tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

TPP大筋合意の今後

2015年10月06日 10時06分17秒 | 国際経済
TPP大筋合意の今後
 大変な難産だったようですが、各国それぞれの政治的事情もあって、昨日TPP交渉は大筋合意に達したようです。まずは2日の予定を6日に伸ばして、徹夜も辞せずとまとめる努力された閣僚会議のメンバー、それを支えた方々の労をねぎらいたいと思います。

 もともと環太平洋自由経済圏といったスローガンは掲げても、発展段階の多様な国々を地域だけでまとめていくとなると、各国の事情は違いすぎ、共通のルールなどは敷くよしもないでしょう。

 自由化をスローガンに共通のルールを敷こうとすれば、それによって利益を得るのは最も経済構造の進んだ国、ということになるのが経済システムの常だからです。
 その意味では、最先進国を以て任じ、基軸通貨国、覇権国でありながら、万年赤字国であるアメリが主唱したというのは、自然だったのでしょう。

 案の定、利益代表の意見の強いアメリカ議会ですから、折角大筋合意しても、少しでもアメリカに不利なら議会が承認しないのではないかといった見方もあるようです。

 確かに、今回は、日本もそうでしたが、アメリカ以外の国が、アメリカに対して、従来にない強硬さを見せたのではないでしょうか。背後には、このところアメリカ流の金融政策が、為替レート問題やサブプライム・リーマンショック問題などで世界中に迷惑をかけ、アメリカの権威が翳って来ているということもあるように感じられます。

 一方何とか纏まった背景には、アジア諸国にとって中国の拡大志向とその政経両面の先行きへの不安が感じられることへの対応といった面もあるのかもしれません。

 大筋合意ですから、これから具体的な各論に入っていくと、どんなことになるのか解りませんが、安倍総理は、大筋合意を歓迎しつつも、農業分野の国内問題には、従来の自然環境保護、景観保護、といった自説を繰り返していました。
 本当の問題は、アメリカ自身の対応も含めて、これからの具体的展開の仕方でしょう。

 前述のように、経済という問題は理論的には、広域化、自由化が良いといった原理原則があります。しかし、現実に経済発展段階が違う国々が協力して、最適な効果を上げようということになると、単に自由化すればいいといった方法論は機能しないでしょう。

 TPPもこれからの現実的展開の中では、より柔軟な実態に即した方法論が必要なのでしょう。今回の長い交渉の中からそうした現実的なアプローチの雰囲気が生み出されてくるようなことになれば、それこそが今回のTPP交渉の最大の成果になるような気がします。