tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

金融、財政大盤振舞いでも「インフレにならない」のか?-5

2020年06月05日 13時10分46秒 | 文化社会
借金が増えても構わなければ・・・
 日本政府の発行している国債の残高は約1200兆円で、GDPの2年分強、GDP比の国債残高は世界一と言われます。
 そしてその約半分を日本銀行が持っているのです。

 二番目に大きいのは、保険年金基金が2割ぐらい。次は銀行で1割強、2011年ごろには半分近く持っていましたが、ゼロ金利なので日銀に売ってしまったようです。
 外国が約1割持っていて、家計の保有は微々たるもののようです。

 この国際的にみても大きすぎる政府借金はIMFにも指摘はされるのですが、IMFもだからどうしろとは言っていないようです。
 借金は大きいけれど、日本経済は、成長率は低いもの、円レートも安定、物価も安定、国際収支は黒字で、他の多くの国と比べても健全ですから、特に言いようがないという事でしょうか。

 政府が借金まみれで、今後も借金の負担は増えそうでも、日本経済への信用が高いのは、日本が万年黒字国だという点が大きいのでしょう。
 つまり、誰かに借金を返せ、と言われない限り、今のような状態を続けられるという可能性は大きいのです。
 
 結局、1900兆円の個人貯蓄と1200兆円の企業の貯蓄が、縁の下で国債を支えていて、国民はみんな「国債は安全な財産だ」と思っているのです。
 海外が持っている1割は円安になれば売られる可能性はあるでしょう。しかし、円安になれば、日本の競争力は強くなって、輸出は伸び、インバウンドの観光客は増えるのです。
 現在の日本は基本的に円安歓迎なのです。

 これが現実であることは、2013年以降の日銀の政策変更で円安になって日本経済が息を吹き返したことを考えればご理解頂けるでしょう。
 
 どうも、日本が赤字になって破産しない限り、政府が赤字でも国債は信用があり、国債の価値が下がったり、ハイパーインフレにはなりそうにありません。
 紙幣というのは日銀発行の「借用証」だという事です。国債も国の借用証です。「借用証」に書いてある額面だけの価値があると信用されていれば、「借用証は財産」なのです。

 ということで、日本経済が外国から見ても信用できるものであれば、国債は国際的にも価値を維持し、国民からも財産として安定的に扱われることになるでしょう。
 勿論国民はいつでも現金にすることが出来ますから、安心して持っているわけです。

 こういう状況の下では、国債の信用が失われてそれがインフレにつながるといったことは想定されません。
それなのにインフレが起きるとすれば、輸入インフレやコストプッシュ・インフレなど従来から観察されている原因によるものでしょう。
 そしてそういうインフレ要因については、2度の石油危機の経験から日本人は対応策を十分に学んでいます。
 
 こう考えていきますと、新型コロナ対応で国債を増発しても、それが「国債紙屑」「ハイパーインフレ」につながって日本経済破滅といったことにはつながりそうにありません。

 日本経済の現実問題は、分析してみるとこんなところではないでしょうか。
 あと、問題があるとすれば、「国債残高は無限に増えていってもいいのか」という問題、つまり「MMTは正しいのか」という事になるのでしょう。
 この問題も序に考えてみたいと思います。