tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-3

2020年06月01日 15時48分52秒 | 経済
当面インフレにはなりそうにない

 前2回の検討で見れば、当面は、インフレになりそうな気配はないようです。

 インフレというのは消費者物価や、GDPデフレータ(国内のすべての生産物・サービスの平均値上がり率)が上昇することですから、家計(消費者)が自由に動けず売れるのは食品の出前やテイクアウトぐらい、旅行やイベントは中止がほとんどで、消費不振から経済成長がマイナスになるのが心配という状態の中では、消費者物価は上がりそうにありません。

 一人10万円で、一息つける人もおられるでしょうが、物価が上がるような購買力にはならないでしょうし、10万円は貯金に回す家計も多い事でしょう。

 企業物価も世界中不況で原油をはじめ原料価格も低迷ですから当面上昇の気配はないでしょう。 これではインフレにはなりません。

 一方、日銀が国債やETFを市中からの買い上げることで供給される巨大な流動性・ジャブジャブのお金は、多分証券市場の方だけで回転しているのでしょう。お陰で日経平均は連騰状態ですが、これは物価上昇とは言わず「バブル」というのでしょう。

 アメリカもまさに同じような状態で、日本もアメリカに準じて動く、追随するというのが今の世界経済の中で起きている現象でしょう。

 コロナ禍で世界中で経済が停滞する中で、なんとか基本的な経済活動だけでも維持しようというのですから、ある程度の金融・財政政策の行き過ぎは、ある意味では必要不可欠という意味もありますから、その意味では、コロナ禍の拡大を避けつつ社会経済活動の回復を徐々にでも前進させようという点では、現状の日本は(検査体制の遅れは些かひどいですが)まあ及第点でしょう。

 余談になりますが、いま世界中で関心の的になっているのは、日本という国は、新型コロナへの政策対応は何か曖昧模糊ですが、結果は極めて良好なものになっている。その理由は一体何なのだ、という事のようです。
 この答えが、何時、どう出るかは(誰がどう出すか)注目すべきでしょう。

 ところで問題は、今回の2次にわたる補正予算で、財政のタガは完全に外れました。政権にとっては「コロナのせいで仕方ない」という言訳が出来たのかもしれませんが、いずれ、「この状態にどう始末をつけていくのか」を考えなくてはならない時が来るでしょう。

 此処でのテーマも、本当は、野放図になってしまった財政・金融を、「無策」のままでいたらどうなるのか、よく言われるように、「インフレで日本経済は破たん」「国債は紙屑」「恐ろしいスタグフレーションが来る」などという危険性はないのか、という問題なのです。

 「金融も財政も節度を守らなければ日本経済の将来はない」という意見はあくまで主流です。
それに対して、MMT(Modern Monetary Theory:新時代の貨幣理論)は、マネーを上手く使えばそれでいいんだよ、と言っているようです。

次回は、当面の問題から、こうした将来の問題に進んでみたいと思います。