tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

「大幅経常黒字→円高」の危険認識を

2016年03月14日 09時45分54秒 | 経済
「大幅経常黒字→円高」の危険認識を 
 前回、日本はしっかりした蓄積国家になって、海外からの配当も多く、経済基盤は強くなっていることに触れました。

 これも日本人が、真面目に働き、無駄遣いせず、必要な資本を蓄積して、海外でも立派な仕事をし、その国の経済発展に貢献して、そこからの配当も年間20兆円を超えるようになったことに示されています。

 日本では企業経営も家計も「堅実」を旨とし、国や家庭の基盤をより健全なものにすべきと考えています。
 しかし、今日の現実世界では、なかなかその通りには行きません。その大きな理由は、基軸通貨国アメリカ経済が万年赤字だということにあるようです。

 アメリカは数十年来ずっと赤字で、そのファイナンスのために外国からお金の調達をしなければなりません。
 そのために変動相場制が正常な経済の在り方と言われるデファクト・スタンダードを作り、マネー経済、金融工学を発達させ、次第に、赤字国も良くないが、黒字国があるから赤字国があるので、「黒字国は黒字を減らすべきだ」という考え方を広めました。

 マネー経済学の世界では、自然な動きとして、黒字国の通貨は高くなります。日本は、黙って温和しくしていれば、どんどん円高になります。日本の場合は円高になっても国民性のせいで、なかなか赤字国にはなりません。しかし経済は失われた20年に見るように酷いことになります。
 
ということで、頑張って出した黒字が、今の日本では、仇になってくるようです。
 これはすでに「 貯蓄は美徳か」で書きました。

 最近のTVでは、トランプさんが「アメリカの赤字は、日本が円安にして、日本製品がアメリカ市場を奪うからだ」と言って大拍手を受けていました。あまり目立つような黒字を出すことには十分気を付けたほうがいいのです。
 ではどうするかです

 今までは、民間が使わないお金を政府が借りて(国債発行)使ってきましたが、もう限界ということで、安倍政権は、「民間がもっとお金を使ってくれ」、そのために、「企業は賃上げをして」、「消費者がそれを使えばいい」と言っています。

 「民間がもっとお金を使うべきだ」という指摘はその通りだと思います。政府の借金が限界と言われる中で、経常黒字をあまり目立たない程度にすることは、民間がカネを使うしかありません。
 しかし、本当に賃上げでうまくいくでしょうか。平均消費性向 という指標を見落としていませんか、ということはこのブログでずっと書いてきています。

 望まれるのは、民間(企業・家計)が将来に展望を持ち、積極的に消費も投資も行うような社会の実現です。
 そのために何が必要なのでしょうか。 多分それは、企業や家計における「将来不安の払拭」でしょう。「保育園落ちた・・・」は典型的な課題提起です。

 そのために何が必要か、なぜかなかなか気付いてくれない現政権ですね。
 こうして、国際経済問題は、これまでも縷々書いてきましたように、内政問題、私たちの日常生活に回帰して来るのです。