tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

MMTについて種々考えてみましょう(3)

2020年08月04日 22時17分36秒 | 経済

貨幣数量説が現実に合わなくなった
 貨幣数量説というのは、インフレを説明する学説で、物価は貨幣の流通量で決まるという考え方です。
 最近でも「ヘリコプター・マネー」などという経済学用語がありますが、ヘリコプターから市中にお札をばら撒けば物価が上がる(通貨の量が増えて、みんなが物を買うから)などという説明をよく聞くところです。

 ところが最近、日本では政府が赤字国債を出してカネを使い、国民に一律10万円を配っても、日銀が異次元金融緩和を物価が2%上がるまで続けるといっても物価は一向に上がりません。貨幣数量説は、現実に合わなくなってしまったようです。

 何故でしょうか、素人考えでも答えは簡単なようで、カネがあっても使わない人や、使いたくない、また使えない場合が増えたという事ではないでしょうか。
 昔は皆おカネがなかったので、カネがあればすぐに何か欲しい物を買ったのかもしれませんが、自分のことを考えても、今は少し違うようです。

 原因はいろいろあるようで、需要面からみると、豊かになったから、今すぐ使う必要はない、さし当たって欲しい物がない、あるけどそれは少し高すぎる、高すぎるマンションを買ってローンの返済中の人はまずローンの返済(ローンの返済は統計上は「貯蓄」です)、待っていればもっと良いものが安く出るから今は買わない、そして、極めつけは、長生きの危険があるので老後のために貯金、などなど、でしょうか。

 供給面からみると、みんなが買って値上がりするようなものがあれば製造に新規参入が増えて品不足は解消されてしまう(最近のマスク)、海外から輸入もあるし、何時までも足りないようなものはあまりない、新製品が出るので、旧型は値下がりする、安い中古品がいっぱいある、などなどでしょうか。

 更に、より広い目で見ると、輸出入が自由になって、国際競争力についての知識が広く理解され、国際競争力を落とすような賃上げを労使ともに望まない、などという現実もあります。

 こんな状況ですから、ヘリコプター・マネーなどという言葉も、貨幣数量説の説明も、あまり意味を持たないような現実になっているのかも知れまません。

 ただ、いろいろ考えると、これは当面の話で、長い目で見ると、まさに色々な形、時には予期しないような形で、貨幣の洪水が実体経済に悪影響をもたらすこともあるようです。
 このあたりはまた論じたいと思います。

 最近は多くの国で、残念ながら、政治がポピュリズムに堕す傾向が強く、目標は単純に次の選挙で、その先のことまでは考えられないという傾向が強いので、MMTなどという経済理論が生まれる素地を作ったり、将来は何処へ行くのか解らずに当面の目標だけで政策を打つ国が何となく増えているように感じられます。

 最近の地球社会の混乱、分裂や対立の頻発は、こうした民主社会も全体主義社会も含めた近視眼的な政策の流行の結果と言っても誤りではないように思います。

 この世界的な風潮の中で、日本もかなり強く影響を受けていることは否定できないようです。そして、これに歯止めをかけられるのは、国民がポピュリズムに毒されずに、選挙でより賢明な判断をすることしかないのでしょう。

 卑近な例を引けば、アメリカが、また日本自身も、そう遠くない時期に、それを試されることになるのではないでしょうか。