tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

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経常黒字の主因は国際競争力よりも日本人の生活態度では?

2017年04月22日 11時44分50秒 | 経済
経常黒字の主因は国際競争力よりも日本人の生活態度では?
 日本が大幅黒字国ということで、アメリカは、今後いろいろと対日圧力をかけてくると予想されるところから、日本経済の問題点をこの3回ほど書いてきています。

 意図しているのは、日本が国際競争力が強いから黒字国だという指摘は「必ずしも正しくない」ということを指摘することです。

 ということで、前回
人件費―消費 + 貯蓄―投資 + 税金等―政府支出 = 経常収支
という計算式を導き出していきました。これは多少形は違っても、国民経済計算ではよく使われる計算式です。
 日本の場合、経常収支の黒字が大きいのは、人件費―消費(家計部門の黒字)が大きすぎて結果が万年黒字国、と前回指摘しました。

 ということは、日本の黒字は、国際競争力に関係なく「消費が不足しているから」という説明になるわけです。

 これに対して、通常は、黒字の原因は「企業の競争力が強く、価格が安く、製品やサービスの質が良いから」という理解が一般的でしょう。
 トランプさんのように、アメリカの輸出が伸びないのは価格が高いからで、それはドルが高いからで、もっとドル安にしなければならないということにもなります。

 つまり、黒字になるのは競争力が強いから、だから為替レートや、関税で調整すればいいという理解と、黒字になるのは、国民の意識や生活態度によるもので、国際競争力は関係ない、という理解の2つがあるということです。

 さて、どちらが正しいのでしょうか。
 外国の事は良く解りませんから、日本の場合を考えてみましょう。1985年にG5でプラザ合意があり、日本の円レートはその後2年で$1=¥240から¥120になりました。日本の国際競争力は半分に落ち、日本は大幅赤字国になるはずでしたが、実は一度も赤字になっていません。

 なぜでしょうか? 理由は、 日本人は収入が減れば、それに支出を合わせ、赤字にならない努力をするからです。
 プラザ合意の後バブル崩壊があり、日本経済は次第に成長しなくなりGDPは1997年の534兆円から2009年には489兆円に1割近く減りましたが、日本一貫して黒字国でした。

  アメリカやギリシャだったら、生活のレベルを下げるのは嫌だといって赤字を増やしたかもしれませんが、日本人は違うようです。

 実はここに日本経済の大きな危険の要因が潜んでいます。「いくら円高にしても、黒字が減らないではないか」まだ国際競争力が強いようだ、もっと円高にしろ。」ということで、際限のない円高要因になる可能性があります。
 リーマンショック後の$1=¥80の頃、日本はそうした危機にあり、学者の中にも将来1ドル50円になって日本は潰れる、などといった方もいました。

 「入るを図って、出ずるを制す」は財政学の基本で、立派な考え方かもしれませんが、相手が日本人の生活態度、処世哲学を知らないと、とんでもない結果(損)に至ることになります。
 今後、日本にとっては益々 家計の消費を増やすような(将来不安を解消するような)政策が必要になって来るだろうということになるのではないでしょうか。

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