているものがあることに気が付いた。冒頭の写真はその内の1枚である。普段は丸くて優しげな赤目が、半月状に細めて吊り上げられ、睨みをきかせた凄まじい形相だ。おそらくは周囲を警戒したりする過程で目がいびつな形になったのをたまたま映しこんだもので、ハトの心理的状態等とは無関係なのだろうが、「平和の使者」とされるグループに属するこの鳥の、思いもかけない悪人面に笑いを禁じえなかった。
 キジバトは日本の多くの地域では留鳥で、季節外れの繁殖でも有名であるが、積雪や凍結により冬期に地表で餌を取ることが困難な北海道では、れっきとした夏鳥である。それもヒバリに次ぐ早春の使者である。3月末の麗らかな日中、陽光の眩しさに釣られて開け放った窓から聞こえてくる、周辺の人家の屋根から勢いよく滴り落ちる雪解け水の音と、どこかの木立かアンテナからの「デデーポーポー」の声に胸ときめかすのは、私だけではないはずだ。


雪解けの畑にて(キジバト)
2006年4月 北海道中川郡豊頃町
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 疎林等の樹上に皿型の巣を作って繁殖する。繁殖期には雄によるディスプレイフライトが頻繁に観察される。小刻みな羽ばたきとともに上昇し、尾羽と翼を開いて滑空するその飛び方は、一見ハイタカやツミなど小型の猛禽類のようで、ひやっとさせられることがある。繁殖が終わる頃から群れで農耕地に現れることが多くなるが、秋の深まりとともに数を減らしてゆき、11月頃までにはほぼ姿を消す。


キジバトのディスプレイフライト
2006年6月 北海道帯広市

羽ばたいて上昇
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翼と尾を開いて滑空
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 同じハトの仲間でもドバト(カワラバト)は一年を通して生息しているが、少なくとも十勝では畑や牧草地で見ることは少ないように思う。農村部では、酪農家の牛舎やサイロに住み着いている小群が多く、採餌もその周辺で行なっているようである。都市部では、本州以南と同じくビル街や公園に多い。ドバトは帰化種で野鳥扱いされていないため、鳥見人の中には記録を取らない人も多く、分布や生態に関する情報が集まりづらいのは残念なことといえる。


ドバトカワラバト
2006年3月 北海道帯広市
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給餌(ノビタキ
2006年8月 北海道中川郡豊頃町
収穫後のコムギ畑は植物質のみならず動物質の餌も豊富なようで、ノビタキやオオジュリンなど昆虫食の鳥もよく利用する。

口を開けて餌をねだる巣立ち雛のもとにオスが飛来
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そして給餌
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(2006年8月28日   千嶋 淳)


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