tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

MMT(新時代の貨幣理論)が成り立つ条件とは?

2020年06月08日 15時46分31秒 | 経済
(金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-7)
 まず、MMTが対象にしている国は日本とアメリカのようです。ギリシャやイタリヤやアルゼンチンなどは、インフレ、デフォルトが現実問題になるので枠外でしょう。
 もちろんこれらの国はユーロやドル建ての国債で、自国通貨建てではありません。

 日本政府がこれだけ借金してもOKなら、アメリカもOKなのではないかというのがMMTでしょうから、ここでは、日本とアメリカについて考えます。

 日本が、現状ではインフレにならない理由は このシリーズで分析して来ましたが、今後さらに国債発行が増えるとどうなるかと考えますと、国債発行での景気刺激もバラマキも効果なく、日本経済が停滞を続け、国際的にみて、価値のない国になり下がるという場合が考えられます。

 その時は、国際競争力も失われ、国際収支も赤字になって、満期になった国債は額面で償還されますが、「何かあれば円高」は、「何かあれば円安」になって、輸入物価が上がり、多分それが賃金も含むコストプッシュ・インフレに転嫁され、日本経済はじり貧という事になっているのでしょう。

 経済政策の拙さで、財政・金融政策が実体経済の成長をもたらさず、マネーゲームに使われて、株価は暴騰、しかし、どこかの時点で暴落、あれはばバブルだったという事になるのでしょう。
 今、その兆しがないわけではありませんが・・・。 
 
 アメリカの場合は、覇権国の負担から、既にシェールオイルが出ても足りないほどの赤字国です。世界からカネを集めないとやっていけません。戦略は2つです。
 1つは、金融工学という分野を作り出し、不良債権をトリプルAに粉飾して、世界中に売り、結果はリーマンショック。
 サブプライム・バブルの「つけ」は、世界中に押し付けられて負担することになりました。

 もう1つは、ドルの切り下げですが「強いドル」願望のために、ドルを切下げるとは言わず、対米黒字国に通貨切上げを迫るという方法です。
 最初の犠牲者はプラザ合意で「円」、次に狙ったのは「人民元」ですが、これは中国に読まれて思うようにいかず、後は関税合戦で返り血を浴びることになります。

 長い目で見れば、ドルは対円では360円から110円、1/3以下に減価しています、それでも、ドルは基軸通貨ですから、アメリカの国債は世界中の国で資産と認識されているという利点があります。ドル債保有でドル安で損しても、代わりに買うものがないのです。

 だいたい国際取引は、基軸通貨ドルで決済ですから、基軸通貨を自由に発行できるアメリカは、MMT理論から言えば、決定的に有利だという事です。
 そういう国で生まれたMMTという理論を鵜呑みにすると、基軸通貨国以外の国はとんだことになりかねません。 
 
 結局のところ、国債をいくら発行しても、金融をいくら緩めてもOKというのは、

「国債発行、金融緩和が、実体経済をそれによって順調に成長させれば問題ない」  
「国債発行、金融緩和が実体経済の成長に生かされないと、経済不振の中で、増税予想なども呼び、国民生活は改善しない。国民の意識によって、そうした状態は、インフレやバブルそしてその崩壊をもたらし、結局は自国通貨の価値の減価で国民生活レベルの低下が実現される。自国通貨建てでない国債発行の場合はデフォルトの形を取る。その結果最後には『経済にタダの昼飯はない』ことが明らかになる」
 
という事なのではないでしょうか。