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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

日本経済低迷の根本的理由を問う

2024年02月16日 12時31分56秒 | 経済

今日の新聞は日本のGDPがドイツに抜かれて世界4位になったことを大きく報道しています。抜かれたのは2023年ですが、それ以前30年ほどもだんだん追いつかれて来ていたのです。

ニュースとしては追い越されたことが重要でしょうが、本当は、だんだん追いつかれてきたという事の方が重要のように思います。これは、何故日本経済がこの30年殆ど成長してこなかったかを考えることと同じでしょう。

このブログでは折に触れてその問題を取り上げて来ていますが、この際纏めてその根本的な理由を考えてみたいと思います。

先ず現象的な問題点を見ていきますが、原点は1985年の「プラザ合意」です。それまでは「ジャパンアズナンバーワン」でした。

「プラザ合意」は経済外交の大失敗で、当時の政府の日銀も「為替レートと実体経済の関係」それに「マネー資本主義の問題点」についての知識が不足だったのです。

多分アメリカは良く解っていて、日本に円高容認の了解を求めれば、あとはどれだけ円高になっても「マーケットのせいだ」ですむと考えていたのでしょう。

その後2年で2倍の円高になり、日本経済はコスト高で産業(主に製造業)空洞化が始まりました。

日本が「こんなに円高になっては困る」と言い出さないように、アメリカは内需拡大を助言しそのために金融緩和、労働時間短縮が効果的と示唆した様です。日本は「前川リポート」を出してそれを実践しました。その結果が「土地バブル」でした。

1890-91年「土地バブル」と「株バブル」は崩壊、日本は長期不況に入ります。日本は「バブル崩壊」は自分の責任と考え「ナンバーワン時代」の自信(過信)からこの不況は短期に終わると予測し、「円高を生かせ」などと言っていました。

しかし実力の2倍の円高克服には10年、20年かかると気づいたのは1995年あたりになってからでした。

企業は賃下げ非正規多用、事業のスリム化で成長を諦め、コストカットで競争力の回復に専念することになりました。

結果は「好況感無き上昇」に入りましたが、2008年のリーマンショックでアメリカはゼロ金利政策を取り円高が再来(円レート75円)、日本は対抗手段は取らず放置、泥沼の数年の後、2013-14年の黒田日銀の「異次元金融緩和」でようやく為替レ-トが正常に復しました。

これで日本経済は回復に向かうかと思いましたが、その後の経済政策は「円安と実体経済の関係」の無理解から、春闘への口先介入程度で、国会議論は「モリ・カケ・サクラ」論争、いまは「裏金論争」で、経済政策は非効率なバラマキばかり、野党は野党で経済論争は「ガソリン税のトリガー論争」に矮小化です。

日本経済の実体経済の現状は2四半期連続のマイナス成長、マネー経済は株価のバブルのピークを越えるかで大騒ぎ、ただし円安が今後どうなるかは、アメリカの金融政策次第、円高予想一般的です。

現象面ではこうした政策の失敗の連続が成長しない日本経済を齎したのですが、何がその背後にあって、こんな日本にしてしまったかです。

主要な要素は2つあるようです。先ず、日本経済の命運を決めてきたのはアメリカで、日本自身は、政治も経済も、なす術を知らず対米追従に終始というのが、プラザ合意以降の歴史です。

そして今はその上に、防衛問題が大きくのしかかって来ています。これもほとんどアメリカ主導で進んでいます。

もう1つは日本の政治を担当する自民党の政治家です。彼らは一体何をしてきたのでしょうか。自民党の幹部政治家は、政治経済の根本問題はアメリカに追従し、やっているのは統一教会と裏金で政権維持、それがバレたら虚しい言い訳に終始です。

これでは経済の零落ばかりでなく、国の健全な存在すら、自らの手では決められないという貧困の極に達した政治体制と言われても反論は困難でしょう。

戦後の日本は、こんな国を作るために頑張って来たのではないはずです。漸く今、民間が気付いてやり直そうという時期に入ったようです。

これだけ失敗を重ねて来たのです。失敗の歴史をつぶさに見れば、立ち帰るべき姿が見えるのではないでしょうか。


GDP速報(2023年01-12月期)ここで底打ちに!

2024年02月15日 14時29分30秒 | 経済

今日、内閣府から2023年10-12月期のGDP速報が発表になりました。

マスコミの見出しは「日本のGDPドイツに抜かれ4位転落」というのと「実質成長率2期連続マイナス」ということになっています。10-12月期の発表で2023年1年間のGDPが計算出来たので、予想通りの4位転落で、さらに2期連続でマイナス成長というのも情けない話です。

四半期GDPの対前期の増減をグラフにしますと下図(資料:内閣府)です。

    4半期GDPの対前期増減(%)

コロナ終息で、不振だった家計の消費需要を中心に成長率の回復が期待されましたが、昨年1-3月期以降は減速に転じ、夏以降は前期比マイナスに沈没してしまっています。

コロナ以前からの長期不況の原因については、GDP四半季報の度にこのブログでも指摘して来ましたが、堅調な企業の設備投資に比して個人消費が低迷を続けるという投資の片肺飛行という状態が長く続いてきました。

ところが昨年7-9月期以降は企業設備の伸びがマイナスに転じ、消費不振と相まって経済成長を更に押し下げたようです。

このブログでは、総務省の「家計調査」で「平均消費性向」の数字を毎月追っていますが、一昨年からコロナの終息を見込んでか、家計の消費性向はそれまでの下降から上昇に転じていました。それを帳消しにしたのが、生活必需品中心の波状一斉値上による消費者物価の上昇です。

この波はようやく昨年秋ごろから沈静化して来ていますが、この辺りについての昨年来の家計の消費需要の動きを見たのが下図(資料:上に同じ)です。

     家計最終消費需要の名目と実質の動き

ご覧頂きますように昨年の1-3月期までは家計の消費意欲回復の動きが見られました。しかし消費者物価上昇に食われて20カ月連続で実質賃金が前年割れんあるようなじょうたいでは、せっかく積極化した消費需要も消費者物価値上がりに負けて、凋んでくるような状態(消費支出の名目値の低下)が起きたようです。

ところが、有難いことに消費者物価の上昇がここにきて山を越え、このところ急速に沈静化しています。

図では、青と茶色の柱の差が消費者物価の上昇率ですが、この差が次第井に小さくなり、1月にはさらに小さくなっています(1月の東京都区部の消費者物価上昇率は1.6%)。

望むらくは、この消費者物価の鎮静と、今春闘の賃上げへの期待(人件費上昇の価格転嫁を公正取引委員会が奨励という稀有な事態も含めて)とを合わせて考えれば、恐らく今年は伸び悩みの見えた個人消費支出も上向く年になるのではないでしょうか。

1年後ぐらいには、今回のGDPの四半期速報を振り返って、「あそこが日本経済も底だったか」と言えるようになることを願うところです。


アメリカ消費者物価高止まり、FRBは懸念?

2024年02月14日 14時39分47秒 | 経済

昨日、日経平均は1000円を越える上昇となり、バブル時の38000円台に一時載せたようです。(バブル時のピーク:38915円)

原因は、前日アメリカの株価が上ったからという事ですが、日本企業の好決算もあり、それに円レートが150円に載せる円安になったこともあるのでしょう。

アメリカはGAFAMといった巨大企業の好決算、マネーゲーマーの活躍でダウ平均は史上最高を続けていますが、実体経済は問題も沢山あるようです。

「インフレが収まったと思ったら不況が来た」というのは余りかにアメリカに住んでいる友人の年賀状でしたが、1月のアメリカの消費者物価は3.1%と予想を上回り、FRBのパウエル総裁は警戒感を示しているようです。

アメリカの消費者物価の1月の中身を見ますと下図です。

     米国消費者物価今年1月の主要内訳(対前年上昇率:%)

                資料:アメリカ労働省

総合指数は3.1%で予測の2%台に下がらず、対前月では10月の0.1%か11、12月02%から1月0.3%と上げ基調です。内訳はエネルギー価格はマイナスですがコアコア指数(食料とエネルギーを除く総合)が3.9%と下がりません。

コアコアは自家製インフレつまり賃金インフレが主因とされているものです。因みにコアコア指数の内訳を見ますとモノの価格は-0.3%、サービスの価格が5.4%でサービスのコスト上昇が主因です。ついでにサービス価格の中を見ますと、宿泊6.0%、運送9.5%という高い上昇率が見られます。つまりこれは生産性の上がらない単純サービス労働での人手不足でサービス料金が上がり物価が下がらない事を示しているのです。

という事でその結果が「物価がまだ下がり切らないとFRBが判断し、景気抑制の高金利政策を続ける要因になっているという事でしょう。

アメリカの高金利政策が続き、日本は異次元金融緩和が続けば、日米金利差は縮まらず、円安傾向が続く可能性が大きくなります。その間、円安による差益も含めての高収益で、日経平均は上がるのでしょうか? 当面、NISA拡充ははタイミングが良かったということになるのかもしれませんが問題はその後です。

時期がずれるにしても、いずれ金利差は縮まる方向に行くでしょう。アメリカの引き締めが行き過ぎれば、低金利政策になるかもしれません。激変は良くないでしょうから、こうした正常でない状態は出来るだけ早く是正された方がいいでしょう。

どうもリーダーシップは、アメリカの方にありそうですが、日本もアメリカ対応だけではなく、日本経済の主体性を維持するような経済・金融政策を確り考えないといけないような気がします。

当面、政府は裏金問題の泥沼で経済政策どころではないのかもしれませんが、経団連の十倉会長も言われるように、大事なのは実体経済ですから、民間が何とか頑張ろうという時に、邪魔にならに様にしてほしいものです


2024年1月、物価は安定の可能性高まる

2024年02月13日 13時42分03秒 | 経済

今日、日銀から輸出入物価と企業物価の2024年1月分が発表になりました。例月通り、消費者物価の先行指標でもある東京都区部の1月分の消費者物価の速報と合わせてみてみました。

もともと毎月この3物価指数を並べて検討するというのは、不況下でインフレ発生の日本で、消費者物価上昇の要因、取るべき対策、インフレ抑制の方向と可能性は?、という事で始めたのですが、ここにきてようやく日本の消費者物価の正常化の可能性が見えてきたという段階に至ったようです。

日銀の植田総裁は、時間はかかるが更に春闘の行方も考慮し、ゼロ金利からの出口を探ろうとしているのですが、春闘の方は労使が良識ある判断で決めることですから、安心できそうです。という事で、今月も3物価を並べてみた結果は下図です。

     主要3物価指数の推移(消費者物価は東京都区部の速報)

                      資料:日本銀行、総務省

国際紛争多発の中で、心配な主要資源の国際価格ですが、錯綜するバランス関係の結果でしょう、何とかこの辺りのレベルで当面安定しそうな気配です。円安で心配される円建ての輸入物価も、落ち着いています。

その結果日本の消費者物価を押し上げる輸入物価は落ち着きそうで、後は国内が確りすれば経済政策、金融政策が物価の変動で悩まされる可能性は小さくなりそうです。

企業物価指数は横ばい、消費者物価指数は12月に比べて0.2ポイントの低下です。生活必需品の波状一斉値上げの動きもようやく落ち着いたようです。

ここ1年というターム(対前年上昇率)で見ましても、3物価の動きは収斂の方向で、世界各国を悩ませた輸入インフレの元凶の輸入物価(国際資源価格)も、その影響を直接受ける企業物価も0%近傍に落ち着いている様子が下図から見えるところです。

      主要3物価の対前年比(%)

                   資料:上に同じ

2年ほども続いた食料などの生活必需品の一斉波状値上げも終息し、自家製インフレ部分が急速に収縮したことに加え、生鮮食品の値下がりもあり、消費者物価の下げは顕著で、前年比1.6%は、政府・日銀のインフレ目標2%を割り込んできています。

恐らく一昨年から続いた消費者物価上昇問題は、ここで一件落着でしょう。あらためてインフレ問題が起きるとすれば、海外資源問題の再現か、国内の賃金インフレかですが、海外資源問題は、安定を祈るのみですが、国内の賃金インフレは、日本では心配の必要はないように思います。労使の良識は十分期待できると思うところです。

という事で、このブログの物価問題検討の2つのシリーズも、そろそろ幕かと思いますが、世の中益々不穏ですし、日銀の政策との関連もありますので、もう少し見ていくべきかと考えています。


「昨春闘以上」の賃上げでは足りないようですが

2024年02月07日 16時05分45秒 | 経済

昨日発表の「家計調査」で、昨年12月の勤労者世帯の実収入(名目値)は前年比マイナス4.4%、更に、毎月勤労統計では名目賃金指数(同)が1.0%であることが解りました。

この違いの原因については昨日も触れましたが、常識的には両方とも勤労者の賃金水準と理解されるでしょう。定義も違えば、カバレッジも違いますから違って当然ですが、どう考えても、昨春闘の賃上げ率3.6%とは大分違います。

これも勿論定義の違いカバレッジの違いという事でしょうが「日本の賃金が上がってきた」と感じられるような状態というのは、数字の違いがあっても、どの統計も、それなりに上っている状況になる事が必要なのではないでしょうか。

毎月勤労統計の年平均の上昇率は1.2%ですが、最も頼りにすべきこの統計にしても、上昇率は、30年ぶりの高い伸びと言われた春闘賃上げ率の3分の1です。

毎月勤労統計の賃金指数の上昇率を月毎に見たのが下図です。

    賃金指数の対前年上昇率(月別、%)

           資料:厚労省「毎月勤労統計」

春闘直後の5月6月が高いのは、賃上げの遡及支払のせいでしょうか(?)。その後は1%を超えたのが3ヵ月1%未満が3カ月です。これでは2~3%台の消費者物価の上昇率にはとても及ばず毎月実質賃減は対前年比で減少でした。

ところで、連合の要求は「昨年以上」ですし、経団連会長も「昨年以上の賃上げが望まれる」と発言されています。

「以上」という言葉は微妙ですが、専門家へのアンケートの平均は確か今春闘は3.8%でした。前年「以上」には違いないのですが、消費者物価上昇率が2%以下に下がっても「対前年実質賃金の増加」確実にはなりそうにありません。

去年よりいくらかでも良ければいいじゃないかでは済まないのが今年の春闘ではないでしょうか。

今年は2013~4年の円安、更には昨年からの円安で、日本の賃金(賃金コスト)が国際的に最も低くなった時期です、企業利益は快調で、株価はバブル期突破などと言われています。

此処でちょっと「家計調査」の平均消費性向を見てみましょう。過去3年の平均値(月数字の単純平均)2021年67.5%、2022年68.7%、2023年68.9%と、長期に低下・停滞していた2人以上勤労者世帯の平均消費性向が2022年から上昇に転じています。

原因はコロナ明けもあるでしょうが、長~い緊縮生活から脱出しようというエネルギーが社会情勢だけでなく統計からも感じられるところではないでしょうか。

今春闘は、賃上げ自粛(?)のお蔭でで長かった「自家製デフレ」からの脱出を国中の世帯が望んでいるという賃上げの効果を最大限にするチャンスではないかと感じています。

労使が共に思い切った賃上げに踏み切ることで日本経済が明るさを取り戻せるベストの時期でしょう。それに成功して初めて労使が切望する「継続的な賃上げ」が可能になるのではないでしょうか。

「継続的な賃上げ」は、活発な消費需要にも支えられた、日本経済の安定した均衡成長の結果でなければならないからです。


12月の平均消費性向は前年比上昇ですが

2024年02月06日 15時28分58秒 | 経済

今日総務省から2023年12月の家計調査の「家計収支編」が発表になりました。

早速、2人以上勤労者世帯の「平均消費性向」を見てみました。

38.4%で昨年12月の37.2%、一昨年12月の37.3%を1ポイント強上回っていて、家計の消費意欲の高まりを示していると喜びたいところですが、周辺の関連数字を見ますと、どうも手放しで喜べないような気がして些か憂鬱さが残ります。

    平均消費性向の推移(2人以上勤労者世帯、%)

           資料:総務省「家計調査」

12月はボーナス月ですから、年越しの支出も必要ですが、同時に出来るだけ貯金に回し翌年6月のボーナスまで6ヶ月の生活の支えにするというのがサラリ-マン家庭の習慣ですから12月の消費性向は図のように低くなります。

その中でも平均消費性向が1ポイント以上高まったのですから、昨年の年末商戦はいくらか良かったのも頷けるところですが問題は、サラリーマン家庭の収入の問題です。

2人以上全所帯は、自営業世帯(1割強)も無職世帯(3割強)も含まれますから収入の数字の集計は無く、消費支出の数字だけですが、その消費支出の数字を見ますと12月の対前年同月比は名目僅0.4%の伸び、実質値はマイナス2.5%という事で消費は不振です。

その内の勤労者世帯の場合は、収入と支出の両方の数字があって、世帯の実収入は名目マイナス4.4%、実質マイナス7.2%という大幅なマイナスです。

同じく今日発表になった毎月勤労統計の事業所規模(企業規模ではありません)5人以上の12月速報の現金給与総額は対前年同期比で1.0%の伸び(1~12月平均1.2%)で実質は当然マイナスです。

家計調査では、家族の誰かが勤労者であれば勤労者所帯に分類で、家計補助者が勤労者の場合も集計されるので(零細企業勤務?)実収入のマイナスが目立ちます。

今春闘は円安の中で日本の賃金の低さに多くの人が気付き(連合は合少し遅れたようですが)、賃上げの必要性が経営側からも指摘される状態になって、勤労者の意識も少し明るくなったのでしょうか、収入が増えない中で消費堅調の原因は「?」です。

しかし、いずれにしても、消費需要を伸ばさなければ日本経済は「自家製デフレ」脱出は叶いませんから、消費性向上昇は貴重です。

そしてそれを後からでも確りサポートするような賃上げが必要なのですが、これは今春闘の基本的な課題です。(昨年は賃上げ率3.6%で、上記毎金統計の12月は1.0%)

単に昨年以上の賃上げでは、今年度のマイナス幅が少し小さくなくなる程度で終わる可能性もあります。

一方主要企業は収益好調で、日経平均はバブル期の38,000円を越えるだろうと言われています。日本経済の分配のアンバランスはすでに歴然です。

経団連の会長は、政党への寄付は企業の社会的責任と言われたようですが、従業員の賃金の適正水準化の方がより重要な経営者の社会的責任でしょう。

賃上げコストの「価格転嫁OK」というお墨付きも、公正取引委員会から出ています。去年今年の春闘は、「円安の場合の賃金決定はどうあるべきか」という特殊事情が背景なのです。

その点を確り認識し、経済理論に則った(大幅な)賃上げの実現を期待するところです。


政策金利当面据え置きへ、日米に事情?

2024年02月01日 15時19分55秒 | 経済

MOCを終えての発言が入ってきました。アメリカの政策金利は5.25-5.5%で据え置き、3月時点での利下げの可能性もほぼないという事のようです。

もともとアメリカで9%台を記録したインフレを抑えるための金利引上げだったのですが、消費者物価は順調に下がって12月は11月と同じ2.6%、アメリカ経済自身が作り出しているインフレともいうべきコアコア指数もかつての7%近くから11月の3.2%から12月は2.9%で順調に下がって来ているようです。

2~3%のインフレ率というのはアメリカでは当たり前で、FRBの2%目標というのは、いわば理想的な状態を目指すという事だと思っていましたが、パウエル議長は本当に2%でなければ駄目といった感じの執念でインフレ退治です。

一方アメリカ経済は、OECD予測のように金融引締めにも関わらず比較的順調で、雇用も、消費需要も堅調、経済成長率も先進国の中では上位、ダウ平均も今年に入って市場最高を更新し続けています。今回の決定で少し下げましたが、基調は確りでしょう。

財政だけは時々壁にぶつかりますが、それは議会で枠を広げれば対処可能です。国際収支は赤字でも、黒字国は日本をはじめ円安で高くなったアメリカ国債を買い、金融収支でアメリカに還流するのでしょう。

国際紛争対応で対外支出は多いのでしょうが、その場合はドル高の方が好都合ですから無理して金利を下げるより、いざという時のために下げる余地を残すという判断もあり得ましょう。

一方日本はどうかと言いますと、過日書きましたが日銀はゼロ・マイナス金利政策を当面続けるようです。アメリカと反対で、物価下がれば政策金利を挙げるという立場です。

しかし異次元金融緩和脱出の掛け声の中で登場の植田総裁も、政策金利引上げには慎重のようです。春闘の結果を見てとの発言もありましたが、最終結果が見えてくるのは6月頃でしょう。家計は金利引き上げ賛成でも、企業、そして借金まみれの政府、株高を維持したいマネー経済業界となると、金利引上げには勇気がいります。

ドル高を維持したいアメリカ、円安を維持したい日本、という大変奇妙な構図になっているようにも感じられます。

しかし、長い目で見た経済活動の健全化のための経済政策、金融政策を考えれば、アメリカは今年度中には政策金利を徐々に引き下げ、日本は逆にゼロ・マイナス金利から脱出して、健全な経済成長為見合う金利水準の移行しなければならない事は明らかでしょう。

それがアメリカにとって、インフレの再現に繋がるという恐れは小さいように思われます。兆候があればFRBは今回の経験から適切な政策を取るでしょう。経済成長が順調であれば、ドルの価値はそれに従って維持されるでしょう。今年1年が正念場でしょうか。

日本の場合も同様でしょう。物価の沈静、賃金水準の引き上げもあり消費需要が回復すれば、経済成長率は回復するでしょう。それに見合った金利水準の自然な経済状態にすることが今年の目標ではないでしょうか。

日米両国のインフレが2%程度になり、アメリカの金利が下がり、日本の金利が上がって日米の金利差が縮まれば、ドル安、円高に動くことは避けられないでしょう。その程度は解りませんが、2年前の円レート辺りが最終到達点でしょうか、$1=115円、これは単純に日米共にゼロ金利の時の水準です。

これでどんなことが起きるのでしょうか、今年は経済正常化への軟着陸に期待しましょう。


IMF経済成長率予測上方修正、日本は?

2024年01月31日 14時12分42秒 | 経済

IMF(国際通貨基金)は世界各国の液剤成長見通しの2024年1月版を発表しました。それによりますと2024年の経済成長率の見通しは昨年と同じ3.1%で、新興国・途上国の平均は4.1%で前年と変わらず、先進国平均は1.5%で昨年の1.6%より0.1ポイント下がりますが、昨年10月より0.2ポイント高く、2025年にかけて上向くという予測のようです。

以下先進主要国についての様子を見てみたいと思います。先進主要国はアメリカ、EUを中心に急激なインフレに見舞われ、その抑制のための中央銀行の政策金利の引き上げで、インフレ抑制には成功しても、経済を冷やし成長率は下げるとみてていました。

今回のIMFの見方は、金利の急上昇でインフレ抑制が早期に成功したため、経済のハードランディングが避けられ、実体経済への損傷が少なく得済む可能性が高く、昨年10月時点の見通しより改善しているという事のようです。(2025年は1.8%と上昇の見通し)

国別に見てみますと、下の図の通りで、アメリカ経済の強さが目立ちます。アメリカもユーロ圏も中央銀行が金利引き下げには、中々動けないようですが、リーダー格のアメリカのFRBが今日までのFOMCでどんな結論を出すかが注目されるところです。

    IMFの実質経済成長率の見通し(2024年1月、単位%)

             資料:IMF「2024年1月予測」

比較的順調なのはカナダでフランス、イギリスもインフレ対応の金融引締めが効いたようです。ドイツは極端な不振で、昨年はマイナス成長、今年も0.5%の低成長です。これはロシアとのエネルギー関係の不調で、国内エネルギー価格が異常に値上がりしていることが大きいようです。

余計なことを付け加えますと同じIMFの調査で、2023年のGDPで日本はドイツに抜かれ、世界4位に転落というのは、実体経済より円安の影響が甚大ということが解るのではないでしょうか。

日本の場合は23年度が1.9%と高く24年度が0.9%と下がっています。政府経済見通しでは23年度1.6%、24年度1.3%ですが、これはIMFは暦年、政府見通しは年度という事もありますが、昨年は円安、今年は多分円高という円レートの動きによる違いが出るはず(IMF統計はドル建て)ですから違って当然です(IMF予想は低過ぎ?)。

もしアメリカが利下げ、日本がゼロ金利脱出となれば多分円高が進むでしょうからドル建ての成長率は上がります。

こうした実体経済と関係ない事で国際比較は影響を受けますから、成長率は、先ず円建てで着実に成長する事が基本でしょう。

その意味では、今年は春闘の賃上げ率も高くなり、消費支出も伸びて経済成長が順調と期待されますから、政府経済見通しの前年度以下の見込みは情けない事で、何とか政府見通しを上回る成長率を達成したい感じです。

頑張れば、ドル建てのランキングも後からついてくるのではないでしょうか。


日本経済の動向と株価の2筋道

2024年01月29日 15時17分42秒 | 経済

昨年来日本の株価は大きく上昇して来ました。政府は、国民の資産形成は「貯蓄から投資へ」という事で2000兆円を越える貯蓄を、NISAなどで誘導して株投資に向け、日経平均を上げ、株価の上昇で資産形成を加速しようという考えのようです。

とはいえ、国民の個人貯蓄の半分は政府が国債発行で借りて使ってしまっていますから、その部分は使えないという事でしょう。

それにしても貯蓄額は膨大ですから、年初から株価が上がったのもNISA枠拡大のせいだなどという見方もあるようです。

以前から、貯蓄から投資へと言って、株投資を奨励して、人びとがその気になるのは株が高い時で、結果はピークの時に買って、下がって損する事が多いなどと言われます。

最近も、株価急上昇で、家内が株で1億円貯めたとか、日経平均はバブル時のピーク38000円を越えて40000円に行くという声もあるようですが、これからはどうでしょう。

株価の動向には大きく2筋の道があるようです。1つは実態経済が好調で、経済成長率も高く、企業収益も増益が期待される時で、これは、健全な株価上昇でそう。

もう一つは、マネー経済の事情で、実体経済とはあまり関係なく、主要国の金融政策や国際投機資本の動きなどで株価が変動する場合で、この場合はバブルやその崩壊も起きます。

勿論この2つの要因は、絡み合っていますから、判断は容易ではないでしょう。しかしそれぞれの要因について気づいていれば、それなりの役に立つのではないかとも思います。

という事で、問題は今の日本の急激な株価上昇について見てみますと、ネットでは家内が株で1億円貯めたとか、日経平均はバブル期の38000円を越えて40000円はいくといった話が飛び交う所は、すでにバブルの雰囲気もあるようです。

この所の株価上昇の大きな要因は、円安で、主要輸出企業の利益の急増、インバウンドの急増など、アメリカの金融政策(金利上昇)によるものもあります。これは現実に利益やインバウンドで売り上げ急増とかいう企業業績好転の結果です。

とはいえ、その原因はアメリカの金利引上げによる円安効果が大きいので、国際投機筋も、FRBの動き、日銀の動き、つまり日米金利差の動向につては極めて敏感、この所の株価の上下動はその反映ですから、実体経済の動きの反映とは言えないでしょう。

今年1年間ぐらいを見れば、日米金利差は縮小するでしょうから、円高になり、株価には下押し材料と見るのが当然でしょう。マネー経済面からは株価は下降予想です。

では上昇要因はと言いますと、今春闘の様相からすれば、賃上げ率は多少高まり、物価は低下傾向ですから、実質賃金はマイナスからプラスに転じ、家計には少し明るさが見え、それが消費需要拡大につながって経済成長が上向き(政府経済見通しは令和6年度の実質経済成長率は前年度の1.6%から1.3%に低下するとのことですが)、日本経済新時代へ一歩踏み出すといった実質経済の回復期待でしょう。

マネー要因は短期的視点のもの、実体経済要因は長期的視点です。さらに、アメリカは自国の都合で今後金利を下げ、日銀は「バブル→崩壊」は避けようとするでしょう。


「成長と分配」か「分配と成長」か?

2024年01月27日 15時01分01秒 | 経済

前回、国際収支の「第一次所得収支」(海外からの利子配当所得)は、海外進出した企業が海外で人件費を払った後の利益の配分だから、日本の従業員の人件費にそれを分配する必要はない、との考え方もあると書きました。

 この問題はかなり基本的な問題で、代表的には労使、つまり労働と資本の分配の最重要テーマになるところです。

何を分配するのかは、このブログの基本テーマである「付加価値」です。日本経済でいえばGDPあるいは国民総所得(GNI)です。

付加価値は人間(労働)が資本を使って生産活動を行って生み出したものですから、当然人件費(賃金)と資本費に分配されます。賃金は社長以下の人間(労働)に分配され、その生活を支えるだけでなく人間の知識や知的活動の高度化に活用されます。資本費は利益(配当や内部留保)や金利(借入資本に帰属)になって、企業成長のための設備投資やより高度な設備の開発の原資になります。

そして人間サイドの「知識や知的活動の高度化」と資本サイドの「設備やその開発資金」が組み合わされてイノベーションが起き、経済成長、社会の進歩・発展が起きるわけです。

 

ですから付加価値の分配では、国民経済、ひいては人類社会の「進歩・発展」が起きやすくなるような比率(人件費/付加価値=労働分配率)が望ましいことになります。

経済学的には、この進歩・発展は「経済成長率」で計測されます。

という事で、本来「付加価値の分配」は、将来がより良くないように分配するという事になるのでしょう。

しかし、分配論の歴史を見れば、「貢献度に従って分配する」という考え方が主流でした。蒸気機関が出来たから、輸送や生産の効率が大きく上り付加価値が増えた、これは蒸気機関のお蔭だから付加価値の増加分は資本家の利益になるべきだ。人間の仕事は楽になったから人件費は増やす必要はないといった経験などがそうさせたのかもしれません。

しかし世の中にはエッセンシャルワーカー、介護や教育などの対個人サービス、社会システムの維持などの仕事に従事する人が必要です。物理的な貢献度(仕事の内容)は昔とあまり変わりません。では賃金は上がらなくてよいのかというと、矢張り社会全体の経済水準の向上に従って上げなければならないでしょう。これは政治家や公務員も同様です。している仕事は同じでも先進国では報酬・賃金は高いのです。

典型的なのは家庭です。家計への貢献度は親が殆どですが、配分はより多く子供にために分配されます。

 

付加価値の分配というのは、貢献度への考慮と同時に、家庭から国まで、その人間集団の目的(経済成長や社会の安定)に沿って考えられなければならないのです。

この10年来、日本の分配は資本に偏り労働への分配が不十分でしたその結果、「自家製デフレになり」経営者サイド迄が「賃上げが大事」という事になりました。「成長と分配」ではなくて「分配と成長」、分配の適正化による成長の促進が必要だったのです。

仮令、海外投資の利子配当による収入でも、日本国の所得になれば、見本国の将来のために出来るだけ役立つように分配し活用しなければならないのです。

付加価値の分配の問題は、かように組織の命運に影響します。企業では経営者が、国では為政者が、それぞれ労使交渉や税制・社会保障で、それぞれに目的に照らして適正な付加価値の分配に責任を持つ立場にあるのです。


日本の国際収支の状況の示唆するもの

2024年01月26日 15時21分06秒 | 経済

労使が共に賃金を上げましょうという、世界にも稀な労使交渉をしている今春闘です。その春闘が、3月中旬の集中回答に向けて始まったばかりですが、マスコミでは、連合の要求をかなり上回るような賃上げをする・している企業の例が続々と紹介されえています。

従業員の事を考えてくれる良い企業という事になるわけですが、それだけ収益が出ていたと考えると、この所の企業収益の高さと賃上げ率の低さが、経営者サイドにも解っていたという事にもなります。矢張りここで労使配分の是正が必要なのでしょう。

前回賃金の上げ過ぎかどうかは、国際収支の状況で判断出来ると書きましたが、そのアタリが今の日本ではどうなのかという点を今回は見ておきたいと思います。

財務省の「国際収支統計」で明らかですが、考え方は基本的には、家計も財政も国際収支も同じで、月々、年々の収支、つまり「経常収支」が「赤字に続き」になったら、要注意という事です。

経常収支の項目は、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支、第二次所得収支です。貿易収支は「輸出-輸入」、サービス収支は特許、映画や興業などのロイヤルティーの収支、第一次所得収支は、海外進出企業の利子配当などの収支、第二次は海外援助などです。

下の図は、経常収支とその主要な構成要素の貿易収支と第一次所得収支を並べてみたものです。(サービス収支はいつも多少のマイナス、第二次所得収支はマイナスのみです)

     経常収支、貿易収支、第一次所得収支の推移(単位:兆円)

                 資料:財務省「国際収支統計」

先ず、経常収支(青)を見て頂きますと、リーマンショック前の2007年から2022年までずっと黒字です。日本は万年黒字と言われる所以です。2012年~14年は黒字幅が小さくなっていますが、これは貿易収支の赤字が大きかったせいで、その後は年20兆円(GDPの4%程度)ほどで安定です。2022年の黒字が減ったのも貿易収支の赤字のせいで、23年もその傾向は続きそうです。

次に貿易収支(茶色)で、これは日本製品の国際競争力の強さを示しますが、殆どの年は黒字です。2012年~14年と2022~23年は赤字ですが、この2つの時期は原油価格の上昇と急激な円安が重なった時期です。昨年の貿易収支は先日発表になったばかりですが、今年には黒字転換かという解説もついていました。

こうした長期の推移から見れば、日本の貿易収支は黒字基調と言えるでしょう。

3番目の第一次所得収支(緑)は、ほぼ一貫して増加傾向で、この所の増加は急ピッチです。理由ははっきりしていて、アベノミクス以来円安になりましたが、円建ての収益の向上と異次元金融緩和で、資金が豊富になり、成長しない国内より海外投資を指向する企業が増え、海外投資の成功に円安も重なり海外からの利子配当の収入が拡大したことによります。

企業が国内投資より海外投資を進めた結果、国内の事業は伸びず、GDPも伸びず、その分第一次所得収支が増えたという事でしょう。

第一次所得収支は、海外で人件費を支払った後の利益の分配ですから、国内でまた人件費に配分する必要はない、という理解で賃上げの原資にはしないという考え方もあったようです。

利益が増えても賃金は上がらなかったという現実の背後には、そんな考え方もあったのかもしれません。(この考え方の適否は、また別に論じたいと思います)

いずれにしても、万年赤字のアメリカと反対に万年黒字の日本ですから、多少賃金コストが上がったからと言って、みんなが真面目に働けば、国際収支の天井にぶつかるような事は今の段階では心配なさそうです。


問題の「人件費・原材料費の価格転嫁」とは?

2024年01月25日 15時45分22秒 | 経済

昨日今日、経団連の「労使フォーラム」です、マスコミは「春闘のキック・オフ」と言っていまいます。

今年は、労使が共に賃上げの必要で一致していて、連合は5%以上、経団連は昨年以上と言い、十倉会長は「働き手への還元は経営者の責務」と言っています。こんな発言はかつての日本的経営理念全盛時代を彷彿させます。

加えて特に中小企業の賃上げや非正規の賃上げの必要性についての議論が盛んになっています。特に中小企業の大多数を擁する日商の小林会頭は、中小企業にとって、人件費・原材料費の価格転嫁は不可欠と言っています。

今回は、この人件費などのコストの価格転嫁について整理したいと思います。輸入原材料の価格が上がったから納入価格が上がりましたというのは通り易いのですが、「従業員の賃金が上がったので」というと「君のところの賃金上昇分をウチに払えと言うのか」などと言われえそうで・・・、ということになりそうですが、親会社はそう言ってはいけない、「解った、その分の価格引き上げは認めよう」と言いなさいという事です。

それだけではありません。今の話が3次下請けと二次下請けの間の事だとしますと、その二次下請けは1次下請けのところへ行って、「うちも賃上げをしてコストが上がりました。うちの下請けも賃上げをしてコストが上がったので、それは見てやりました。その分は材料費に含まれています。それにプラスしてウチの賃上げ分がこれだけです。原料費の上昇とウチの賃上げ分の両方を見て頂くことになりますが宜しく」となります。

第一次下請けは親会社の所に行って、同じような説明を3段階分することになります。図式的に言えばこうなるわけです。

という事で経団連や日商が言うように、大企業(親会社)が率先して値上げを認めないと中小は価格転嫁が出来ないから、大企業が率先して理解する事が大事となるわけです。

こうして結局日本の物価水準が上がります。しかし「今の日本」ではそれでいいのです。理由は、これまで日本の中小企業は、人件費が上がっても価格転嫁が難しく、結局賃上げを抑えて価格を抑えてきました。それが長く続き、その上に、円安になって、日本は世界でも物価の安いという事になりました。当然賃金も割安の国になっているのです。

お陰で企業の利益は結構増えてきました。今、経団連や日商が「企業としても賃上げが必要」といっているのは賃金レベルが低くなり過ぎて消費者が節約志向で消費が伸びない。それでは企業も困る、という状態になっているからです。

そうした中で積極的な賃上げをすれば、国内の消費需要も増えて、デフレ脱出、経済成長に貢献し、国際的には多少物価が高くなっても、競争力は十分確保できるという、企業も消費者(従業員)ともに喜ぶという事になるのです。

勿論、こんな状態は国際的にも極めて稀なものですから、いつまでもこんな事は出来ません。賃金が上がれば物価が上がって国際競争力が落ちるから賃上げは程ほどにというのが何処の国でも当たり前の状態です。

元はと言えば、円高で徹底して賃金を抑えた時代が長く、それが習慣の様になって、円安になっても賃金を上げなかったことが大きな原因なのです。

ですから、当面、春闘では大手を振って賃金を引き上げましょう。そして、賃金水準が国際的に見て「まともな水準(注)」になったら、それからは、生産性が上がった分に添った賃上げにするという、経済状況への柔軟な応が、本当は一番重要なのです。

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(注)この判定はかなり難しいものです。多分経営者が、賃上げを奨励しなくなる事で解るでしょう。客観的判定は、国際収支のバランスで決まるのです。


日銀の目指す方向が次第に明らかに

2024年01月23日 16時41分01秒 | 経済

昨日の植田日銀総裁の記者会見のニュースから、これから日銀が進めようとしている金融政策の方向が次第に見えてきたような気がします。

前任の黒田総裁が10年の在任期間中「異次元金融緩和」一本で過ごした事に政府が不満ぞくといった雰囲気がある中での登場となった植田総裁です。しかしその後もゼロマイナス金利政策は変わらずでした。

ゼロ金利という非常時対応の政策をいつまでも続けることは不可能ですから、いつかはゼロマイナス金利脱出、いわゆる出口政策に踏み切ることになるはずです。

それが遅れに遅れているのは、日銀のせいではなく、政府の財政政策を含めた経済政策が、見当違いだったからでしょう。

金融政策はあくまで経済活動の潤滑油のようなもので、油が切れれば機械は動きませんが、油をさしたからといって、機械がその性能以上に動くわけではありません。

日本経済は、余り上手くない経済政策の下でしたから油をさしても、この程度だったということでしょう。

溢れた油が実体経済に行かず、株価を上昇させるといった副作用もあって、一見経済が良くなったような感じを齎したりしていますが、その評価は今後されるでしょう。

政府の経済運営の下で、企業や労組、消費者つまり民間サイドが、政府が掲げる「決める政治」の裏まで見てしまい、「民間がやるしかない」となったのが昨今の状況でしょう。

民間が本気になることは大変結構なことで、経団連まで賃上げをしよう(分配構造を変えよう)と言い出すのは労使関係上はじめてでしょう。植田総裁もそれを見て、いよいよ日銀も動く時期だなと感じたと思います。

こうした場合2つの選択肢があります。1つは、多少無理があっても急ぐべきだという道、2つは、世の中良い方向へ動くなら、なるべくその動きに乗って、一歩一歩着実に、出来るだけ波乱を避けてという道です。

植田総裁は後者を選んでいるようです。物価は今年春には長年の懸案の2%台に下がりそうだ、実質賃金もプラス転換する可能性が出て来た、国民の消費意欲も改善の可能性もある、政府も少しは反省するだろう、日本経済の回復への明かりが見えれば、ゼロマイナス金利の必要もななくなる、民間中心の自然な動きをよく見て、政策を打とう・・・。

出口政策を急いで、円高にしたり株価を下げても民間のやる気にマイナスになるだけではないか。急いては事をし損じる・・・。

勿論これは憶測です。

植田総裁は着実派のようです。岸田さんは「成長と分配の好循環」と言いますが意味ははっきりしません。植田さんは「賃金と物価の好循環」、具体的ですし、今春闘等に直結です。そして「それが実現する確度は少しずつ高まっている」といった慎重な物言い、更には、中小企業の賃上げの重要性に確りと言及している点、「3月の次回会合までにはデータや情報がもう少しはっきりする」という実態の動き重視の姿勢です。

これを4月には出口政策に動くと読んでいるマスコミもありますが、日銀の行動は現実の実体経済活動の動き次第でしょう。

国会が始まりましたが、国会のゴタゴタが、こうした民間経済の流れを邪魔しないように願いたいものです。

   


2023年12月全国消費者物価も沈静傾向

2024年01月23日 10時24分19秒 | 経済

1月の10日に全国消費者物価指数の先行指標と言える東京都区部の消費者物価統計で、消費者物価の沈静傾向を確認しました。

アベノミクス以降、消費不況の中で値上げできなかった生活必需品部門の遅れた値上げがコロナ明けで波状的な一斉に上げの波となり、自家製デフレの中で異常な値上げが続きましたが、その値上げも一巡、これで不況下の物価上昇という異常事態、結果の20カ月連続の実質賃金の前年比低下も終息の時期に向かうかという重要な転換点を出来るだけ早く確認したかったからです。

結果は予想通りのなりましたが、先日19日には全国の統計も発表になり、基本的の同様な方向が確認されました。紹介が少し遅れましたが、折角例月続けてきた消費者物価の動きのグラフを、矢張り載せておくべきと思い、、説明は繰り返しませんが。沈静傾向がはっきりのグラフを載せることにしました。

    消費者物価3指数の動き(総務省統計局「消費者物価指数」)

 

    消費者物価3指数の対前年上昇率(出所同じ)

どちらのグラフでも、緑の線の「生鮮とエネルギーを除く総合」いわゆるコアコア指数、過去2年近くの実質賃金押し下げの主因の沈静傾向が明らかになってきました。

今後の消費者物価の上昇は、人件費(賃金)上昇の価格転嫁が主因となるでしょう。しかしその影響は、便乗値上げが無ければ、人件費上昇率の半分強のはずですから、実質賃金低下にはならないはずです。

その他国内物価に影響を与えるのは、国際資源価格の変化と円レートの変化です。国際資源価格は日本の力ではどうにもなりませんが、円レートの方は、政府・日銀の努力で上手に対応してくれるよう願いたいところです。


株価、物価、実質賃金、経済成長・・・

2024年01月19日 12時36分31秒 | 経済

日経平均の上昇は海外投資家の買いに支えられて急上昇、国内投資家の利益確定売りで1、2日の踊り場の後、また今日は大幅上昇のようです。証券関係の専門家の中には、バブル期の38000円を越えて42000円ぐらい迄行くといった元気のいい意見も聞かれます。

しかしいずれFRBは利下げに動き、日銀もゼロ金利脱出に動くとなれば、日米金利差の縮小で、為替レートは円高に動いて輸出企業の差益は消える可能性が大きいでしょう。

企業収益の改善は、企業の努力結果というのが正常な状態ですから、日米経済の正常化というのは株価にとっては現状の「浮利」が消えるというマイナス要因になる可能性をはらんでいるようです。

 

但し実体経済の原則として、円高になればそれは国内物価にとっては低下要因です。既に先日の日銀発表の企業物価の12月の対前年上昇率は0.0%になって、輸入物価の値下がりを追いかけています。しかも昨年から続いた消費者物価の調理食品、加工食品、飲料、調味料からトイレットペーパーに至る生活必需品の一斉値上げの動きもこの所終息傾向が明らかですから、消費者物価上昇率は昨年の3.1%をピークに次第に落ち着くでしょう。

政府も経団連も今年は本気になって、賃上げ分の価格転嫁の促進を言っていますから、その分の消費者物価の上昇はあるでしょう。

しかし賃金上昇が消費者物価を押し上げるのは、雇用者報酬がGDPの半分強ですから、生産性にの上昇を上回った賃上げ分の半分強が消費者物価の上昇になるとうのが、便乗値上げがない場合の賃金と物価の関係です。

春闘賃上げが昨年プラスXになっても生産性向上もあるでしょうし、それほど大幅な消費者物価の上昇にならず、消費者物価は政府・日銀の目標の2%に向かって上昇率を下げていくという所でしょう。

 

結果的に、今年の早いうちに、昨年12月で20カ月連続になった実質賃金の対前年低下の記録も終わるのではないかと考えます。

労使関係という意味では長期不況に悩まされた長すぎた記憶が、日本的労使関係に歪みを与えた結果の、世界にも例を見ないような長期の「自家製デフレ」現象も多分消滅して、労使の付加価値配分関係も、正常化に向かっていくのではないでしょうか。

その結果は経済成長率が急にはあがらなくても、国民所得の6割以上を占める個人消費が、勤労者世帯の「平均消費性向」の回復と共に軌道に乗り、社会全体の雰囲気も変わってくるのではないでしょうか。

 

賃上げ率の改善は、昨年以上となるでしょうし、遅れていた生活必需品の一斉値上げの時期も過ぎ、消費者物価の安定と相まって実質賃金が前年比プラスになって安定すれば、それはそのまま実質経済成長率のプラスの要因になるわけです。そしてそれはバランスのとれた日本経済の正常な成長路線に繋がるでしょう。

多分、放っておいてもこうした傾向に自由経済の復元(バランス回復)力で進むはずですから、先ず労使がマクロ経済のバランスについての相互理解を進め、政府は、そうした安定状態を破壊するような為替変動、更には物理的な戦争状態に入るような事を避けるよう徹底した努力をすることを肝に銘じてほしいと思うところです。

それが「国民の生命と財産を守る」という政府の最も重要な役割の具体策でしょう。