All Photos by Chishima,J.
(エビ類をくわえて浮上したヒメウ 2011年2月 北海道幌泉郡えりも町)
冬の短い陽が傾いた漁港の一角に、一羽のヒメウが嘴に獲物をくわえて浮上した。既に何回もの潜水を繰り返しているのか、水との親和性の高い羽毛は水を弾かず、体の大半が水没している。咄嗟に手にしたカメラを通して見る獲物は、褐色で平べったく、厚みは無い。彼らが沿岸でよく捕えているギンポ類やカレイの仲間といった魚類ではなさそうだ。海藻??それでも何回かくわえ直した後、勝手知らなさそうなそれを食したように見えた。
岸壁に繋留された船の一隻の陰にヒメウを見送り、液晶画面を確認した。海藻と思ったものは、エビの仲間であった。平べったい体の上方には鋏や触角も確認できる。ヒメウの露出嘴峰長が47~55mmであることを勘案すると、頭から尾までが5cmは優に超える獲物のようだ。甲殻類の知識の乏しい私には、エビの種類は残念ながらわからなかった。
エビ類を飲み込もうとするヒメウ
2011年2月 北海道幌泉郡えりも町
図鑑を開くと、ヒメウの項には「甲殻類も食べる」とか「稀に甲殻類も捕食する」とあるが、記憶にある限りでは初めての観察であった。海外の事例に目を向けると、北米ブリティッシュ・コロンビアのMandarte島で、繁殖期のミミヒメウとヒメウの食性が巣内雛の吐き戻しから調べられたところ、ヒメウではニシキギンポの一種やイカナゴ、カジカ類等の沿岸底性魚類のほかに、エビの仲間が数の上では19.4%、重量面では6.8%出現したとのことである(ミミヒメウでは出現せず)。また、近縁種のヨーロッパヒメウは、英国周辺海域ではイカナゴの一種、タラ科、ニシン科等の魚類を主に食べているが、スコットランドのアンガス沿岸で集められた176個の胃の、14%から甲殻類が出現したとのことである。それらの大半は、タラバエビ属のエビであったという。同属で北海道近海に分布するものにホッコクアカエビ(甘エビ)、トヤマエビ(ボタンエビ)、ホッカイエビ(北海シマエビ)等がある(高級食材ばかりだな)が、今回観察したのもそれら、或いはその近縁種だったのだろうか。
ヒメウの英名「Pelagic Cormorant(外洋のウ)」や学名の種小名「pelagicus(外洋の)」はともに、カワウ等淡水域や内湾で採餌する種に比べると、より外海で摂餌することに由来するものであるが、真冬の北海道近海には、今回みたく漁港のような身近な沿岸に糧を求める個体も少なくない。
ヒメウの飛翔2点
2011年2月 北海道根室市
成鳥冬羽。構造色は光線によって緑色や紫色を呈し、美しい。
若鳥。全身が褐色。
(2011年2月14日 千嶋 淳)
標津漁港でつい先日30分ほど観察、撮影しました。10羽足らずのヒメウが探餌の潜水を繰り返していました。ガツナギ(ギンポ類?)を5~10回の潜水につき一回くらいでしたが、カニもって上がってきたことがありましたよ。で、ゴメに横取りされていました。小さいゴミみたいなのを持って上がってきたこともありましたが、加えて振り回しているときに飛ばしてしまっていました。
カニも食べてるんですね。まあ奴等はジェネラリストですから、手近にあって餌になりそうなものは何でも食うのでしょうが、漁港内にそんなにエビやカニがいるのがちょっと意外です。
ゴメによる横取り、私は先日花咲港でスズガモやコオリガモ相手にやってるのを観察しました。カモがくわえている餌は、小さくて細長い何かで、確認のため写真を撮ろうとしたのですが、あまりにすぐゴメが奪ってしまうので、結局わからずじまいでした。