tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

働き方改革で抜け落ちているもの

2018年02月21日 15時22分21秒 | 経済
働き方改革で抜け落ちているもの
 国会で賛否両論の「働き方改革」ですが、この所はまた政府の説明したデータなどで混乱の度を深めています。
 しかし何と言っても、絶対多数を誇る与党ですから、最後は「長時間議論しました」という事で政府案がそのまま通るのでしょうか。

 この法案が通ったからといって、日本経済がそれで変わるとも思われないので、絶対多数には敵わないという気持ちで眺めていますが、改めて安倍政権の「働き方改革の目指すところ」をみてみますと、どうも一番大事な問題が抜け落ちているように思われてなりません。

 官邸の資料には「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ。多様な働き方を可能とするとともに、中間層の厚みを増しつつ、格差の固定化を回避し、成長と分配の好循環を実現するため、働く人の立場・視点で取り組んでいきます」と書いてありますが、中間層を厚くしたり格差の固定化を回避したりするのは、働き方を変えることでは難しいように思われます。

 さらに「基本的な考え方」の中に「働き方改革こそが、労働生産性向上の最良の手段」と書いてありますが、これもどうも正しくないようです。

 日本の戦後の経験をご記憶の方も多いと思いますが、生産性向上に最も大事なのは「働く人の教育訓練と、本人の人間性(生きる事への目的意識)育成」です。
 日本企業はこれをきちんとやって来た故に、「ジャパンアズナンバーワン」に至る成長を成し遂げてきたのです。

 しかるに、プラザ合意、バブル崩壊、リーマンショックで異常な円高が続き、日本企業は長期のじり貧に苦吟し、教育訓練費は削り、人を育てず、雇用を不安定にし、人間重視の日本的経営から逸脱した20数年の後遺症が、今、円レートが正常化した後も日本経済の回復を遅らせているのです。

 不況の期間がもっと短ければ、経済環境が正常に復せば「人を育てる経営」への回帰はもっと早く進んだでしょう、しかし低迷の時期が長すぎたために、人を育てる経営のノーハウが、 失われてしまっている企業も少なくないようです。

 「働き方改革」という着想にしても、「生産性向上に最も必要なものは人を育てること」という視点が抜け落ちたまま、裁量労働とか同一労働同一賃金とか、テクニカルな問題だけの論議になってしまっているというのが、今の現実なのです。

 日本経済が新しい発展の段階に入りつつある今、より多くの日本の経営者が、人を育てる」という経営の原点に早く回帰してほしいと思いながら、このブログも書いています。
 「百年(終身)の計は人を植えるに如かず」