昨日発表の「家計調査」で、昨年12月の勤労者世帯の実収入(名目値)は前年比マイナス4.4%、更に、毎月勤労統計では名目賃金指数(同)が1.0%であることが解りました。
この違いの原因については昨日も触れましたが、常識的には両方とも勤労者の賃金水準と理解されるでしょう。定義も違えば、カバレッジも違いますから違って当然ですが、どう考えても、昨春闘の賃上げ率3.6%とは大分違います。
これも勿論定義の違いカバレッジの違いという事でしょうが「日本の賃金が上がってきた」と感じられるような状態というのは、数字の違いがあっても、どの統計も、それなりに上っている状況になる事が必要なのではないでしょうか。
毎月勤労統計の年平均の上昇率は1.2%ですが、最も頼りにすべきこの統計にしても、上昇率は、30年ぶりの高い伸びと言われた春闘賃上げ率の3分の1です。
毎月勤労統計の賃金指数の上昇率を月毎に見たのが下図です。
賃金指数の対前年上昇率(月別、%)
資料:厚労省「毎月勤労統計」
春闘直後の5月6月が高いのは、賃上げの遡及支払のせいでしょうか(?)。その後は1%を超えたのが3ヵ月1%未満が3カ月です。これでは2~3%台の消費者物価の上昇率にはとても及ばず毎月実質賃減は対前年比で減少でした。
ところで、連合の要求は「昨年以上」ですし、経団連会長も「昨年以上の賃上げが望まれる」と発言されています。
「以上」という言葉は微妙ですが、専門家へのアンケートの平均は確か今春闘は3.8%でした。前年「以上」には違いないのですが、消費者物価上昇率が2%以下に下がっても「対前年実質賃金の増加」確実にはなりそうにありません。
去年よりいくらかでも良ければいいじゃないかでは済まないのが今年の春闘ではないでしょうか。
今年は2013~4年の円安、更には昨年からの円安で、日本の賃金(賃金コスト)が国際的に最も低くなった時期です、企業利益は快調で、株価はバブル期突破などと言われています。
此処でちょっと「家計調査」の平均消費性向を見てみましょう。過去3年の平均値(月数字の単純平均)2021年67.5%、2022年68.7%、2023年68.9%と、長期に低下・停滞していた2人以上勤労者世帯の平均消費性向が2022年から上昇に転じています。
原因はコロナ明けもあるでしょうが、長~い緊縮生活から脱出しようというエネルギーが社会情勢だけでなく統計からも感じられるところではないでしょうか。
今春闘は、賃上げ自粛(?)のお蔭でで長かった「自家製デフレ」からの脱出を国中の世帯が望んでいるという賃上げの効果を最大限にするチャンスではないかと感じています。
労使が共に思い切った賃上げに踏み切ることで日本経済が明るさを取り戻せるベストの時期でしょう。それに成功して初めて労使が切望する「継続的な賃上げ」が可能になるのではないでしょうか。
「継続的な賃上げ」は、活発な消費需要にも支えられた、日本経済の安定した均衡成長の結果でなければならないからです。