tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

2017年、毎月勤労統計と消費者物価指数から見えること

2018年02月08日 12時33分18秒 | 経済
2017年、毎月勤労統計と消費者物価指数から見えること
 最近発表になった上の2つの統計を組み合わせてみますと、勤労者の生活の基礎的な実態が見えるように思います。
 マスコミでも、「2017年は、現金給与総額は0.4%の上昇にとどまったが、消費者物価が0.5%上がったので実質賃金は0.1%の低下だった(調査産業計・5人以上事業所)」といった報道がされています。

 一昨年の2016年は、現金給与総額は0.5の上昇で、消費者物価は-0.1%でしたから実質賃金は0.6%の上昇でした。なんだ、去年は景気が良いと言われたのにマイナスか、という事になります。

 主要な原因は、現金給与総額の上昇は余り変わらないのに、消費者物価が上がったからです。
 一方、労働時間の動きを見ますと、2017年は前年比0.3%の減少で、一昨年は0.6%の減少ですから、1時間当たりの現金給与総額で見ますと、一昨年との差はさらに大きく、昨年は景気が良くて、忙しく、労働時間の短縮も少なく、賃金の伸びも少なく、物価だけが上がったという事になります。

 消費者物価が上がったのは、消費者物価統計でみますと、総合物価の上昇が0.5%で、生鮮食料品を除く総合も0.5%の上昇と同じで、生鮮食品とエネルギーを除く総合の上昇は0.1%です。
 という事は、消費者物価の上昇はほとんどがエネルギー価格の上昇によるものという事が解ります。つまり、実質賃金がマイナスになった主因は、国際的な石油価格の上昇という事になるようです。

 消費者物価統計の10大費目別の項目を見ますと、それぞれにプラスマイナスはありますが、すべてが対前年比1%未満の変化で、「水道・光熱」だけが2.7%という上昇になっています。
 勿論水道料金がそんなに上がっているのでなくて、石油・ガス関係でしょう。しかしこの項目は、一昨年までの4年間、4.6%、6.2%、-2.6%、-7.3%と国際価格の変動で上がったり下がったりです。

 下がった時は輸入国が得をし、上がった時は産油国が得するという事で、世界共通です。日本政府の国内政策ではどうにもなりません。
 それ以外日本の物価は安定基調です。これは賃金コストプッシュが少ないからで、賃金上昇が生産性の上昇で吸収されている結果です。
 サービス部門や、加工食品など、生産性の上がりにくい所では価格の上昇がみられますが、平均的には基礎的な物価は安定です。
 これは、消費者サイドから見れば、いわば理想的な状態で、特に年金生活者などからは歓迎でしょう。

 一方、政府・日銀は物価を2%まで引き上げたいという主張ですが、生産性が順調に上がりませんとコストプッシュ・インフレになります。
 今回のアメリカの株暴落も、賃金上昇の加速でインフレから金融引き締めというシナリオを読んでの事のようで、この辺りには、経済全体をバランスよく見渡した適切な判断がが大事なところでしょう。