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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本経済の活性化は発想の転換から

2023年11月01日 15時35分19秒 | 経済
昨日、日銀は長期金利の上限が1%を多少超えてもいいという信号を出しました。それで円高になるか読もうとしたのでしょう。しかし円安になっています。国際投機資本は皮肉屋のようです。少し時間を見ましょう。

日銀も動き始めるのでしょうか、国際投機資本相手では大変ですが、円安を止める気になったことは評価できるでしょう。

円レートには国際的にも、日本にとても居心地のいい水準があります。円安になり過ぎると外国は円高を求めて来ますし、円高になり過ぎると日本人は居心地が悪くなります。

日本は資源が人間だけで、多くの資源を輸入し、加工して輸出して成り立つ加工貿易の国(情報・知識についても)ですから、賃金が高いと製品が高くなって成り立たない国です。

ですから、自動車でもアニメでもなるべく賃金が安い方がいいという認識が定着していました。つまり国内で賃金インフレを起こさない事が大事だったのです。

しかし、あんまり頑張ると、国際競争力が強すぎ、海外から文句が出て、プラザ合意の様に円高要求が出て、30年も円高で苦労することになったという経験もあります。

円高は良くないと身に染みて感じたのですが、2013~14年、円レートが80円→120円に5割も円安になったのに、インフレにすると国際競争力がなくなるという伝統的な認識が強過ぎ、賃金を上げませんでした。

国際競争力が改善した分はほとんど企業側に溜り、国内消費は低迷が続きました。消費不況で、国内需要は不足し、企業は海外生産を増やし、国内総生産(GDP)は増えず「円安なのに何で不況なの?」とアベノミクスは不評でした。これは今も同じです。

円安で余裕の出来た日本経済の半分ぐらい賃金に回していたら、結果は全く違ったでしょう。国内需要は大幅改善、消費は順調に伸びて、日本経済は均衡成長の昔を取り戻したでしょう。

消費不振、投資主導の片肺飛行では力不足です、低成長が続き、結局国内投資も不振になって、低成長、低賃上げ、低インフレですが、2021年からは、海外は皆インフレ経済ですから、輸入インフレの圧力に企業が耐えられず、音上げで値上げ、インフレだけ進み、実質賃金マイナスが問題になるようになりました。

追い打ちはアメリカの金利引き上げによる円安で、円レートは150円、このままでは物価だけ上がります。
財政で国民援助のバラマキをしますが、赤字財政が国民に分かっていますので、政府不信、将来増税予測で、消費は改めて不振になりそうです。

頼みは来春闘の大幅賃上げですが、連合は余り動きません。企業側は、要求が無くても大幅賃上げするごく一部の企業はありますが、全体の結果は多分昨年の如しでしょう。

唯一考えられるのは、「例えばですが」連合と現実を理解した政界のリーダーが組んで、10%(仮置き)の大幅賃上げの国民運動を起こし、日本経済の活性化と、本当に国民のための政権を興すという一石二鳥を狙うというのはどうでしょう。

その際の大幅賃上げの起点は、非正規労働者の正規化計画でしょう。これは、為替レートの正常化を達成したアベノミクスの10年前にやるべきことの忘れ物、積み残しです。そしてそれを含めた平均賃金の大幅引き上げです。

何処まで上げていいのかですが、これは、日銀の意見も必要で、金融政策当局として、どの程度の円レートを目指すかが目処になりましょう。

一国の賃金水準の上限は、国際競争力の維持が可能なラインまでという事で、これが賃金決定の「変動相場制下での」判断基準になるのでしょう。

それ以降の賃上げは、日本経済の成長力の回復次第と考えればいいでしょう。
こんな事を考える日本の新しいリーダーが出て 来ないものでしょうか。出て来てほしいですね。

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会(まとめ)

2023年10月30日 16時59分15秒 | 経済
前2回で指摘して来た事は、欧米は賃上げ圧力の強い社会、日本は賃上げの弱い社会ですが、欧米は強すぎ、日本は弱すぎるといった方がいいようです。

このブログの認識では、今の日本経済の最大の問題点はこの「弱過ぎ」にあると言っていいようです。そこから出発して、2013年以降の日本経済の動向の「まとめ」として問題点を順に列挙してみます。

1、 賃上げ圧力が弱いと、国民の消費意欲が鈍ります。一方、付加価値(国民所得)の配分は人件費より企業への資本が過剰に配分されます。
2、 企業サイドが自主的に賃金(人件費)配分をするケースもありますが、全体的には低い賃上げ要求をさらに削った賃上げに抑え、長期不況で増やした低賃金の非正規はそのまま使う事が出来ます。

3、 企業の資本蓄積が進み投資意欲を刺激します。しかし国内は需要が少ないので、海外直接投資が増え、第1次所得収支(利子配当)が増えます。(賃金部分は外国で支払済)
4、 GDPは、ある程度増えますが、企業の設備投資中の片肺飛行状態が続き、消費は伸びず、資本分配過剰でPBRの低い企業が増えます。

5、政府は、政権の人気取りもあり賃上げを奨励し、給付金や賃上げ減税なども考えますが、赤字財政ですから国民は将来展望の不安から貯蓄優先で消費は増えません。
6、政府は国民の貯蓄が増えるので日銀の異次元緩和を背景に国債を増発、財政で景気浮揚を考えますが、逆に国民の将来不安を煽り、平均消費性向は下がり続けます。

7、日銀は異次元金融緩和の効果が、賃上げ圧力の強い国と同じと勘違いし、勘違いに気づいてもこれ以上の緩和策は無いので、賃上げ圧力上昇を注視して待つだけです。

8、その間も海外は皆インフレですから、エネルギーと食料の輸入依存度が高い日本では、消費者物価がじりじり上がり始めます。これに円安が拍車をかけています。
8、家計は、財源のない子育て支援策など当てに出来ない事を見越し、コロナ明けの消費増加も一時的で、見込みの立たない将来設計に苦慮、節約と貯蓄に戻るようです。

9、頼みの来春闘ですが、連合は、昨年要求に「以上」を付けただけで、賃上げで日本を救うといった気迫はなく、支持する立憲も、「賃上げよりバラマキ」指向です。

10、纏めてみますと、これでは来春闘の賃上げはあっても、基本的に状況は変わらず、実質賃金上昇の可能性は、アメリカのインフレの鎮静、金利の低下といった「人様頼み」になって、それが巧く行ったとしても(可能性は小さいですが)せいぜい、2,010年代の賃金は上がらないが物価も上がらにから良かった程度で、後はそれにしても防衛費の急拡大はどうするの、など将来不安は絶えないのではないでしょうか。

大変悲観的な「まとめ」になってしまいましたが、「賃上げ圧力の弱い社会」は元々明るく開けた未来を持つようには、極めてなりにくいという事なのではないでしょうか。

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会 :2

2023年10月28日 10時52分35秒 | 経済
前回は、世界のほとんどの国・社会は賃上げ圧力の強い国・社会ですが、そうした中で今の日本は稀に見る賃上げ圧力の弱い社会だということを指摘しました。

この所の原油などの価格高騰の中で、アメリカやヨーロッパでは軒並み10%前後のインフレが起きFRBやECBが金利の引き上げでインフレ抑制に大童でしたが、その原因は資源インフレに触発されて賃金インフレが起きているからです。

ところが日本では、政府や経済団体まで「もう少し賃上げをしましょう」と言っているのに、連合は要求基準を1%上げただけです。全労連などが10%賃上げを言っても、それは世論にはなりません。

その結果、賃金水準の上昇より消費者物価の上昇が大きくなり17か月連続で実質賃金が下がるといった現象が起きています。

こうした賃上げについての極めて慎重な姿勢が定着した主要な原因に1973年の石油危機の際の経験があることは前回書きました.

この労組の慎重姿勢への転換は第二次石油危機以降、日本産業の国際競争力強化に大きく貢献し、エズラ・ボーゲルは『ジャパナズナンバーワン』を書き、日本経済の黄金時代を作りました。
この成功は日本の産業界日本の労使に大きな自信を持たせたことは言うまでもありません。

しかし世の中はそう甘くありませんでした。相変わらず賃上げ圧力が高くコスト高で国際競争力を落としスタグフレーションに苦しむ欧米主要国は、独り勝ち状態の日本を何とか抑えようと1985年G5で日本に為替レートの切り上げを要請したのです。これが「プラザ合意」です。

日本は鷹揚にそれを受け入れました。G5に出席していたのは当時の大蔵大臣と日銀総裁です。そして2年後、円レートは$1=240円から120円になりました。
これは、この2年間に賃金を2倍に上げ、物価も2倍に上がる賃金インフレと同じことで、日本経済は欧米のスタグフレーションを飛び越えて、賃金も物価も半分に下げなければならない「円高デフレ」になりました。
 
それから2008年のリーマンショックでさらに$1=75~80円という円高になったことも含めて、2013年の黒田さんの異次元金融緩和で$1=120円に戻るまで、賃上げなどはとても考えられない状態が続きました。

1974年に石油危機で「無理な賃金引き上げは駄目」と学習し、その後は賃金引下げが要請されるデフレで2012年まで「賃上げは望ましくない」という30年近い経験は、日本人に

「賃金は上がらないもの」「我々は親の代より貧しくなる」という固定観念を植え付けたようです。

働く人たちの間でも、「これからは賃金の上がらない時代」、「年金も目減りする時代」といった意識が一般的になり、労働組合も「賃上げ要求」は必要最小限にとどめる(定昇程度)ということになりました。

そして異次元金融緩和で、為替レートが正常化し、賃金要求が可能な環境になっても、連合は、無理な要求は良くない、定昇+2%(希望経済成長率)程度にすべきという認識に従った要求に自制することになったようです。 

日本社会が「賃上げ圧力の弱い社会」になった原因はざっとこんな所でしょう。

経済成長は元来、需要の増加が無ければ起きません。経済成長という言葉は産業革命があって初めて生まれるのです。技術革新で社会はより豊かで便利なものになるという事に人類が目覚めたのです。

そして技術革新のためには資本蓄積が必要と知り、資本主義という言葉も生まれたのでしょう。

全ては豊かで快適な社会を望む人間の欲求から発し、その実現のために必要なものは所得、そして社会システムとして、所得の増加は賃上げによって可能になるのです。
これが賃上げ圧力の弱い社会では、巧く働かないという事なのでしょう。

次回は、日本の現状を見つつ必要なことを整理してみたいと思います。

賃上げ圧力の強い社会、賃上げ圧力の弱い社会

2023年10月27日 16時56分00秒 | 経済
黒田さんが日銀総裁になったのは2013年です。
安倍さんに見込まれて、日本経済を救うために就任したのでしょう。それまではアジア開発銀行の総裁をしていたと思います。

当時日本は、アメリカがリーマンショックで世界が金融恐慌の陥ることを避けようと、バーナンキさんがとった「ゼロ金利政策」のせいで、2009年以来$1=75~80円という円高で経済破綻の縁にいました。

黒田さんは就任早々、アメリカ流の金融緩和を実行しました。所謂2013年と14年の黒田バズーカで「異次元金融緩和を打ち出しました。
この効果は覿面で円レートは120円と大幅な円安になって、日本は国際競争力を取り戻し、アベノミクスの第1の矢は大成功、日本経済復活の土台が出来たのです。

黒田さんの描いたシナリオは2つの政策の上に成り立っていたようです。
1つは徹底した金融緩和で円高を正常な為替レートの戻すこと、もう1つは、正常な為替レートを梃子に、デフレ経済を2%程度の軽いインフレ経済に転換する事だったのです。

そして第一の政策は見事クリアされたのです。
しかし、第2の政策「2%インフレ目標」は10年の任期を終えて退任するまでクリアできませんでした。

黒田さんは第2の政策も楽観していたのでしょう。「二年程度で2%インフレは到達と言っていました。
アジア開銀で、多くの国の経済を見て来ている黒田さんにして、何故読み間違いをしたのでしょうか。

これが今日の表題の「インフレ圧力のある社会、ない社会」になっているのです。そして、黒田さんに代わって登場した植田総裁も、就任当初、同じ読み違いをしたようで、結果は打つ手がなく、黒田路線の延長になって、時を待つことになってしまっているのです。

黒田さんも植田さんも、共通に見誤っている点は、日本も、世界の多くの国と同じように、「賃上げ圧力の強い国」という前提に立っているのです。そしてそれは経済学者の常識としても当然で、今の日本が、世界でも稀な「賃上げ圧力の弱い国」だという例外的な国なのです。

日本も1974年までは結構強い賃上げ圧力のある国でした。
当時の日本の労働組合の春闘における要求は、必ずしも「%」などは決めずに「前年プラス・アルファ」というのが一般的でした。「昨年より高い賃上げ」です。

これでは結果は「賃金コストプッシュ・インフレ」になるのは当然で、日本でも、1974年、第一次石油危機の翌年の春闘賃上げ率は33%に達し,その年の消費者物価上昇のピークは26%に達してています。当時、これは労働運動としては当たり前で、世界の主要国でも軒並みインフレに悩まされていました。
  
インフレ目標と言えば、賃上げを抑えてインフレを低くすることが目標というのが当たり前で、賃上げ抑制で、国際競争力を維持強化する事の経済健全化に必要というのが世界の経済の常識でした。

経済学としては、これを「所得政策」と名付けて賃金と生産性と物価(インフレ)の関係を正常化して国際競争力の確保を確実にするのがあるべき経済運営というわけです。 

日本は労使がこれを守り、労働組合も石油危機の経験に学んで、「余計な賃上げ圧力は日本経済のためにならない」という極めて健全な感覚(理論)を持つようになったのです。

その後、この賃上げ圧力の抑制が予期せざる事態に発展します。(以下次回で続けます)

政治と企業経営

2023年10月26日 21時19分56秒 | 経済
政治と企業経営
政治と企業経営と並べてみても、あまりピンと来ないかもしれません。しかし政治と企業経営とは基本的な共通点があります。

以前、日本経済が好調で、世界の多くの国が、日本の経済成長力を羨み、Look East! とかLook Japan! といったころ、日本では「日本株式会社」という言葉が流行っていました。

日本という国には沢山の会社がありますが、日本という国自体が、あたかも1つの会社の様に、成長、発展という目的に向かって進んでいるといったイメージを持たれることが多かったからでしょう。

会社でも「全社一丸」などという言葉がありますが、みんなが同じ目的に向かって助け合い、切磋琢磨して成果を上げるというイメージでしょう。

日本人はこうした共通な目的を持った「人間集団」になった時、力を発揮するようで、スポーツでも、団体戦に強い日本などと言われます。
そんな訳で、多くの国で、欧米の職務と個人重視の経営と一味違う人減中心の「日本的経営」が注目されたのです

今は日本はゼロ成長の冴えない国になってしまいましたが、長期不況の中で、多分日本的経営を忘れたからでしょう。でも、社長以下一丸になって頑張る会社もあって、そういう会社は今も業績が良いようです。

そこで政治の話になりますが、政治というのは「国を経営する」という事です。経営の基本は、持てる経営資源を最高度に活用する事であると言われ、経営学の大家であるJ.バーナムやP.ドラッカーもそういっています。

日本は資源のない国で、持てる資源と言えば「人間」という事でしょう。
ですから、日本国、日本株式会社の経営においては、人間を最大限活用することが一番大事という事になります。

そのためには日本株式会社の社長である総理大臣が、国民の心を掴み、日本の経済社会の成長発展という共通の目標に向かって頑張るようにリードしなければなりません。

ところが、今の現実は、岸田内閣の支持率は、僅か29%だそうで、これでは国民が打って一丸の実現はとても無理でしょう。

「うちの社長はダメだね」などと社員が言っている会社が業績だけ良いという事はないようです。
それなら、今の日本株式会社の経営は上手く行かなくて当たり前だね、と言って政府に不満を言っていればいいのかというとそれも駄目のようです。

理由は明らかで、政治家は皆、国民が選挙で選んだ結果だからです。現状は、より多くの人が間違った選択をした結果です。選ばなかった人(棄権した人)はもっと無責任なのです。つまり責任はすべて国民にあるのです。だから、逆もあり得るはずです。

「国民が 思慮深くなれば、思慮深いリーダーが選ばれる」とい言葉を信じて、次の選挙から思慮深くなるよう、お互いに努力しましょう。

「経済」3連呼、気持ちは解りますが

2023年10月24日 14時13分10秒 | 経済
「経済」3連呼、気持ちは解りますが
岸田総理の所信表明演説で経済重視は解りました。
国民もみんな期待しているのですが、現実はそう簡単ではないようで、「成長の分配の好循環」を掲げてからもう2年ですが、基本的に低成長、実質賃金低下、物価の高騰といった予想しない事ばかりの中で、日本経済は相変わらず低迷状態です。

所信表明演説で、総理は、GDPギャップが需要超過に転じた中で、供給力強化をめざし半導体や脱炭素、省力化に取り組むと言われていますが、どうも国民の思いとの「ずれ」が目立つようです。

国民の最大の関心は、賃金が多少上がったと言っても実質賃金は低下が続き、一体いつになったら日々の生活が改善するのかという事でしょう。

そんな意識で、景気が元気すぎて金融引き締めに苦労しているアメリカとGDPの構造を較べてみることにしました。

GDPは国民の消費需要、企業の設備投資、政府の支出そして純輸出(輸出-輸入)で構成されています。昨年来需要超過など言われたのは「コロナ明けと巣篭り疲れ」の反動で消費が堅調(平均消費性向上昇)だったことが大きいようです。

今春闘に賃上げを期待した家計も多かったと思いますが、あの程度では物価上昇に追いつかず、このところまた生活防衛で平均消費性向は下がりつつあります。
総理もご承知と思いますが、消費の伸びない経済は成長しません。

アメリカのGDPの中の個人消費の動きを見ますと一昨年からの物価上昇の中でも2022年から2032年の10年間、実質消費需要が年率平均1.9%伸びています。10年で続けは実質賃金は21%上がります。

アメリカ経済が元気なのは国民の消費需要が引っ張っているからという解説は多いですが、GDPの構成比の日米比較をしたのが下の図です。これは実質ベースの数字です。(基準年:日本2015年、アメリカ2012年)。

日米GDPの構造の比較

                         資料:各国統計

日本では民間消費の割合は50%ちょっとですが、アメリカは70%を超えています。
日本はその分企業の設備投資と政府支出が多くなっています。

つまり。企業と政府がカネを使って、家計は収入が増えないから使えないう構図です。

設備投資の多い割に、新興国に後れを取っているのは経済成長がないので金額が増えて行かないからでしょう。
政府は消費が伸びない分を補助金などで埋めようと赤字国債を出しますが、どうも給付金では(賃金が年々増えないと)国民は安心して消費を増やすことはないようです。

この図のような構図が続く限り、日本経済の成長は上手く行かないでしょう。理由は国民が楽しくないからです。
先行き給料が上がって生活が良くなるという希望があって国民の元気が出るのです。今の日本は「親の代より生活が良くならない」と国民が考えています。

個人消費が、実質値で増え、GDPの中の個人消費の割合が60%を超えて行くような政策が必要なのでしょうが、補助金と給付金では、そうなりそうにありません。

この10年程、政府は全く見当違いの政策を続けて来ているのかもしれませんね。

9月消費者物価、数字は沈静傾向を示すが

2023年10月21日 14時27分22秒 | 経済
昨日、総務省統計局から9月分の消費者物価指数が発表になりました。
マスコミでは、前年同月比の上昇率が2.8%と13カ月ぶりに3%を下回った事を見出しにしているようです。

これは政府の方針でしょうか、何時からか天候や節変動のある生鮮食品を除いた「生鮮食品を除く総合」の数字を使うようになりましたが、消費者物価全体の動きを示す「総合」は3.0%でした。(下図参照)

  消費者物価主要3指数の対前年同月上昇率の推移(%)

                資料:総務省統計局「消費者物価指数」

それにしても、青い線(総合)、赤い線(生鮮食品を除く総合)緑の線(生鮮食品とエネルギーを除く総合)の主要3指数が揃って、下げているという事は大変結構なことで、これで消費者物価の上昇も一段落かと思いたいのですが、まだ問題があるようです。
 
赤い線は最も下げ幅が大きく8月の3.1%から9月の2.8%へ0.3ポイント下がって順調(値上がりした生鮮食品が入っていない)ですが、青い線は3.2%から3.0%へ0.2ポイントの下げ、緑の線は生鮮食品抜きですが4.3%から4.2%へ0.1ポイントの下げです。

夫々の線の高さを見れば、緑の線はまだ4%以上の年率上昇率で、あまり下がっていません。この「生鮮とエネルギーを除く総合」は、電気、ガス、ガソリンといった費目を除いたものですから、政府の補助金で安くなっている分が入っていません。

2月のところを見て頂けば分かりますが政府の補助金によって1%ポイントほど青と赤の線が下がっているのが解ります。緑の線は下がっていません。これが本当の消費者物価の状況で、補助金はいつか終わって、その時、結局消費者物価上昇は統計数字より1%以上高かったことが解ることになります。

下の図は消費者物価の上記3指数の長期トレンドを見たもので、2月に補助金で下がったことはここでもよく解りますがその前後で、それぞれの線の上昇角度には、未だ大きな鈍化は見られません。

消費者物価主要3指数の動き

                  資料:上に同じ

今、値上がりの中心になっている食料やその他の生活必需品(トイレットペーパーなど)を含む、緑の線は10月からの4000品目の値上げの影響をどのくらい受けるか気になるところです。

日銀の植田総裁は、今は一時的沈静で、今後、賃金水準上昇の影響が出て再び高くなるだろう言っていますが、同時に心配されるのはこの所の異常な円安が、アメリカの都合で当分続くのではないかという懸念です。
改めてそれが、企業物価、消費者物価の上昇にどの程度の影響を持つか、これも予断を許さないところです。

来春闘の賃上げがかなり高くならないと、実質賃金のマイナスは来年度に入っても続く可能性が「無きにしも非ず」と心配されるところです。

政労使協力して合理的な経済対策を

2023年10月19日 15時14分58秒 | 経済
政労使協力して合理的な景気対策を
いよいよ臨時国会が始まりますが、岸田総理は経済対策の方向として税増収の国民への還元を所得減税も含めて考えているとの報道がありました。

自民党内にも、防衛費増額や子育て支援などの財源が不明なのに、所得減税などが出てきたらという懸念もあるようです。
減税より手当の方が効果的(集票に?)という意見や、一時的な減税は貯蓄を増やすだけなどの意見もあるようですがどうするのでしょうか。

一方、立憲民主党は、物価高に苦しむ家庭に「給付金」という方向のようですが、所得制限なしの一律給付などと言われると、やっぱりバラマキか、ともなりそうです。

減税と増税の同時実施といっても、中身が合理性のあるものならば、それは大いに結構でしょう。本来格差社会の是正を所得税制でやるのには、累進カーブの是正が当然です。増税と減税が同時に発生します。

ところで、この所の税収増の原因を考えますと大きな要因が2つあるように思えます。
1つは、円安による為替差益:輸出関連部門、インバウンド関連の好調
2つに、物価上昇による消費税の増収。

円安による輸入関連部門の損失は、国内価格への転嫁容認とエネルギー関連部問への補助金などで、石油元売りや電気ガス事業の株価が上ったりしていますが、この財源は国債でしょう。

本来円安は輸出部門の為替差益、輸入部門の為替差損が対照的に起きるのですから、価格機構で相殺すべきものなのでしょう。
輸出部門が企業努力なしに為替差益を得、輸入部門が補助金で差損を埋める政策の合理性は余り無い様です。

こうした政策の結果、法人税収が増え、国債発行が増えると結果的にインフレになるようです。割を食うのは「消費者」という事でしょう。

ならば、政府が税の増収分を国民に還元するという場合の相手は国民といっても「消費者という立場」に対して還元するのでないと合理的ではないでしょう。

消費者に対して還元するのであれば、消費税減税が最も相応しいのではないでしょうか。
連合が大幅賃上げを勝ち取ってくれればと思いますが、前回指摘しましたように、この分では、実質賃金マイナスの解消はなかなか難しいようですが、消費税を一時的に3~4%下げれば消費者物価は多分2%以上下がり、実質賃金の上昇率は何とかプラスになるでしょう。

勿論、この消費税減税は円安がなくなって、消費者物価が下がれば漸次元に戻し、実質賃金が適切なプラスを維持するように調整すればいいのです。

政府が、所得格差是正が必要と思えば、それは所得税の累進度を変えればいい事で、これは税増収とは関係なく、社会政策としての問題です。

減税より補助金、政府は「神の手」を持っているのか?

2023年10月13日 16時58分50秒 | 経済
臨時国会での政策論争がどんな展開になるのかわかりませんが、政府は多分補助金を中心に、国民の生活を何かと援助をしようという政策を並べるのではないでしょうか。

そうした予想の中で出てきている議論に、補助金が良い政策なのか、それとも減税の方が適切な政策なのんかという論争があります。

補助金も減税もそれだけ国民の使えるカネを多くして、物価高騰の折から、生計費の上昇に困っている国民の生活を援助しようという政策には変わりありありません。

それでは、どこが違うかという事です。
端的に言ってしまえば、補助金は政府がカネを出して困っている国民の生活を援助しようという事です。

減税の方は、政府が国民から徴収している税金を減らすことによって、国民が税金を払う分が減りその分は国民が自分の生活費に使えることになるという事です。

補助金は日本の経済活動に使うカネの中で、政府の使う部分を増やすという事で、減税は逆に政府の使う部分を減らすという事です。

特に政府が赤字でカネがない時は、国債発行で補助金の原資を調達しますから財政赤字も増えることになり、そのあと始末もまた大変です。

減税は、消費税でも所得税でも減税を決めるだけで、余計な手間はかかりません。所得税の場合は税金を払っていない人には効果はないわけで、消費税ならすべての人に効果があるというような議論にもなります。

政府は、減税より補助金の方が好きのようですが、これは補助金をもらう人の喜ぶ顔が見たいとか、選挙があれば与党の得票に繋がるのではといった考えもありそうです。

こうしたことは世俗的な見方ですが、もっと大事な議論をすれば、経済活動において最も基本的は原則である「価格機構」の働き、経済理論でいえば、アダム・スミスの「神の見えざる手」を生かして使わずに「オレが決めてオレがやる」という傲慢な発想という事ではないでしょうか。

例えば、消費税の減税をすれば、政府の収入は減りますが。その分のおカネは国民一人ひとりが自分の最も望ましいと思う使い方をするでしょう。それが全体として「見えざる神の手」として調和のある経済を齎すのです。

補助金というのは、その「神の手」の代わりに、限られた人間の頭脳の判断で、政治的配慮のもとにおカネを配るのですから実は合理的な経済活動を妨げている事が多いのです。

例えば、エネルギー関係の補助金は、省エネの工夫や努力を妨げています。電力ガスの補助金は、消費者物価の高騰を低く見せて(4%台→3%台)、日本の物価上昇はアメリカより低いと勘違いさせます。    

そのほか、まだまだ、いろいろ問題はありますが、補助金を出せば、赤字国債発行も、国民は大目に見てくれる可能性が高いとか、「減税の財源は赤字国債で、結局は国民負担です」とは言いにくいので、多少は自分たちも節約しなければならなくなるのではないかと恐れるのかもしれません。

そんなケチな考えの選良はいないと思いますが、やっぱり臨時国会では赤字国債論議でしょうか。

波乱含み、為替と物価の現状

2023年10月12日 16時16分39秒 | 経済
為替と物価についての動きが波乱含みの中で日銀は「注視」を続けていますが、その視線の先はFRBの動向でしょう。

インフレを退治し、更に再発の芽も摘もうというパウエル議長の意気込みが効果を持ったようで、FRBの中でもこれ以上の金利引き上げについては意見が分かれていようです。

今日はまた円レートは149円台ですが、149円10銭台で、150円に迫るといった状態ではないようです。

日本にとってはこの円安が輸入物価の上昇に繋がり、それが国内物価に転嫁されて物価上昇が収まらないというのが政府・日銀の最も苦慮するところでしょう。

そんな今日、日銀から輸入物価指数、企業物価指数などの主要物価統計が発表になりました

早速これまでのグラフを延長してみました。

     輸入物価、企業物価、消費者物価(東京都区部)3指数の推移

                    資料:日銀 総務省統計局

ご覧のように輸入物価は上昇に転じました。2021初頭からの動きを見て頂けばお解りの様に、輸入物価が上がり始めればそれは次第に企業物価に波及してきます。

しかし、今回の輸入物価上昇は、国際価格が上がったのではなく、円安で日本だけの値上がりです。契約通貨ベースでは上がっていません。
当然、アメリカの金利はどうなるという事になります。日本の円安→インフレはアメリカの金利次第です。

ですから日銀は、アメリカの金利動向を注視し、アメリカが金利を上げなくなり、円レートが130円、120円に戻れば日本の物価も収まると見て、それを待つわけです。日銀には主導権はありません。

日本も金利を上げれば円安は止まりますが、金利を上げれば、日本の景気がもっと悪くなると政府も日銀も考えていますからそれも出来ません。

ただ円安は日本の国際競争力を強めますから、輸出が増え、インバウンドも増えることでいい事もあると思っている面もあるのではないでしょうか。
先日も「しらたき」の輸出が何倍も増えてニコニコなどという話もありました。

外国から見て高い物価は下がりますが、安い物価が上がるのは、経済では当然のことですが、円安がいつまで続くかがアメリカ次第という所が一番困るところでしょう。

そんな中での物価の動きを1年前と比較してというのが下のグラフですが、最近の動きはまちまちで、未だ傾向的な判断は出来ないようです。ただ企業物価が消費者物価より低くなったというのは、国際価格の上昇による輸入物価の上昇が終わった事の結果でしょう。(図では消えていて済みません、右端の消えた企業物価の対前縁上昇率はは2.0です。数字2..8は消費者物価、)

輸入物価、企業物価、消費者物価(東京都区部)指数の対前年上昇率(%)

               資料:上に同じ

今現在の問題である「円安」といったマネーの世界の現象は短期と思ったものが長期になったり基軸通貨国の金融政策の影響で、政策担当者の意識次第という面もあり、迷惑しても当面静観という事になるのでしょうか。

出来れば日本は日本自体の自立した経済運営を企図し、今の日本に必要な政策を取ることで、独自の経済展開を進めるという方法もあると思いますが、それを実行する日本の各経済主体、政策当局の構想力と事効力が問われているという事なのかも知れません

消費者物価上昇4%でも日銀が動かないわけ

2023年10月09日 15時08分45秒 | 経済
8月の消費者物価の上昇は3.2%(総合)でした。この「総合」の数字は1月の4.3%上昇が2月3.3%上昇に下がっています。これは政府が、電気・ガス会社に補助金を出したからで、補助金を止めれば、消費者物価上昇率は4.2%(アメリカ8月3.7%)になります。

更に中身を見ますと生鮮食品とエネルギーを除く総合」が4.3%で、総合より高い要因は、食品8.6%、生鮮を除く食品9.2%といった生活必需品の上昇です。

一方で、日銀のインフレ目標は2%です。これは消費者物価上昇が2%になったらゼロ金利を辞め、金利を上げて、金融正常化を行うという前提での目標です。
しかし日銀は、金融正常化に動く気配はありません。何故でしょうか。

その理由を日銀は説明していますが「2%インフレ目標は『賃金上昇を伴う物価上昇です』というだけです。

しかし、賃金も上がっています、統計で見れば、実質賃金は下がっていますが、名目賃金は毎年上がっています。今春闘では賃金上昇も高まり毎月勤労統計では5月・6月はそれぞれ3%、2%の上昇です。

最低賃金もこの所毎年3%、今年も10月から4%上がります。
そしてそれに合わせるように10月から4千数百品目の生活物資の値上げが報道されています。

これでも「賃上げを伴う物価上昇ではない」と日銀は言うのです。
日銀は、理由は言いません。思うに、日銀は、もっと顕著な賃金上昇、賃金インフレでなければ。「注視している」だけでいいと考えているのでしょうか。

そこで、まず基本的なことを考えてみましょう。「インフレが起きる状況、起きる原因は何か」という事です。

古典的には、モノとカネのバランスで起きる、モノより金が多くなるとインフレになるという基本的な理解(貨幣数量説)があります。

これは基本論で、応用編ではその通り行かないこともあります。おカネが一部の人に集まってしまった場合とか、おカネが入っても節約して使わない人が多いといった場合にはインフレは起きません。
考えてみれば、日本でもそんな状況も一部に出ているような気もします。

次に、もう少し具体的な面からインフレの原因を分類している見方がないかと言えば、インフレの原因は通常「輸入インフレ」と「賃金インフレ」だという見方です。

輸入インフレは輸入品の値上がりが国内価格に影響して起きるインフレです。賃金インフレは、国内で賃金が上がることで起きるインフレです。

輸入インは2つの場合がります。1つは世界中で、原油や穀物の値段が上がったといった場合です。もう一つは、円安になって、日本だけ輸入品の値段が上がる場合です。
前者は世界共通の問題ですが。後者は日本だけの問題です。

賃金インフレの場合は、賃金が上がることは、コストの面から見れば、コストプッシュ・インフレ、購買力の面から見ればデマンドプル・インフレの2つの側面を持ちます。

さて、これらの要因の組み合わせの上に、経済政策、為替理論、消費行動、雇用構造、企業経営学などの問題が絡み合って、今の日本の状態が起きているので、政府も日銀も、その複雑さから説明が上手くできないので、曖昧な説明で済ますので、何を考えているのかわからないという結果になっているのでしょう。

次回は、このブログで今まで書いて来た事を整理し、何処まで的確に解り易く説明できるか、全力でトライしてみます。

2023年8月「家計調査」:平均消費性向が再び低下へ

2023年10月06日 15時29分15秒 | 経済
今日、総務省から2023年8月度の「家計調査、家計収支編」が発表になりました。

いつも通り主要な数字をさらっと追ってみましたが、直感したのは「これは良くない兆しでは・・・」という感じでした。

最後に出ている勤労者世帯の「平均消費性向」は、前月に続いて矢張り昨年8月より下がっていました。

平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯:%)

          資料:総務省統計局「家計調査」

上の図を見て頂くと明らかですが、一昨年の青い柱に比して昨年の赤い柱は3月、11月、12月を除いて9カ月が上昇です、消費者物価が上がり始めた時期ですが、元気に伸びた赤い柱が消費需要の復活を示し、景気を明るくしてきました。

政府も連合も経団連も、この状況に気を良くし、経団連会長も「賃上げ容認」を言い、今年の春闘を盛り上げました。

結果は前年プラス1%程度の2.8%の賃上げでした。ところが平均の賃上げ率が(希望的)予想より低かった事に加えて、消費者物価の上昇の方が勢いづき実質賃金はマイナス幅を広げ、「この程度の賃上げでは」という事になったようです。

民間消費支出は腰折れ状態になってしまったようです。緑の柱が赤い柱を越えなくなった様子が8月の結果で見えて来たのではないでしょうか。

平均消費性向は、収入も支出も名目値ですから、手取収入の増加より消費支出の増加の方が小さい(前年同月比)という事で、物価上昇にめげて、買い控え、節約、消費より当面貯金という家計の生活防衛型の心理への転換を反映し始めたようです。

「平均消費性向」が計算出来るのは、収入の統計のある2人以上の勤労者世帯だけですので、それでは2人以上全所帯の方はどうかと見ますと、こちらは消費支出だけですが、矢張り傾向は同じで、前年同月に較べて、名目値の消費支出の伸びが僅か1.1%、物価上昇を差し引いた実質消費支出の伸びはマイナス2.5%と減ってしまっているというのが実態です。

その中身を見ますと、食料への支出は物価上昇に追いつかないものの、やむを得ず5.9%伸ばしましたが、食料品の値上がりは大きく実質値はマイナス2.5%、こうした負担が影響して主要10費目中5費目で前年比の名目支出がマイナスになるという状態です。

10月からはまた数千品目の値上げが報道されていますし、ガソリンや電力・ガスといったエネルギー関連の政府の補助金がいつまで続くか解りません。こうした物価上昇の大きな原因である異常な円安の進行はアメリカの金融政策次第です。残念ながら政府・日銀は無策のようです

状況はアベノミクス初期に酷似して来ました。円安で企業の利益は増えます。政府は賃上げを奨励しますが、賃金上昇は僅少で、家計は実質賃金の低下、将来・老後不安から貯蓄に励み、消費需要は伸びず、消費不振でゼロ成長、政府は何とか経済成長をという事で補助金連発、原資はすべて赤字国債、財政赤字で困った政府は消費増税に走る、一層の消費不振、といった記憶に鮮明な悪循環です。

既に岸田さんは、連合の定期大会に、2007年の福田康夫総理以来16年ぶりの出席で、ご挨拶ですが、賃上げのためか、選挙のためか、本音のところは良く解らないという事のようです。

折しも。円安が長くなりそうだとの観測が言われていますが、政府の日銀も「注視」するだけというのも、これまでの政府・日銀と同じです。

統計は正直で、日本経済、物価の動向、国民の家計の実情、などなどをきちんと教えてくれます。
それなのに、政府の政策は、いつも賃上げ減税や補助金で、総て後追い、問題の核心には政府の手は届いていません。

政府が統計をきちんと正確に理解し、有効に使わないので、統計を作る事務担当の役所も、ついつい杜撰になるという見方もあるようです。

統計は情報の宝庫です。政府には、折角の統計を確りと使いこなすようにぜひお願いしたいと思っています。

貯蓄から投資と言いますが

2023年10月05日 15時19分38秒 | 経済
岸田さんは貯蓄から投資に国民の資産を振り替えたいようです。
コツコツとモノづくりで資産を築いていくより、カネを動かして、カネを稼ぐ方が、国民が早く豊かになれると思っているようです。

この所、株が上がっていましたが、日経平均は昨日までの3日で、2000円も下がりました。今日は上がっていますが、明日からも上がるのかそれとも下がるのか誰にも解りません。

政府が経済運営に失敗すれば、また、アメリカの経済が具合悪くなれば、輪をかけたトバッチリを受けるのは日本です。
岸田政権は失敗しないのでしょうか。今も2年続きの実質賃金マイナスで失敗の最中ですが「株式なら大丈夫です」というのでしょうか。

先日もニュースで岸田さんが「日本国民は2100兆円も資産を持っている。その半分は銀行預金ですから、それを株式投資に持っていけば国民の資産はずっと増える」というような趣旨の事を言っていました。

銀行預金と言っていますが、国民は銀行に預けたつもりでも、銀行はそれで国債を買って、その半分は日銀が持っているのです。

結局、合計すれば、2100兆円の半分はすでに政府が国債発行で国民から借りて使ってしまっているのです。残りの内、400兆円はすでに証券投資で、あとの500兆円は生命保険や年金型の投資です。

国民がこぞって「国債を売って」(預金を下ろして)それで株を買ったら政府はどうするのでしょうか。

NISAの拡充で税金を免除すると言いますが、それで歳入不足の分はまた国債発行でしょうか。赤字国際は無尽蔵の財源だと思っているでしょうか。

投資というのは必ずリスクを伴っているのです。そのリスクはいろいろありますが、国民の財産形成のような長い目で見たリスクというのは国の経済政策です。

例えば、「プラザ合意(G5)」の時に、日本は無条件で円高を容認したようですが、中国は後年、アメリカの人民元切り上げ要求を拒否しています。

日本も、例えば、プラザ合意当時の240円の円レートを200円までぐらいなら認めるが、それより円高にならないようにG5が努力義務を負うとかいう条件を付けていれば、円高不況にはならなかったでしょう。

また、黒田バズーカを、アメリカのゼロ金利政策に続いて取っていたら、75円~80円という円高対応の苦労はなかったでしょう。
さらに、アベノミクスで、非正規労働者の正規化を円安とともに進めていたら、2%インフレ目標は公約通り2年程度で達成、日本経済は健全な成長路線に早期復帰していたでしょう。

こうした政策の失敗が(その度に株価暴落、長期低迷)重なっている事が、国民は利息が付かなくてもリスクのない銀行預金指向(ときにはタンス預金指向)になる最大の要因でしょう。
日本では日本なりの経験から、国民は資産の選択を賢明にしていると考えた方が多分正解で、そうした国としての政策の失敗の反省なしに「貯蓄から投資へ」と言っても国民は納得しないでしょう。

株式評論家は「株は上がる」と言い、政治家は「日本経済は良くなる」と言いますが、国民は現実の経験に基づいて判断し行動しているのでしょう。

例えば、「これからの日本経済は成長路線を取り戻して・・・」と政治家が言っても、NISAなら長期的には間違いない・・・」と政府が言っても、国民は不安感と不信感のないまぜではないでしょうか。

そんな見通しが言えるのだったら、先ず、貯金をしたらまともな利息を付けるぐらいは簡単でしょうから「何でいつまでもセロ金利なのですか」、先ず、そこから始めてくださいというのがより多くの国民の偽らざる気持ちなのではないでしょうか。

それが出来るようになって初めて、それ以上のリターンもあるが、多少のリスクもありますよと言う証券・株式投資の勧誘でないと、何か胡散臭いと私も思っています。

「持続的賃上げ」への具体的プロセス:試論 <来春闘は10%賃上げを>

2023年10月02日 12時38分14秒 | 経済
岸田総理は「持続的賃上げ」実現を、10月20日開会で調整している臨時国会で本格的に議論したいようです。
ご本人は、安倍さんもやった賃上げした企業に減税という手法を使いたいようですが、これは相変わらずのバラマキで、上手くはいかないでしょう。

賃上げした企業の減税というのは、賃上げの原資を政府が財政赤字で補填するという事です。賃上げできない企業には補填がない、賃上げが高ければ補填も大きい、という事は、企業間格差の拡大を政府が奨励するという事です。

大体こうした難しい問題は、人間の限られた頭で考えるのではなく、経済の基本原則であるプライス・メカニズム(価格機構の機能)を十分に働かせることを基本にして、政策はそれが上手く働かない所や、行き過ぎるところがあれば公正取引の立場から是正するというのが賢い方法です。

そんな立場から考えていきますと、早急に一度大幅賃上げをやって、ある程度のインフレ経済を作り出し、今、値上げのしにくい所でも、マーケットが受け入れれば値上げが出来る雰囲気を作り、価格機構が働きやすくすることが必要でしょう。

そのためには、10%程度の賃上げを労働組合サイドから強力に推進する要求が必要でしょう。

これはこのブログでも取り上げましたドイツのルフトハンザやアメリカのUAWのケースに代表されるような形です。
欧米では物価が上がれば賃上げは当たり前のことですから、自然とそういう形になってしまうのが一般的で、時に行き過ぎて、中央銀行の出番になったりしているのです。

日本の場合は、連合も傘下の単産も、そうしたアプローチには不慣れになってしまいましたから、それでは全労連にリーダーシップをというわけにもいかないでしょうし、一番頭の痛いとこすろです。

通常ゼロ成長で、10%の賃上げをしたら、国際競争力が失われ、大変だという事になるのですが、日本の場合は、今の行き過ぎた円安が多少戻っても、その点の問題は十分克服可能と思われます。

中小企業などから、そんな賃上げをしたら企業がもたない、という意見が出るかも知れません。それに対しては、賃金コストが上がった分は値上げでカバーがOKであることを周知する必要があります。そのあとは「価格機構」にお任せです。

恐らく物価上昇は10%行かないでしょう。実質賃金はプラスになるのではないでしょうか。
そして再来年からは状況を勘案しながら、5%賃上げ程度の安定経済を目指し、「2%インフレターゲット」が生きてくるような経済状態に軟着陸というシナリオになるのです。

この10%(あるいは15%)という、一時的な賃上げは、日本経済を『ニューディール』にするという意味合いのものです。
ゼロサムの中ではニューディールは困難です。一時的にインフレで余裕を作るのです。

今の岸田政権では、こんな政策は多分無理でしょう。賃上げ奨励といっていますから、やれれば結構ですが、補助金政策とは全く異質の政策ですから多分無理でしょう。

出来るとすれば、連合と協力して野党が一致して、来春闘の大幅賃上げ路線を強力に推進、「日本経済のニューディール」、「日本経済社会の長年の停滞を払拭する完全リフォーム」路線を、この際、一気にやり切るつもりになることが必要なようです。
「出でよ新時代のリーダー!!」です。

政治的な面から見れば、日本が改めて成長する経済社会を取り戻すための「政権交代の絶好のチャンス」なのではないでしょうか。

野党が結集して、ちまちました論争より、30年以上も不振な日本経済・社会の「抜本的な世直し」に本気になれば、自民・公明もぬるま湯から飛び出すでしょう。
政治、経済共に健全な日本の再構築のために、斬新、さらに革新的な発想が必要です。

(以上で「持続的賃上げ」のシリーズは一応終了です、有難うございました)

消費者物価3.2%上昇は「2%インフレ目標」を超えていますが

2023年09月29日 12時10分28秒 | 経済
この所政府の言う「持続的賃上げ」に絡んで、政府、日銀、それに労使の政策や行動に、現実の経済情勢との不適合があるのではないかという点について見てきました。

その中でも大変わかりにくい点は、日銀が「2%インフレ目標」を達成すれば、ゼロ金利政策を見直すと言いながら消費者物価上昇は疾うに3%を超えて未だ上り続けそうだというのに、日銀は「静観」で、特段の動きはないという事でしょう。

つまり政府・日銀の言う「2%」と現実の「3%以上」の物価の上昇は違うという事ですが、ではどうなればいいのか、どうするのかの説明はありません。

ここで物価上昇以上の賃上げをすれば、物価は更に上がる可能性もありますが、何%まで上がればいいのか解らないというのは、国民・生活者にとっては困った事です。
そして、政府からは、持続的賃上げの「具体的な姿」は、全く示されていないのです。

日銀は、「賃上げを伴うインフレが2%」という言い方もしていますが、確かに今のインフレは、賃金が上がらない中で始まりました。そして今、政府は物価上昇を上回る賃上げをと言っています。何か順序が逆です。

では、今のインフレが日銀の考えているインフレとどう違うのか考えてみましょう。
日銀の考えている「2%インフレは」正常な経済状態の中で、実質経済成長が2%ぐらいあり、賃上げが4%あれば、経済成長は賃上げに2%足りませんから、その分はインフレになるという事で、多分、その程度のインフレで経済は巧く回るというのでしょう。

これはその通りで、経済成長しても高い所と低い所があって、そのあたりの調整が必要ですが、ゼロサムの中での調整は困難で、インフレでみんなが増えれば、その中で増え方の大小があっても、「増えている」ので調整がしやすいという事でしょう。

所で、アベノミクス以来10年程の日本は、殆どゼロサムでした「あちらを増やすには、こちらを減らす」というのは大変なことです。

ではどうしたかと言いますと、政府が借金して、「損している」と主張するところに補助金を出し、減らされたという意識を抑え込んでいたのです。
これがいわゆるバラマキの実態ですが、不満を抑え込んだ結果は財政赤字の拡大で、今のインフレは、「財政デマンド・プル・インフレ」の色彩の強いものです。

具体的な現象としては、平常時でも世界は年に2~3のインフレで、食料自給率の低い日本にとって、穀物や飼料、肥料などはじり高ですが、賃金が上がらず、将来不安から消費の伸びない中で、食料品などの値上げは殆ど不可能な状態、つまり賃金も物価も上がらなかったのです。

そうした中でコロナの終息もあり、10万円の一律給付、貧困家庭への援助、節約疲れもあって、2022年あたりから家計の消費意欲が上向き、長年の値上げ我慢への消費者の理解もあったのでしょう、この2年ほど、食料中心に生活必需品値上げの波が起き、一部には行き過ぎも見られる状態というのが、今のインフレでしょう。

つまり、長期の政策上の誤算の集積が今になってその清算を求め噴出という現象、それに加えてこの所のアメリカの金融政策のトバッチリで、予想外に長引きそうな大幅な円安といった複雑な事情の中で起きているのが現状です。

この中で日銀も絡むのが、アメリカの金利引き上げに対して日本銀行が何か取りうる手段はないかという問題です。
しかしこれには経済学者の思考パターンではない、政治的は駆け引きや、投機筋の勘や思考方法が必要でしょう。日銀の政策決定会合とは少し違う回路での思考が必要なようです。

こんな状態の中で、単純な「2%インフレ目標」や一般論で「持続的賃上げ」と言っても、一体如何なるシナリオ、如何なるプロセスで、政策展開ををするべきか、簡単に答えは出そうにもありません。
ならば、混乱した状況が収まるまで、様子を見るかという事で、「注視する」という事になるのでしょう。

しかし、労使はすでに来春闘の準備の時期ですし、国民は、何とか早く(政権維持ばかりでなく)本気で実効ある日本経済の安定、正常化を実現してほしいと思っているのです。
政府・日銀に加えてアカデミア、労使の共通な目的を持った協力が必要のような気がします。