tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

円安と賃金水準の関係への理解を

2023年09月08日 15時33分46秒 | 経済
前回、消費者物価上昇が予想外の幅で続きそうなので、今春闘の賃上げは物価上昇に食われてマイナスという現実から、家計は、改めて節約ムードの逆戻りではないかという懸念を指摘しました。

2022年に至って漸く回復の気配を見せた家計の消費支出でしたが、この4月から急速に
節約ムードが強まった様子が「家計調査」で見られるのです。

生活必需品関係の急速な値上がりの理由として言われるのは、昨年までは「長い間値上げが出来なかったが我慢も限界」といった意見が多かったように思いますが、最近は、急激な円安で輸入原材料はエネルギー価格の高騰という説明になって来ています。

110円辺りだった円レートが140円台という20~30%の円安がさらに続くようなことになれば、日本経済として物価水準全体の見直しが必要でしょうし、そうなった場合の物価水準の上昇と、賃金水準のバランスはどうなのかという問題が当然発生するわけです。

物価水準が上がった時、賃金水準を引き上げなければ、必然的に消費不足経済になり、経済成長は困難になるでしょう。
これは、アベノミクスの中で現実に発生しています、日銀の政策変更で異常な円安状態が解消して、すぐにもインフレ基調の経済なるという安易な予測は外れ、アベノミクスを結果的に失敗に追い込んだ元凶です。

アベノミクスで、円レートが80円から120円と50%の円安になっても、賃金水準は殆ど上がらず、賃金の安い非正規従業員の割合は増えるような状況の中で、加えて、年金財政不安などが言われれば、家計の視点では、将来のために貯蓄を増やし、消費支出は切りつめるという事だったのでしょう。

経済と経営の関係での原則を言えば、円高になった時は、賃金を下げなければなりませんし、逆に円安になった時は賃金を上げなければなりません。

しかし、円安になった時は「賃金を上げられる」とは思っても「上げなければならない」とまでは思わない企業が多いのではないでしょうか。
その理由は、多分、賃金は上げられるが、余り上げない方が国際競争力が強まって経営にプラス、という意識があるからでしょう。

その気持ちは解りますが、もともと競争力がない国ならば、1割自国通貨の価値が下がっても、賃金コストは5%上昇に止め、残った5%は国際競争力の強化に使うという考えもありうるでしょう。
しかし、もともと国際競争力のある国ならば通貨価値が下がった分だけ賃金コストを上げても国際競争力には問題はありません。

さて、円レート110円で国際競争力があった日本で140円台の円安になったらどのくらいの賃上げが可能になるのでしょうか。(140円/110円≒27%という所でしょうか)

問題になるのは円レートは早晩110円に戻るのではないかっという可能性、早晩と言ってもそれはいつごろか、賃上げは出来ても、円高に戻った時賃下げは極めて困難、などの問題を企業は考えて計算しなければならないという事でしょう。

政府日銀は、企業がそういった予測不能の中で経営をしなければならないことに留意して、口先介入から標準金利の引き上げまで、多様な手段を巧みに使って、円レートの安定を図る必要があります。

モタモタしているとまたアベノミクスの低成長の二の舞ではないでしょか。

インフレで国際競争力を多少落とすことになっても、欧米主要国はいつも日本以上のインフレをやりますから、日本が、賃金インフレで景気を刺激する余裕はかなり大きいのではないでしょうか。

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