鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

十勝の自然76 コクワ(サルナシ)

2016-01-05 23:05:35 | 十勝の自然

Photo by Chishima, J.
サルナシ 2015年10月 北海道帯広市)


(FM JAGAの番組 KACHITTO(月-木 7:00~9:00)のコーナー「十勝の自然」DJ高木公平さん 2015年10月7日放送)

 先の週末、帯広郊外の林を植物の専門家の方と一緒に歩きました。素人目には花も終わって寂しい限りの秋の林ですが、乾燥してドライフラワーとなった猛毒のトリカブトを見たり、白い実を付けて地上部で冬を越すフッキソウは実(じつ)は草ではなく木、というのも草というのは地上部が枯れて地中で冬を過ごすからだそう、であることなどを教えていただいたりと、秋ならではの植物の見方を楽しみました。
 それらの中で最も秋らしかったのは、やはり様々な果実です。ヤマブドウの濃い紫やチョウセンゴミシの鮮やかな赤い実を目で、時に舌で愛でながら散策しましたが、一番人気は何と言ってもコクワ。コクワは正式名称をサルナシというマタタビ科のツル植物で、6月末に白い花を咲かせた後、8月末くらいから緑色の、キウィフルーツを無毛にして小さくしたような実をつけます。それが熟れて柔らかくなる今ごろ、キウィに負けずとも劣らない、いや、それ以上の素晴らしい甘味を醸し出すのです。大人も子供も夢中になってツルを手繰り寄せては実を摘み、口に頬張りました。
 このコクワ、人間だけでなく、野生動物の大好物でもあるのです。北海道ではヒグマ、本州ではニホンザルやツキノワグマが好んで食べます。残念ながら見たことないのですが、コクワばかり食べたクマの糞は、キウィのジャムそっくりの見た目をしているそうです。このように、ヒトを含む哺乳類が好む味であること、哺乳類に発達した嗅覚を刺激する甘い臭いを発することなどから、主に哺乳類が実を食べることで種(たね)を分散させて進化を遂げてきたと考えられます。
 生食のほか、ジュース、砂糖漬け、もちろん果実酒にも用います。中札内村では以前、「コクワワイン」なるものを商品化していたそうです。
 朝の冷え込みや冷たい雨を経るごとに色づく秋の林で、果実の恵みに預かる週末なんて、いかがですか?ただ、中には苦いものなどもありますから、詳しい人と一緒の方が良いでしょう。


(2015年10月6日   千嶋 淳)

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