tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

総資本利益率vs.自己資本利益率

2015年04月23日 10時44分34秒 | 経営
総資本利益率vs.自己資本利益率
 戦後の高度成長期、日本の企業は自己資本が十分でなく借金経営でした。法人企業統計年報の全産業・規模計の自己資本比率は戦後から一貫して下がり続けでした。一体どこまで下がるのだろうと思っていました。

 高度成長時代の終焉は突如来ました。1973年の第一次オイルショックで日本経済はゼロ成長に転落、1975年の小康状態を挟んで、1978~9年の第二次オイルショックを乗り切るまで日本経済は苦難の連続でした。

 この不況を克服して日本は「ジャパンアズナンバーワン」といわれたのですが、この間企業は、借金経営(自己資本比率の低い経営)の辛さを十分に味わったようで、1976年の13.7パーセントを底に、法人企業統計年報の自己資本比率は上昇に転じました。

 当時、外国の企業やアナリスト、学者などから「あんな低い自己資本比率で経営できるのは異常」などと言われましたが、その背景には、地価上昇(地価神話)とメインバンク制度があったわけです。

 しかし、その後の自己資本比率の上昇もデフレの影響で遅々でした。日本企業の本格的な自己資本比率上昇に向かったのは、バブル崩壊から10年、1999年からで、それまでは19パーセント台でした。

 その後「いざなぎ越え」の時期などを通じて、日本企業は自己資本の充実に努め1913年度の法人企業統計では(最新、全産業・全規模)では37.4パーセント、製造業では43.9パーセントまで上昇、著名企業で日米逆転が見られたことはかつて報告した通りです。

 ところで標記の「総資本利益率(ROA)vs.自己資本利益率(ROE)」ですが、上の流れで言えば、日本企業は総資本利益率重視、アメリカ企業は自己資本利益率重視という全く反対の方向に動いてきたような気がします。

 日本一自己資本比率の高い企業ファナックが、「モノ言う株主」から「90パーセントなどという高い自己資本比率は自己資本を活用していない証拠」といわれ、積極経営の動きを示したことで株価が上昇、などという最近の事象は、アメリカ型経営の反映でしょう。

 この伝で言えば、自己資本比率13パーセント時代の日本企業は小さな自己資本で借金を最大限に活用、自己資本利益率(ROE)を何とか高めようと必死に効率をあげる積極経営ということになりますが、こんな危険なことは前述のように、地価上昇とメインバンク制度があってこそで、通常なら数年前のGMのようになる可能性も大きいのです。

 昔から、会計学では自己資本比率は「50パーセントが基準」などといわれ、経営は「半分は自己資本で」というのが伝統的な保守主義の会計の原則でした。

 世の中往々にして振れすぎる事がありますが、自己資本中心の堅実経営か(ROA主義)、借金を加えて仕事を拡大し、リスクを取って儲けを大きくするか(ROE主義)、論議はあるようですが、長期に繁栄している企業の社是社訓などを見ると、日本は本来ROA主義のような気がしています。