tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

平成という時代:「いざなぎ越え」と「グリーンスパン・マジック」

2018年02月01日 16時03分36秒 | 経済
平成という時代:「いざなぎ越え」と「グリーンスパン・マジック」
 この所、アメリカの金融正常化(金利の引き上げ)の中で、アメリカ自体、ドルが高い方がいいのか、安い方がいいのか、発言が交錯しています。
 そのドルの影響を日本はまともに受けます。それは、トランプさんが対日貿易赤字を懸念し、国際金融資本が「円は安全通貨」という事で、「何かあると円買い」という行動を取り、為替に敏感な日本経済が影響受け易いからでしょう。

 平成時代の真ん中に位置し、不況か好況か解らないような時期として有名な「いざなぎ越え」(2002~2008年)も、このシリーズの前回までの様にアメリカとの関係で見ていく必要があるようです。

ご承知のように、「いざなぎ越え」は「いざなぎ景気」より長い景気上昇という事でつけられた名前ですが、これは統計数字上の話で、日本では殆どの人達は、実感としては、ずっとデフレ不況と思っていたようです。

 1991年から2002年まで続いたプラザ合意による円高を、コスト(中心は人件費)削減で乗り切るために企業はコストカットを続けて物価を下げ、いざなぎ越えの期間においてもGDPデフレーターはずっとマイナスを続けています。

 その結果、名目GDPはずっと横ばいでしたが、実質GDPは、僅かなプラス成長を続けていましたという事です。つまり、名目値の成長がほとんどなくても、物価が下がったから実質はプラスといった統計計算上のプラス成長状態が「いざなぎ越え」だったのです。
これでは、現実の経営や生活ではデフレ不況の状態と感じるのは当然でしょう。

 ところでその間、アメリカはどうだったのかといいますと、1987年にFRB議長にグリーンスパンが登場し、その直後にブラックマンデーの株価暴落(根底にはアメリカの経常赤字がありましたが投機筋の思惑が増幅したようです)がありましたが、その後は、いわゆるグリーンスパン・マジックと言われたFRBの金利操作で順調な経済状態を維持しています。

 しかしその背後では、アメリカ経済の破綻が進んでいたようです。グリーンスパン・マジックの内実は、当時このブログでも何度も取り上げていますが、「アメリカが赤字であれば、黒字の国がある。黒字の国からアメリカにカネを還流させればアメリカは経常赤字でも困ることはないという事だったようです。

 これは国際投機資本などの駆使する金融工学によって進められてきたようです。
経常赤字でも繁栄できるアメリカ経済では住宅バブルが起き、カネを借りて家を買えば、家が値上がりしてそれを担保にカネを借りれば贅沢な暮らしができるという住宅バブルが蔓延していたようです。

 かつての日本は土地バブルでしたが、アメリカは住宅(土地付き)バブルだったのでしょう。その結果、アメリカの経常赤字は急激に拡大し、2006年にはGDPの5.82%にまで達します。
 グリーンスパンは2006年にバーナンキと交代しますが、その直後にサブプライムローンの債権化の破綻、そしてリーマンショックとなって、アメリカ発の金融危機は世界に広がっていきます。

 日本の「いざなぎ越え」は、2006~2007年頃には、何とか正常な経済状態に復帰可能かという段階にまで達していたと見ていますが、リーマンショックは、日本経済をさらなるデフレ不況の深淵に落とし込みました。