鳥キチ日記

北海道・十勝で海鳥・海獣を中心に野生生物の調査や執筆、撮影、ガイド等を行っています。

海鳥を読む⑩「Petrels, Albatrosses & Storm-Petrels of North America」

2014-08-05 22:10:46 | 海鳥
Img_0001
NPO法人日本野鳥の会十勝支部報「十勝野鳥だより184号」(2014年3月発行)掲載記事「海鳥を読む」を分割して掲載)


「Petrels, Albatrosses & Storm-Petrels of North America」(Steve N. G. Howell著、257×185mm、483ページ、Princeton University Press、2012年)
 北米のミズナギドリ、アホウドリ、ウミツバメ類の写真図鑑。太平洋も範囲に含まれており、日本で記録のある種の大部分が扱われている。大半が海上で撮影された多数の写真は画質も良い。分類や保全を含む58ページの総論に続く各種の解説は換羽や年齢識別、渡りパターンなどにも触れ、尾筒の色によるクロアシアホウドリの年齢識別など、すぐにフィールドで役立つ情報も満載だ。普通、書籍紹介では何がしかのアラを見付けて言及するものだが、今のところそれが見付からない、完璧な図鑑である。本書の出版を知ってアマゾンで取り寄せ、手にした時には大いに驚き、嬉しさと悔しさの入り混じった複雑な感情に襲われたものだ。いつか作ってみたいと漠然と思っていたような本が目の前に現れたのだから無理もない。著者のHowell氏には他に「Peterson Reference Guide to Gulls of the America」(516ページ、Houghton Mifflin Harcourt Publishing、2007年)「Peterson Reference Guide to Molt in North American Birds」(267ページ、Houghton Mifflin Harcourt Publishing、2010年)など多数の著書があり、前者は雑種も含めたカモメ類、後者は北米の鳥の換羽に関するガイドで、どちらも写真が多用されている上に解説のレベルも高い。氏はバードウオッチングツアー講師も務める野外鳥類学者・ライターとのことであるが、これだけ質の高い本を次々出しているのを見ると、凡人の筆者は「いつ寝たり、晩酌しているのだろう?」と余計な心配をしてしまう。ミズナギドリ目のフィールドガイドとしては「Albatrosses, Petrels & Shearwaters of the World」(Derek Onley and Paul Scofield著、Princeton University Press、2007年)も良書だ。こちらは45枚のプレートに、類似種が並べて描かれたイラストが特徴的(独特のタッチで好みは分かれるかもしれない)で、分布やJizzも詳述された解説と合わせて、野外で使いやすいサイズである。ユニークなのが「Multimedia Identification Guide to North Atlantic Seabirds Storm-petrels & Bulwer’s Petrel」(212ページ+2DVD、Bob Flood ほか著、Pelagic Birds & Birding Multimedia Identification Guides、2011年)。北大西洋のウミツバメ類とアナドリの図鑑で、観察さえ難しいウミツバメ類が130枚以上のカラー写真で紹介されるだけでなく、付属の2枚のDVDでは海上や繁殖地での姿を動画で堪能できる。コシジロ、ヒメクロ、クロコシジロなど、太平洋との共通種も多い。


(2014年3月   千嶋 淳)



最新の画像もっと見る

コメントを投稿