tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本がゼロ金利にしなければならない理由

2020年08月26日 22時03分04秒 | 経済
日本がゼロ金利にしなければならない理由
 日本の銀行がその本来の業務である『預貸』で収益を上げられなくなった理由が、ゼロ金利にあることは明らかでしょう、ならば、なぜゼロ金利にしなければならないかを問わねばなりません。

 金利を決めているのは日銀でしょうが、黒田さんが一番恐れているのは円高でしょう。何せ『黒田バズーカ』を2発撃って、円レートを1ドル=80円から脱出、120円の円安を実現し、アベノミクスのスタートを仕掛けたご本人です。

 今、世界的に金融政策(金利の設定や量的調節)は、実体経済の活動に働きかけるというよりは、為替相場に影響を与えることが主眼ということになっています。
 もし、日銀が、今の異次元金融緩和をやめ、金利の正常化を選ぶという事になれば、多分円高が急速に進むことはだれもが知っています。

 ご承知のように、日本の「円(¥)」は世界でも信用があり、かつては「有事のドル」などとドルが大切にされましたが、今は「 何かあると¥」という事で¥が買われ、油断するとすぐに円高になるという状況です。

 これもご承知のように、いまの日本経済には円高が一番恐ろしいのです。これは、平成不況、リーマンショックの経験で日本の政治家も経済学者も、ビジネスマンも解りすぎるほど解っています。
 という事で、日銀は、政府とともに(アメリカと同じ)2%インフレ目標を設定し、そこにいくまでは徹底的に「異次元金融緩和」を続けると宣言し続けることになります。
 しかし、なかなかインフレにはなりません。結果的に「ゼロ金利」がいつまでも続いているわけで、銀行が「預貸業務」で経営を維持することは容易でなく、銀行氷河期は終わりません。

 なぜこんな事になったかと言いますと、日本の事情としては、万年黒字国で、世界トップクラスの資産保有国だという事でしょうか。
 そして主要国経済を見れば、実体経済よりマネー経済の金額の方が圧倒的に大きい、マネー資本主義の世の中になっている現実があります。

 そしてマネー資本主義は、GDPを成長させることには直接関係なく、
 資本→投資→GDP増→インカムゲイン ではなく、
 資本→投機→キャピタルゲイン で 直接カネでカネを稼ぐのが主要な仕事です。
 つまり、金利はゼロでも、株やデリバティブで直接カネを稼ぐビジネス(ギャンブル?)が肥大しているのです。

 今、アメリカでも日本でも、経済成長は不振でも、株価は上がるという「実体経済ではない、蓄積されたマネーのインフレ」が起きているという事になるようです。
 そしてこれは、低成長経済、いわばゼロサム経済の中で、マネーゲームの勝者が豊かさを得る、一部の富裕層が富を独占するという 格差社会化の促進要因になっています。

 ピケティの「新資本論」は、「資本収益率は経済成長率より高くなる」ことを指摘し、資本主義社会は格差を拡大するとしています。マネー資本主義はそれに拍車をかけるのでしょう。

 銀行が「預貸業務」で生きられないという現実、ゼロ金利時代の背後にはこうした、資本主義の変容、変動相場制の一般化、資本主義の「マネー資本主義化」という現実があるのです。

 残されるのは、資本主義をより良いものにしてくために、いまのままでいいのかという現代社会への「本質的な問い」ではないでしょうか。

 結局、みずほ銀行の「 紙の通帳有料化」の問題も、この大きな氷山の一角という事になるのでしょう。