tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

今年と来年: 混迷の安倍経済政策

2016年12月30日 10時34分41秒 | 経済
今年と来年: 混迷の安倍経済政策
 4年前、安倍政権の登場は、日銀の異次元金融緩和による円安実現とともに華々しいものでした。
 円レートは1ドル80円から100円になり、さらにその1年半後には120円になり、日本経済は円安転換と共に、急速な競争力強化、大幅な為替差益で、企業は短期間に高収益に転換、安くなった日本旅行に中国はじめ外国人も殺到、訪日観光客は2倍に増え、爆買い現象なども起こって、「為替レートの変化(円安)とはこんな以大きな影響を持つものか」と実感させてくれました。

 考えてみれば、その逆だった「プラザ合意による円高」がどれだけ日本経済のマイナ明日になったかに思いを致した人も多かったのではないかと思います。

 良い製品やサービスを確り作っている日本でも、あるいは良い製品やサービスを確り作っている日本だからこそ、こうした為替レートの変動に敏感に反応するのでしょう。
 という事で安倍政権の経済政策は、スタートにおいては素晴らしかったのです。しかし、その後の第2、第3の矢は期待に反しました。

 財政出動は、累積する国債残高が足かせになりますし、構造改悪は必ず光と影の両面を持ちます。
 この辺から安倍経済政策はパッチワーク、小手先のつぎはぎ政策に変化し、消費増税の引き延ばしや、賃上げの奨励、法人減税によるその補填、同時に2020年プライマリーバランスの回復の公言(不可能明白)など、迷走状態になり、さらには、さらなる円安を狙った(?)日銀のマイナス金利政策も裏目に出て、円高を呼び込んだりとなりました。

  振り返ってみれば、安倍政権の経済政策の失敗は、第1の矢の大成功による、日本経済の改善を、国民に広く均霑することを忘れ、日本人の最も嫌う「 格差社会の深刻化」に繋げてしまったことでしょう。

 大きな背景には日本社会の高齢化による、年金、医療、介護といった社会保障費の否応なしの拡大があります。高齢化で国民は一様に将来不安を感じています。1ドル120円になって、80円時代とは様変わりになった日本経済の改善を、まずこの不安感の緩和に使うといった、経済戦略が政権には必要だったのでしょう。

 残念ながら、格差社会化は深刻の度を加え、その経済的帰結は「 消費性向の低下」消費不振が日本経済の成長に深刻なブレーキという今日の状態です。

 安倍政権は、外交の得点でこれを緩和しようとしているように見えますが、国民の多くは外交より、我が家計の将来不安でしょう。

 偶々、この所、トランプ効果で円安が進みました。日本経済も一息、安倍経済政策も一息かもしれませんが、新年になってどうなるか、安倍さんにも、麻生さんにも、黒田さんにも解らないでしょう。

 こうして今年は終わり、コスト高の東京五輪も1年近づき、先延ばしした消費増税の期限も1年近づいて、国民の将来不安は深刻化でしょうか。
 それでも、国民は頑張り、日本経済は外から見れば、世界で最も健全な国です。
 今、喫緊に必要なのは何か。それを考えて、来年こそは、日本の格差社会化に急ブレーキを掛ける年になって欲しいと思うところです。