tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

企業の課題、政府の課題

2016年03月06日 10時04分30秒 | 環境
企業の課題、政府の課題
 前回、「一億総中流」と言われた時代の回復が望まれると書きました。
 格差社会化が言われる今と、かつての良き時代、日本経済が安定成長時代に入り、1980年代前半迄(プラザ合意の円高・金融緩和によるバブル発生以前)の「一億総中流時代」で、企業の行動と、政府の政策で大きく変わっている点は何でしょうか。

 まず企業においてです。大きく変わっているのは「非正規従業員」の増加です。当時は雇用者のせいぜい15パーセント程度(現在は40パーセント超)でした。
 その大部分は、主婦、学生アルバイト、季節労働者などでした。高齢退職者もいましたが、年金は60歳からでした。

 当時、非正規労働者のほとんどは、家計の補助、小遣い確保などで、家計の責任者は企業では正社員というのが当たり前でした(これは戦後以来の伝統です)。

 正社員の賃金体系は職能資格給の発展期で、年功制の色合いを残し安定的、退職金制度も年金化を含めて健全でした。
 多くの企業は、雇用安定こそが企業の責任と明言し、教育訓練で従業員を育てて活用、人員削減をするような企業は社会的評価が下がり株価が下がるというのが常識でした。

 こうしたかつての安定雇用・人材育成を中心とした企業行動は、「失われた20年」の中で否応なしに「コスト削減のためには何でもあり」といった、なりふり構わぬものに変わっていったようです。

 $1=¥120になって、日本企業はまともな経営環境を取り戻しましたが、企業行動はいまだに「失われた20年」の歪みから脱出できていません。

 次に、政府の行政における大きな変化は何でしょうか。所得格差拡大に関わる最大のものを上げれば、「所得税の累進性の緩和」でしょう。
 日本政府が何の必要で累進性の大幅な緩和をやってのか解りませんが、何かレーガン改革を真似たのではないかという気がします。

 レーガン政権は1981年アメリカがスタグフレーションに呻吟する中で誕生、選挙中からの公約もあり法人税、所得税の減税で景気刺激をしました。
 特に個人所得税については2度にわたる減税を行い、最高税率は70%から50%に、さらに50%から28%に引き下げられました。
 レーガノミックスは成功と言われましたが、格差社会化を齎したことは事実でしょう。今、反省が言われ始めています。

 日本は、労使の賢明な対応でスタグフレーションには苦しまず、ジャパンアズナンバーワンの時代を迎えましたが、当時の政府は所得税率を段階的に引き下げ、住民税と合わせた最高税率は、1984年の88%から平成7年には50%になりました。(昨年から55%)
 
 日本はアメリカ並には下げていませんが「アメリカンドリームの国」と「和を重視し、格差を嫌う国」の違いでしょう。

 格差社会化からの脱出は、こうした企業や税制の在り方の早急な見直しが必要なのでしょう。その先に、国民の生活と意識の安定、一億層活躍社会の実現があるのではないかと思われます。