tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

賃上げで消費は増えるか―経済はそれほど簡単ではない

2015年10月31日 12時18分11秒 | 経済
賃上げで消費は増えるか―経済はそれほど簡単ではない
 政府はこのところ毎年春闘の時期になると「賃上げをしましょう」と言っています。おかげで「官製春闘」などという言葉が生まれました。
 賃上げは労使が交渉でやるものです。最低賃金も「公益、労働、使用者」の代表が集まって決めるもので、政府は入っていません。

 それなのに日本の政府は、毎年賃上げを言います。一つには、労働問題についての無知、もう一つは、早く消費を増やして経済政策を成功させたいという焦りでしょう。

 基本的に国民所得(GCP-原価償却=日本経済の純付加価値)というのは、殆どが「賃金と利益」でできています(雇用者報酬、法人余剰、財産所得、海外からの純所得)。
 その年の国民所得は、政府経済見通しが毎年発表だれますように、大体解っています。その中で、賃金を増やせば、その分利益が減ります。

 通常、無理な賃上げは減益につながり景気を悪化させます。利益を減らさないためには企業が値上げをしなければなりません。これは物価上昇、インフレになります。海外との競争で物価があげられないときはスタグフレーションになります。

 政府は経済成長が2パーセント、賃金が4パーセント上がって、インフレが2パーセント、といったことを考えているのでしょう。賃上げが2パーセントでインフレがないほうが、国民生活には同じ効果で、経済としては健全です。
 多少インフレの方が経済政策がやりやすいといっていますが、借金をしている人はインフレが好きです(借金が実質目減りしますから)。

 本当の問題はインフレにすることではなくて、経済成長を高めることです。成長を高めれば、賃金も利益もともに増やすことができます(労使win=winの関係)。

 アメリカやギリシャのような国は、国民所得以上に金を使っていますから、もっと消費をすると、経常赤字が増え、外国から借金しなければなりません。
 日本は多分今年も10兆円近い経常黒字でしょうから、国民が10兆円余計使っても借金の必要はありません。(問題はどうやって使ってもらうかで、次回以降の課題です)

 それが実現すれば、その分、GDPが増え、国民所得が増えて(=経済成長)来年の賃上げと企業増益の原資が生まれてきます。(多分プラス2%の成長)
 消費を増やし、経済成長率を上げ、日本経済を成長軌道に乗せることが、いま日本に要請されることでしょう。
 財政赤字にも、年金財政にも、経済成長の恩恵は目に見えるものになるでしょう。