tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本の賃金制度、日本的経営、日本の伝統文化

2016年05月15日 10時29分01秒 | 労働
日本の賃金制度、日本的経営、日本の伝統文化
 前回取り上げました定年再雇用の際の賃金制度の問題をもう少し広い見地から補足したいと思います。

 欧米の人事賃金制度は、職務中心で、まず職務があり、その職務ができる人間を採ります。職務が変わらなければ賃金は変わりません。職務給です。ここでは同一労働・同一賃金が理念でしょう。

 日本の場合は、企業は人間中心ですから、まず「人間」を採用します。職務はその人間が企業の中で成長していく過程と結果で決まります。定期異動で種々の仕事を経験し、適材適所に配置していくのが理念です。

 欧米流は「即戦力」、日本流は「企業が人を育てる」のです。背後にあるのは、欧米流は 短期的視点の経営、四半期別業績重視で、日本流は長期的視点の経営、企業の長期安定成長重視です。

 ところが、最近のアメリカ型(MBA型)経営の影響の中で、日本企業も、次第に近視眼的になり、人材採用は即戦力、だから教育訓練は不要、今期の業績さえ上がれば、といった考えも垣間見えます。
 人間中心で「人間の成長こそが企業の成長を可能にする」などといった迂遠な経営目標は理解しない経営者も増えているようです。

 そうした見方に立てば「同一労働・同一賃金」が妥当と考えるのでしょう。現政権も、おそらく深く考えずに、形式上の「同一労働・同一賃金」に熱心なようです。
 しかし、これは日本の本来の 伝統に立つ文化「社会も企業も人間中心」の形から離れる方向で、日本企業も欧米並みの短期寿命化、経済・社会の不安定化をもたらすものです。

  P.ドラッカーの経営哲学のベースに、日本に如何に長寿命の企業が多いかに驚嘆した経験があることは知られています。

 表題の日本的「賃金制度、経営、伝統文化」は全部繋がって成り立っているのです。日本の賃金制度を「職務給」に変えるということは、日本の企業理念も、社会文化の在り方も欧米流にならないと成り立たないことを理解すべきでしょう。