tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

伊勢志摩サミット、財政出動か為替問題か?

2016年05月06日 12時41分33秒 | 国際経済
伊勢志摩サミット、財政出動か為替問題か?
 安倍さんは伊勢志摩サミットを控えて、日本流根回しでしょうか、各国を回っています。議長国の首相がそこまでやるというのは、大変丁寧で結構なことだと思いますが、何とかいい成果に繋がって欲しいものだと思っています。

 報道によれば、各国首脳に財政出動について打診しているようですが、安倍さんはスティーグリッツ氏などからレクチャーを受けたとしても、あまり賛成の国はないでしょう。
 財政出動しても、そのあとが不安でしょうし、今の消費不振は、格差社会化のせいが大きいですから、効果より悪影響が懸念されると解っているのでしょう。
 もちろん日本自身も事情は同じです。

 すでにアメリカなどが打ち出していますように、何か、為替問題のほうが、本当は重要な課題だと、認識されてしまっているような感じもします。
 率直に言えば、今の世界経済がこんなにおかしくなった原因には変動相場制が大きな役割を果たしているのですから、今回の議長国であり、為替政策に翻弄されてきた日本としては、こちらの問題を取り上げるべきなのでしょう。

 もともと貨幣価値というのは経済活動における「メートル原器」のようなものですから、メートル原器が伸び縮みしたのではモノの正確な設計図が書けないのと同じように、通貨価値が変動したら、正確な経済計画や経営計画の策定などは不可能です。

 そんなことは人間は疾うに解っていたので、出来るだけ価値が変わらない「金」を通貨にしたのです。
 しかし、通貨を管理する基軸通貨国が、きちんとした経済運営をしないものですから、限度を終えて通貨量が増え、金との兌換が出来なくなり、ずるずると変動相場制になってしまうのです。これは「通貨の汚染」、マネーポリューションです。

 かつては「悪貨は良貨を駆逐する」などと言われました。第一次大戦後には「為替ダンピング」問題が起こり、そうした問題が起こるたびに、人間は通貨の価値をきちんとしようと反省してきています。

 第二次大戦後で言えば、そうした反省に立って、ブレトンウッズ体制を作ったりするのですが、人間は本来「だらしがない」のでしょうか、それとも楽して儲けたいと考えるのでしょうか、何度でも同じ過ちを繰り返すのです。

 今回の伊勢志摩サミットでは、「プラザ合意」為替レート変更(過度な円高)の恐ろしさを実体験し、今また円レートの動きに一喜一憂している日本が議長国になるですから、少し人類社会の将来について本当に役に立つようなことを話し合ってもらいたいものです。

 世界人類にとって、もっと重要なのは、覇権争いや戦争、紛争の問題でしょう。こうした問題からは人類は、何とか早く卒業してほしいと思う所です。

 一方、サミットの主要議題が経済問題であるならば、ニクソンショック以降、ずるずると嵌まり込んだままになっている変動相場制を放置するのか、それとも人類がもともと希望する「安定した通貨価値」の問題について、何か新しい知恵はないのか、本気で取り上げてもらいたいものです。