tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

春闘「もう少し期待していた」安倍総理

2016年03月24日 14時10分21秒 | 労働
春闘「もう少し期待していた」安倍総理
 先日の参院総務委員会で安倍総理は春闘について「空前の利益を上げているので、もう少し期待をしていたのも事実」と発言されたようです。
 一生懸命賃上げを奨励したのに、素直に聞いてくれなかったという経営者への不満をお持ちなのでしょう。

 賃上げは労使が決めるものだから、総理大臣が発言してもなかなか聞いてもらえないということが分かったとすればそれも貴重な経験になるのではないでしょうか。

 しかし同時に「3年連続でベースアップが行われたことも事実」と実績を強調され、 安倍政権の成果と印象付けようとの意識も見られました。
 
 我々の常識で言えば、3年連続でベースアップが行われたのは、黒田日銀による異次元金融緩和で、円が$1=¥80から120円になり、漸く日本経済がスクラッチで国際経済舞台で活動できるようになったからでしょう。

 円レートの歴史を顧みれば、1985年にG5(プラザ合意)で自民党政権の意向で竹下蔵相が円高を容認したため、その後2年間で$1=¥240円が120円になるという大失敗がありました。
 お蔭で日本経済は30年近い デフレ不況に呻吟 、漸く2013年から正常な経済活動ができる円レート($1=¥80→¥100→¥120)に回復したというプロセスの中で、日本の賃金決定(春闘)が翻弄されてきたのです。

 おそらく労使はともに、この所の国際情勢の中で、改めて円高に進みかねないような状況に大きな懸念を持っているというのが産業界(労使)の本音ではないでしょうか。
 オイルショックの経験以来、日本の春闘は、労使の良識により、かなり正確にその時期の経済情勢を反映したものになっています。

 今年、安倍首相が奨励しても賃上げが少なかったことは、逆に過去2年も、安倍首相が何も言わなくてもベースアップはきちんと行われたと考えるのが正常な判断でしょう。

 今年連合や労働組合の主要単産・単組が自主的に賃上げ 要求を引き下げたことの意義はすでに書かせて頂きましたが、日本の労使関係は世界でも類例のない賢明で合理性のある歴史を築いてきています。

 すでに報道されていますように、下請け企業のベアが親企業を上回るといった例もあるほどに、日本の労使関係は「格差社会化の阻止・是正」への具体的な行動を取っています。
 これこそが日本経済社会の正常化への道であり、消費不振経済脱出への王道でしょう。

 政権担当者が、「もっと賃上げを期待していたが残念だ、しかし3年連続のベアがあったからまあいいか」で終わっていたのでは、「国民や労使の方が残念」です。

 労使がそこまで日本経済の将来を考えて、経済学で言う「トリクルダウン」実現への努力をしているのです。
 政権はその現実をいち早く理解し評価して、呼応して格差社会是正への協調した政策を推進し、それによって、「一億総安心」を目指すべきでしょう。それがなければ、「一億層活躍」も画餅に帰すでしょう。

 一言余計なことを付け加えれば、こんなことになるのも、かつてのような政労使の本音の話し合いがないことの結果でしょう。日本は コンセンサス社会なのです。