Ommo's

古い曲が気になる

アラン・フリードのほかに、もうひとりムーンドッグがいた

2009-08-11 | 日記・エッセイ・コラム

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ロックの歴史のなかで、もっとも有名なラジオのディスクジョッキーが、アラン・フリードだろう。

自ら「ロックンロールの父」と言っていた、デスクジョッキーのアラン・フリードは、たしかに「ロック」という語をポピュラーにした。白人相手のラジオ局で、積極的に黒人の流行歌、R&Bを流して、黒人音楽を白人ティーンエイジャーに広く普及させた功績は大きい。

ロックという語は、「rock and roll !」 とアラン・フリードが番組で叫んだのが、最初、という伝説があった。しかし、rock を、ロックの様相の音楽に使っていたのは、1930年代からのことで、アラン・フリードがはじめて使ったわけじゃない。それに、白人の十代の子たちが、黒人音楽を聴いて踊っていたのは、ずっと前からで、アラン・フリードの番組以前のことだ。

だが、たしかに、1951年にオハイオ州クリーブランドのAM局、WJWではじまったアラン・フリードのR&Bの番組は、時代の波にのって大ヒットした。ブームを煽って、ロックをビッグビジネスにした功績は大きい。アラン・フリードの存在なくして、チャック・ベリーなどチェス・レコードのアーティストの成功もなかったろう。

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アラン・フリードが、プロデュースしてR&Bのミュージシャンが出演したダンス・パーティー The Moondog Coronation Ball は、一万人以上の客を集めて大成功だった。これは、史上はじめてのロック・コンサートといわれる。そして、勢いにのってニューヨークに進出してはじめた放送とショーも大ヒットする。

      

アラン・フリードは、自分のことを「ムーンドッグ」と言い、番組やショーに「Moondag 」の名称を使っていた。しかし、Moondog は、ニューヨークの有名な前衛ストリート・ミュージシャンで、詩人の芸名、ペンネームだった。

これは偶然の一致ではなく、アラン・フリードが、じぶんの番組のテーマに、このMoondog 作曲の曲を無断で使っていたのだから、意図的なパクリか、盲目のストリート・ミュージシャンを軽くみたか、だろう。

しかし、Moondog の支援者たちがおこした訴訟に、1954年、アラン・フリードは負ける。

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この自作の衣装で、ニューヨークの街角に立って、自作の音楽を演奏して、詩を朗読した。

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Moondog の名称は使えなくなったが、ニューヨークでも、アラン・フリードの放送とショーは、大成功する。

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しかし、1959年、ペイオーラ事件が起きる。レコード・メーカーから、ディスクジョッキーがワイロを取ってヒットチャートを操作している、というスキャンダルだ。明らかにアラン・フリードが標的にされていた。議会の公聴会に召還され、アラン・フリードは、否認しなかったので起訴されたのだ。罰金と謹慎の実刑判決だった。これで、アラン・フリードの栄光は、終わった。ディスクジョッキーが、放送という武器を奪われたのだ。

アラン・フリードは、ニューヨークの放送局を解雇され、その後は、ニューヨークを離れ、ロサンゼルス、マイアミの放送局を転々として、借金苦とアル中状態で病死している。1965年。まだ43才だった。

ペイオーラ事件は、黒人と白人の、人種の融合を意図したようなアラン・フリードの行動と存在を恐れた保守派の陰謀、という説がある。たしかに、アラン・フリードは、このペイオーラ事件で抹殺された。もし、彼一人が標的の陰謀なら、みごとに成功したわけだ。しかし、アラン・フリードを葬っても、ロックの勢いも、公民権運動も収まらなかった。

大統領が、白日暗殺され、ノーベル賞候補の著名な黒人牧師が射殺される国だ。黒人音楽を熱愛する白人DJが、黒人音楽で白人の若者を煽った、と、それだけの理由で社会的に抹殺されても、不思議はない。そんな恐ろしい時代だった。(時代の寵児と、もてはやされていた成功者に対する、ねたみもあったろう)。

07adddd063ed6df8_landing  Photographer/Joseph Schersher (C)Time Inc.

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     映画「Rock, Rock, Rock 」 アラン・フリード・オーケストラ http://www.youtube.com/watch?v=e8O8kzdpsLY

  アラン・フリードがプロデュースした映画「Go, Johnny, Go! 」http://www.youtube.com/watch?v=uMY5VGYh2Go&feature=fvw

                           

ペイオーラ事件は、放送での選曲権を握っているDJやディレクターが、レコード・メーカーから金をもらって特定のレコードをかけることが、違法だ、と問題にされた。だが、それは当時の業界の普通の慣習で、とくべつアラン・フリードが悪質だったわけではない。

いまもそれは、合法的な形に変わって行われていることでもある。放送で曲をかけることに関しては、日本でも、表裏、さまざまな形態で、放送局とレコード・メーカーとの金銭関係があるのじゃないかな。

                      

  アラン・フリード・ショーのポスターと出演者 http://www.youtube.com/watch?v=moLXFru2clM

  アラン・フリード  オフィシャル・サイト http://www.alanfreed.com/


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