tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

政府はこれからの円レートをどう見ているのか

2018年02月20日 14時51分39秒 | 経済
政府はこれからの円レートをどう見ているのか
 為替レートというのは、経済や経営にとって言えば、度量衡における『メートル原器』のようなものだと書いてきました。
 建築や各種の設計では最小限度の誤差で正確にモノを作ることが求められます。こうした作業は『メートル原器』があってこそ可能になります。

 経済や経営でも、今年度は円レートは平均いくらいくらという想定の下に計画を立てます。想定した円レートに狂いが生じれば、計画と実際にその分だけ誤差が発生します。
 今は変動相場制だから、「それも仕方がないことだ」で済む場合もありますが、すまない場合もあります。典型的なのは、プラザ合意による円高、リーマンショックによる円高などでしょう。

 こうした円レートの変動をただ単に受け入れて、それへの適応だけを一生懸命やってきた日本が、全く違った行動に出たのが、黒田日銀の2発の黒田バズーカです。
 それぞれが20円幅の円安を実現し、円は1ドル80円から120円までの円安を実現し、日本経済は息を吹き返しました。これはまさに大きな成功体験でした。

 ところで今はどうでしょうか。このところどうも円高基調で、今日も106円台です。昨年末から今年の年初にかけて、アメリカの利上げのペースが早まりそうだから、円安傾向が続くという意見が強かったようです。
 しかし、突如、アメリカの政権内部から「ドルは強すぎる」という発言が出て、「やはり強いドルが良い」と打ち消されましたが、その後の動きは微妙です。

 これから世界に先駆けてアメリカが金利の正常化を進めていけば、ドル高傾向は当然というのが経済学の常識でしょう。しかし経常収支でも、財政収支でも赤字体質のアメリカ経済の実態は「武士は食わねど$高楊枝」とはいかないでしょう。本音はドル安指向とみる方が自然かもしれません。

 こうしたアメリカの事情を忖度して、そこにビジネスチャンスを見出そうと国際投機資本が権謀術策を駆使する事は当然予想できます。
 こうした欲望渦巻く思惑と投機の世界に対して日本政府はどのように対応しようとしているのでしょうか(この所の要人の不用意な発言もあります)。

 「来年度の政府経済見通し」では、昨年11/8-12/7の1か月間の平均である112.6円で一定と推定、と書いてあります。この「メートル原器」は、どうも政府の意に反して勝手の伸び縮みするのです。

 為替レートは今や一国経済の生命線になっています。政府・日銀は、信念をもって為替レートの安定に最大限の注意を払う意思を内外に示す事が国内的にも国際的にも、権利であり義務でもあるのではないでしょうか。