tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

支払能力シリーズ8: 適正労働分配率:単に労使間の分配か?

2016年12月07日 16時54分55秒 | 経営
支払能力シリーズ8: 適正労働分配率:単に労使間の分配か?
 適正労働分配率というテーマを、歴史的な面も含め、「労使間の分配」の在り方として論じてきました。

 しかし、この問題は、付加価値という成果の単なる「労使の分配闘争」、「分捕り合戦」といったレベルで論じていいものでしょうか。すでにお気づきの方も多いと思いますが、実はこれこそ、経済活動、経済学、経営学の根幹に関わる最も重要な問題なのです。

  マルクスからピケティまで、経済社会における最重要な問題は、富の分配の問題でしょう。富の配分の在り方が社会の構成員の間で納得出来る範囲のものであれば良いのですが、それが限度を超えて偏ったり歪んだりしてくると社会は不安定になります。

 経済社会が安定して発展していくためには、富の分配は極めて重要な要素で、その分配の最初の段階は、すでに述べましたように、付加価値を生産している所、つまり企業という場で労使の分配という形で行われるのです。

 高すぎる労働分配率も、低過ぎる労働分配率も企業の安定した発展を齎しません。「真理は中間にあり」と書きましたが、さて、中間のどこにあるかを考えることを「始めなければならない」のでしょう。

 その伏線として提起した問題が、前回の「実績対応か目標対応か」という問題です。ここでは、問題点を具体的にするために、企業という場を前提にして話を進めたいと思いますが、一国経済といった問題の場合も、当然基本は同じで、類推可能と考えています。

 ここで最初に考えて頂きたいのは、「現在の分配は将来の成長を規定する」という命題です。もう少し単純にすれば「分配と成長の関係」ということになりますが、「今日の分配の在り方が、将来の(企業の)成長を規定する(重要な要素である)」という「現実」です。

 このブログでは、企業の定義として「企業とは、人間が資本を使って付加価値を生産する場所」と書いてきています。
 ご承知のように、生産の三要素は、土地、労働、資本です。今日の認識では土地は資本のうちで、生産要素は労働と資本です。そして、労働と資本は対等ではありません。主人公は人間(労働)です。

 人間が資本を使って付加価値を創るのです。ですから付加価値は、生産の「要素」である「労働」と「資本」に帰属します。この2つがの字通り「要素費用」で、「人件費」と「資本費」です。そしてその分配は労使交渉で決まります。

 ここまでは、企業という場が、先ず付加価値の分配をする場で、それは労使交渉という形で行われることの説明ですが、最も基本的な命題
  「今日の分配が将来の成長を規定する」
を説明するためには、「人間が資本を使って」付加価値を創るという事が関係してきます。この点を次回のテーマにしたいと思います。