tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

経常黒字拡大を喜ぶべきか?

2018年02月10日 12時18分42秒 | 経済
経常黒字拡大を喜ぶべきか?
 2017年暦年の経常収支(速報)が一昨日の8日に発表になりました。21兆8700億円で、前年比5.9%の伸び(速報同士の比較)で、黒字幅は2007年(リーマンショック直前、24.9兆円)に次ぐ水準だそうです。これはGDPの約4%になります。

 経常収支は、単純に言えば、昨年日本が稼いだ金額から日本が使った金額を差し引いたものですから、家計になぞらえれば、収入を全部使わなかった、つまりその分が貯蓄として残ったという事で、国で言えば、対外債権として残ったという事です。

 アメリカの経常収支は日本と逆で万年赤字で、トランプさんは海外からカネを集めて資金繰りをつなぐことに躍起になっていますが、その点日本は超健全経営です。

 上記の2007年に次ぐ黒字幅という事ですが、マスコミが報じていますように、黒字の中身は随分変わってきています。
 先ず貿易収支の黒字は大幅に減り、第一次所得収支(海外からの利子・配当など)の黒字幅が増加し、サービス収支の中の旅行収支が2兆円の赤字から1.7兆円の黒字に転換しています。

 貿易収支の黒字の減少は、トランプさんではありませんが、「アメリカに輸出するな。アメリカに工場を作れ」という事で、日本企業の大きな投資は最近外国で行われています。輸出より現地生産、場合によっては逆輸入で、貿易収支の黒字は大幅に減っています。

 一方、日本企業が外国で生産して利益が出れば、利子・配当は日本に入りますから、日本企業が外国に出れば出るほど第一次所得収支は増えます。
 2007年には貿易黒字が経常収支黒字の57%でしたが、2017年には22%に減り、第一次所得収支が90.0%(19.7兆円)になっています。

 日本企業の海外進出はますます盛んですから、経常黒字の大部分は海外からの利子・配当などといった形になるようですし、多分旅行収支の黒字も増えるでしょう。
 これらは、貿易収支よりも、多分安定性が高いでしょうから、今後も日本の経常黒字は安定して増えていく可能性が高いようです。 
 ちなみに政府経済見通しでも、今年度の経常黒字は21.4兆円、来年度は22.8兆円となっています。

 この経常収支黒字の増加は、日本人、日本企業の頑張りの結果ですが、あまり黒字が増えるとどうしても副作用が出ます。
 この所、アメリカ発の株価暴落が見られますが、こんな時は、差し当って安全通貨として円が買われます。円高になると、それに反比例して日本の株価は下がります。
 株だけならまだしも、あまり黒字が増えると、プラザ合意やリーマンショックの時のように、日本は円高を強いられます。
 円高が日本経済にどんな悪影響を与えるかは日本人は痛いほど知っています。

 経常黒字の主体である第一次所得収支は実はGDP には入っていません。理由は外国で生まれた付加価値だから、国内(GDPのD:Domestic)ではないからです。
 これの入った数字は「国民総所得」(GNI)です。これが日本人の(稼いだ)使えるおカネですが、GDPより20兆円ほど大きい額です。

 使い残して経常黒字で日本は健全だと喜ぶべきか、黒字が増えるのは、使えるカネも使わず貧しく暮らしているわけで、そのために外国から円高を強いられる羽目になるか、アメリカが万年赤字で困っているだけに、日本は良く考えた方がいいように思うのですがどうでしょうか。