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tnlabo’s blog   「付加価値」概念を基本に経済、経営、労働、環境等についての論評

人間が住む地球環境を、より豊かでより快適なものにするために付加価値をどう創りどう使うか。

物価は内外ともに安定傾向か

2024年01月17日 15時06分28秒 | 経済

今日、日本銀行から昨年12月の輸出入物価と企業物価が発表になりました。企業物価の対前年同月比が2枚目の図のように0.0%になっていますので、マスコミでは「企業物価安定」という見出しが多いようです。

2021年あたりから、原油をはじめ国際資源価格が急上昇し、それによる輸入物価の上昇から国内の企業物価、消費者物価に影響が強まり、ほぼ3年に亘りインフレ傾向が強まった物価問題も、昨年からの資源価格の下落、アメリカ、ヨーロッパでは中央銀行の強力な金融引き締め政策で落ちついて来たようです。

原油価格は産油国の思惑もありますからなかなか安定しない面もありますが、長期的に見れば、再生可能エネルギーの急速な進展状況もあり、何とか安定したものになることを願うところです。

下のグラフで見ますと、日本の輸入物価も3年前に比べ一時は2倍近くになりましたが、この所は50~60%の上昇で落ちつきそうな形で、そのうち20%以上が円安によるものですから、今後日米金利差の縮小などがあれば、円レートも110円程度の円高の可能性もあり輸入物価の沈静は続くでしょう。

     主要3物価指数の推移(消費者物価は東京都区部速報)

                 資料:日本銀行、総務省

その動きは当然企業物価にそして消費者物価に影響してくることになるでしょうから、円レートの面からも物価安定傾向は出て来るという事になりそうです。       

下の対前年同月比の動きで状況を見れば、昨年夏には輸入物価はー14%で底を打ちその後の上昇は円安による部分も大きいと思われます。企業物価は上昇率が年10%を超えていた時期から。昨年秋には消費者物価の上昇率を下回り12月は0.0%まで下がってきました。

   主要3物価指数の対前年同月上昇率(%)

                資料:上に同じ

もともと、卸売物価(今の企業物価)は消費者物価より上昇率が低いというのが、日本経済では普通の状態で、今後賃金上昇率が上がり輸入物価が日銀の目標の2%程度で安定すれば、それが正常の姿という事になって行くのではないでしょうか。

低成長の中で、消費者物価が上がり、実質賃金が20カ月連続で対前年同月比マイナスなどという異常な経済・物価の状態は、次第に正常な経済活動の日本経済に変わって行ってほしいと思っています。

こんな異常な物価賃金の関係なったのも、国際価格の高騰はあったものの、国内の経済政策、労使の賃金決定の方法がそろって変則的なものになっていたという事ですから、今年は春闘の賃金決定も含めて、経済正常化に向かう年になって欲しいと思うところです。

多分そうなれば、経済成長も自然に付いてくるのが経済の原則のようなものだと考えて、日本経済の回復を期待するところです。


日本GDP , ドイツに抜かれ世界4位に

2024年01月16日 12時32分25秒 | 経済

今朝の新聞テレビは一斉に世界3位の日本のGDPが2023年にはドイツに抜かれ4位になるという予想を報道しています。

このブログでは、昨年11月16日付の記事で、IMF(国際通貨基金)が2023年の各国のGDP推計で日本がドイツに抜かれで4位という数字を出している事を取り上げましたが、そのあたりの確実性が高くなったので一斉に報道となったのでしょう。

1969年日本はドイツを抜いて世界第2位の経済大国となりましたが、その後2010年に中国に抜かれ3位に、今度はドイツに抜き返されて4位という事です。

中国に抜かれた時には「人口が10倍だから1人当たりのGDPは日本の10分の1」などと言ってあまり気にしていませんでした。

ドイツとは、いわば抜きつ抜かれつというところで、拮抗していますので気になるという事でしょうが、2023年でドイツに抜かれるという最大の原因は、為替レートでしょう。

2年前までは$1=110円程度でしたが、この所は145円前後であまり動きません。IMFの国際比較は勿論ドル換算ですから年平均140円としてもその間日本のGDPは2割以上減ることになります

ドイツの場合はユーロですから、ドル対ユーロは1.1前後でそれほど大きくは動かないし、ユーロ高の場面もありますから日本の円安継続とは違うでしょう。

マスコミでは、ドイツのインフレがGDPを押し上げたとの説明もありますが、これはインフレの進行で政策金利を引き上げた結果のユーロ高のためという事になるようです。

日本もインフレになりましたが、日銀がゼロ金利を据え置いた結果の円安で、ドル建てのGDPが減ったという事になるわけです。

そんなことで、日本のGDPが4位に落ちたら、実体経済を上向きにすれば、順位はついてくるという事で、実体経済の再建に頑張ろうというきっかけになるようにマスコミがみんなに発破をかけたと受け取りたいと思います。

これを機会に、順位の下がりつつある賃金水準も、今春闘で民間労使が協議しで積極的に引き上げ、民間消費需要主導でGDPを拡大、消費と投資のバランスのとれた成長経済を実現するよう、少し元気の出て来た民間労使の気力と実力で日本経済の構造を変えていけばGDPの規模も世界のランキングも、結果はIMFがきちんと報告してくれるでしょう。


OECD日本経済報告書、適切な指摘多く

2024年01月12日 15時00分24秒 | 経済

OECDはこのほど日本経済についての報告書を発表、その機会にコーマン事務総長が来日、昨日都内で記者会見を開いています。 

OECDには専門分野を持つ日本人スタッフもいて、このブログでも時に引用する加盟国の経済統計など役に立つ情報を提供してくれています。

今回の報告書は経済の諸分野をはじめ人口問題、雇用問題、環境問題、など関係分野にも触れて適切な解説や助言などを含んで、日本として注目すべきポイントも含まれています。

その中でもいくつかの注目すべき点を取り上げてみました。

第1はコロナによる経済への打撃です。これについては、OECD加盟職に較べて、落ち込みは多少軽かったようですが、その後の回復が遅れている点を指摘しています。確かにマスクの取扱いや5類への移行について慎重だったという感じはありますが、回復のスピードは今後の政策次第でしょう。問題はこれからいかに頑張るかでしょう。

第二は金融政策です。OECDがこの所の物価上昇は一時的で早晩沈静とみているようです。これは当たりでしょう。その上で、金利政策について2%インフレを前提に、もっと早く金利政策の転換に動くべきだという指摘のようです。

確かに日銀は、賃上げが低い中での物価上昇なので、金融緩和を続ける必要を強く認識して来たようですが、早晩2%への正常化が予想されるのであれば、早目に金利引き上げに動いてもいいのではないかという政策論も成り立つでしょう。そうしてしていたらどうなっていたかを考えるのも大事かもしれません。

第三は財政赤字の巨大化の問題です。OECDは日本の突出した赤字財政は危険と指摘し、補正予算を安易に積み上げるのは良くない、原油などの輸入企業に補助金を出すの早くやめるべきで、必要な財源は消費税の漸進的な増税で確保すべきという考え方です。

これは日本政府のやり方、何かあるとすぐに補助金を出して票に繋げようとする事の不健全性を暗に指摘しているのでしょう。

原油が値上がりすればその分は末端価格に素直に反映させて国民がエネルギーの値上がりを実感し、対応を考えるという経済原則に沿った行動が重要という意味で、このブログでも安易な補助金は不適切と考えているところです。

財政の健全化についてはコーマン事務局長の記者会見で強く指摘しているようで、OECDの中でも突出した赤字財政には警鐘という所でしょう。

その他、高齢化と労働力の有効活用については定年制の問題なども取り上げていますが、これは日本の特殊事情ですから、日本自身が適切に誤りない対応策を取るべく努力している所でしょう。

嘗ては日本的経営に関心を持ち、プラザ合意以降は円高に苦しむ日本の実情を統計数字で示してくれたDECDです。

日本も積極的に協力しつつ活用できる組織として、その意見は真摯に傾聴すべきではないかという感じがします。


株価上昇はバブルの兆候、実体経済の重視を

2024年01月11日 14時35分05秒 | 経済

この所の日経平均の動きは些か異常ですね。大発会でご祝儀相場かと思ったら暴落、翌日から急激に持ち直し、その後は急上昇の一本調子、きょう11日には35000円を突破という上昇ぶりです。これで日本経済も回復などという意見もあるようです

昨年から、いずれバブル期のピーク38000円台達成も、といった声はありましたが、まあ話半分と聞いていた人が多かったのでしょうが、この所の勢いならと感じた人も多いかと思われます。

専門家筋の解説では、ダウ平均の上昇に対して日本は遅れすぎているとか、円安がプラスしているとか、昨日のダウの上昇を受けてとか、更には、NISAの枠が広がったので「貯蓄から投資へ」の動きが出たとか、その証拠には素人にも解り易いトヨタが上げたとかいろいろありますが、それにしても急ピッチです。

大体日経平均はダウの後追いとか、外国投資本の意向で動くことが殆どのようですが、今回もやはりそんな背景でしょうか。

昔は株式市場は実体経済の先行指標などと言われたものですが、今はマネーマーケットはマネー事情で独自に動くようですから、日経平均の急上昇が、これからの日本経済の順調な回復の先行指標などとはとても言えないでしょう。

いろいろ考えてみますとやはりアメリカ経済との関係が背後にあるような気がします。

今アメリカは不況感になって来たようです。なのに、FRBは金利を下げようとしません。お陰でドル高・円安です。おそらく、ドルの価値を高く維持したいのでしょう。

アメリカがドル価値を高いドルを目指す時は、アメリカがおカネを使うときです。外国から資源・材料などの物を買う、更に対外援助をしなければならない時はドル高の方が好都合でしょう。

アメリカにマネーが流入してくれないと、という事情もあるでしょう。このPCにもドル投資の勧誘広告が入ってきたりします。

日本のマネーがアメリカに流入する事はアメリカにとっても好都合でしょう。ちょうど日本政府も「貯蓄から投資へ」と宣伝しています。日経平均が38000円台を記録したバブル期、日本経済がバブル崩壊から立ち直りを見せたリーマンショック前を思い出します。

ここまで言うと、些か行き過ぎた観測と言われるかもしれませんが、そう感じさせるほどに、異常な日経平均の上昇です。

この動きがどこまで続くかはわかりませんが、いずれにしても、実体経済と関係ないバブルに入って来ている事は確かでしょう。

バブルは、始まるとまだ続くという心理状態を生み出すようですが、同時に、人はバブルは必ず崩壊するという知識もどこかに持っているはずです。

マネーの世界は結局は仇花の世界です。国民の生活を支えるのは矢張り実体経済です。具体的には実体経済の成長、賃金と物価の関係次第ですし、企業にとっては、株価や時価総額ではなく、実体としての生産販売活動がどれだけ伸びるかに依存しているのです。

政府も国民も、日経平均の急上昇を喜ぶよりは、実体経済の建て直しこそが重要という視点を忘れないでほしいと思うところです。


東京都区部消費者物価、2023年12月沈静傾向を示す

2024年01月10日 14時29分23秒 | 経済

消費者物価際数については例月20日過ぎの全国消費者物価の発表のデータを使って動向の把握をしていますが、今月は発表の早い東京都区部の消費者物価指数の発表(昨日)の2023年12月の数字を全国の先行指標として取り上げました。

このブログでは消費者物価指数の上昇が問題になった2021年からの消費者物価の動きを例月チェックしていますが、長い間、黒田日銀の頃から日本銀行が待望していた消費者物価の沈静が実現の段階に入るかどうかが最近の注目点でした。

この所の動きを見ている中で、そろそろ消費者物価の上昇もピークを迎え沈静に向かうのではないかとこの2か月ほど指摘して来ていますが、11月の東京都の区部の発表を見てピークは越えたという感じを強くしましたんで、あえて都区部の速報値を取り上げました。

結果は、下図の通りです。

    東京都区部消費者物価指数の対前年同月比の動き(%)

           資料:総務省統計局「消費者物価統計

例月の全国指数の場合と同様「総合」、「生鮮食品を除く総合」、「生鮮食品とエネ絵ルギーを除く総合」の3指標を取り上げていますが、因みに原指数の動き見ますと1年前の昨年2022年12月は104.0でそれからもじりじり上昇を続け2023年10月の106.8がピークとなった感じです。その後は11月106..5、12月も同じく106.5です。

総合指数はあまり下がっていませんが、前年同月上昇率を見ますと上昇スピードの鈍化がはっきりしています。

特に注目していますのは、緑の線の「生鮮食品とエネルギーを除く総合」の動きです。一昨年来の消費者物価の高騰はこの指数の上昇によるところが大きいのです。

この中身は、いわゆるコアコア部分で、加工食品、調理食品、飲料、調味料などからトイレットペーパーなどの生活必需品で、嘗て消費不振で値上げ出来ずに苦しんだ部門の一斉値上げによるものです。この部分が9月頃を境に鎮静化して来た事が大きいのです。

海外物価の沈静、下落傾向を考えますと、日本の消費者物価上昇も、いよいよ終わるという感じになってきたと感じる理由です。

海外物価の高騰が無ければ、またこれ以上の円安がなければ物価も徐々に正常化し、迫る春闘の賃上げも確実ですから、日銀のゼロ金利脱出、いわゆる出口政策が動くでしょう。さてそうなると、それによる、円高、コストアップの可能性はどうなのか、日銀の舵取りが注目されるところです。


平均消費性向2023年11月は低下

2024年01月09日 13時44分02秒 | 経済

平均消費性向2023年11月は低下

今朝、総務省統計局から「家計調査」の家計収支編11月分が発表になりました。早速勤労者世帯の平均消費性向を見てみますと前2か月は対前年比上昇に転じていたのに、残念ながらまたマイナスに戻ってしまっていました。

世界情勢多事多端の中でも、日本経済は長期不振だった消費支出の堅調で何とか元気さを取り戻してほしいと思っているところですが、消費者心理は揺れ動いているようです。

     勤労者世帯の平均消費性向(%)の動き

          資料、総務省統計局「家計調査」

消費の動きの大勢をを示す「2人以上世帯」の消費支出の動きは、マスコミの報道にもありまうように、対前年同月の実質消費支出の伸びは消費者物価の上昇で19カ月連続マイナスですが、一昨年あたりからコロナの終息もあり堅調さを見せてきました。

しかし昨年に入って消費者物価の急激な上昇を受けて節約志向に入ったり、堅調を取り戻したりの気迷い症状のようです。

11月は10月の生活関連物資の一斉値上げなどもあり、それでも頑張って消費を伸ばすかとみていましたが、年末を控え、少し節約かといったところのようです。

ただ11月には、消費者物価の動向が、これまでの上昇一途といったところから、これからは物価も落ちつくのではないかという感じへの変化が見られています。

更に、年末には今春闘についての昨年より高い賃上げという声が労使ともに聞かれ、金属労協や基幹労連大幅賃上げ要求基準設定などもあり、2024年の賃金上昇への期待感も高まっているようです。

11月のムードから年末にかけてのこうした変化で歳末商戦もそれなりの水準になったようで、基調的には消費意欲は腰折れしないという方向にあるように感じられます。

物価が少しずつでも沈静化していけば、平均消費性向は上がらなくても、実質消費水準は上昇しますから、これは家計にとっては朗報です。

10月までの生活物資の大幅上昇については、少し上げ過ぎたという反省もあるようで、消費不振を招かないようにと実質値引きのセールも見られるようになっています。これから年末年始にかけての物価と消費支出の関係から目が離せないところです。

気になるのは、毎月勤労統計では平均賃金は前年比1~2%の上昇ですが、家計調査の勤労者世帯の「世帯主収入」が名目値でも対前年でマイナスを続けている事で、これは小規模・零細企業の実態が含まれるためとみられますが、これも今後の注目点でしょう。


主役だれ? 明日の経済 年の暮れ

2023年12月30日 14時01分20秒 | 経済

政治の泥沼を這いまわっているニュースの中ですが、経済面では、昨日今日のニュースは、「2023年、日経平均は28%上昇」というのがトップのようです。

確かに株は上がりました。しかし株価が上ってもGDPが増えなければ日本人の生活はよくなりません。ウォーレン・バフェットが日本株を囃して海外の日本株買いがあったり、アメリカの金利引き上げで円安になり為替差益で潤ったりしましたが、来年は円高のようです。

日本の実体経済は相変わらず停滞のまま年を越すことになりますが、過ぎたことは仕方がないとして、その中から学ぶべきことを学び、来年に生かしてこそが発展のプロセスでしょう。

その意味で大事なのは、アベノミクス以来の、何でも政府が主導し、政治分野では、野党はその欠陥を突くことでけに専念し、自分たちが政権を取ったらどんな日本にするかという一番大事な主張を忘れているのではないかといった問題があります。

そして経済分野では、政府が赤字国債を原資にいろいろな補助金や給付金を出すのに迎合し、もっと手厚くと言ったり、雇用や働き方まで政府が指導したりで、民間産業の自立、労使の協力が基本といった民間の自主性や気概の希薄化が顕著の様に思われます。

嘗ては民営化が大きな課題でしたが、これは産業の発展には民間の自主性と自立が大事という基本に基づくものでしょう。経済は官営では上手く行かないのです。

そして、産業の自主・自立にさらに踏み込めば、SDGsの理念に基づく付加価値生産性の向上こそが産業の使命であり、その実現のためには、生産性向上を実現する労働と資本の組み合わせ、そのベースとなる労使関係、就中、賃金決定が重要なのです。

その賃金決定についてまで、政府が発言し、それに影響されるようでは、産業の自立は望めません。

戦後の日本産業の発展は、試行錯誤を繰り返しながらも、労使がその立場を主張し、付加価値生産性の向上と、労使の分配関係ありかたを、年々の春闘の経験の中で積み上げ、その成果で、欧米がスタグフレーションの呻吟する中、「ジャパンアスナンバーワン」と言われるまでになっているのが日本の経験です。

この成功は「プラザ合意」の円高により一挙に突き崩されました。それから約30年、黒田日銀による円レートの正常化でようやく円レートは正常化されました。

残念ながら、円レート正常化にも拘らず、その後のアベノミクス流の政府主導方式が、円高対策で疲れ果てた日本産業界の自主性回復を阻害する事になってしまいました。

昨年に至って、長らく失われた産業界の自主性回復の動きが出て来たようです。パッチワークばかりの政府に愛想が尽きたのか、コロナ終息で元気が出たのか、矢張り産業界、産業労使は自力で経済・産業活動を回復すべきという雰囲気が感じられます。

消費者物価を押し上げている一斉値上の動きも、その表れでしょう。これに対して労働組合の賃上げ意欲の高まりも生まれつつあります。

これを単なる労使紛争でなく「労使こそが産業の発展を担う原動力」というより高邁なレベルに引き上げる(かつての日本の労使関係を思い起こす)動きも見えるようです。

来年の日本経済は、こうした動きの進捗に支えられた新時代の動きの出発点にしたいものです。


2024年度政府経済見通しを見る

2023年12月27日 15時28分19秒 | 経済

12月21日に来年度の政府経済見通しが発表されています。来年度予算が未確定ですから閣議了解の段階で閣議決定は年が明けてからですが、多分大きく変わらないと思いますので要点を見ておきたいと思います。

数字は22年度(実績)、23年度(実績見込み)、24年度(見通し)という形ですが、一番大事な経済成長率について見ますと

        2022年度 2023年度 2024年度(単位:%) 

名目成長率    2.3    5.5    3.0 

実質成長率    1.5    1.6    1.3

という事で、来年度は名目でも実質でも今年度より下がることになっています。今年はインフレがひどい年ですから名目が5.5%と高いのは当然ですが、実質成長率も高くなるようです。

それに引き換え、来年は過去2年と較べても0.1~0.2ポイント下がるというのは意外というか、残念な感じです。

去年から今年にかけて19カ月連続で実質賃金が前年比マイナス続きといった実績があるわけですから、来年度は今年度より実質成長が下がるという事になりますと一体どうなるのですかといった感じです。 

ということで国民の生活実感に直結する実質民間最終消費支出を見てみますと、今年度の伸びは僅か0.1%になっています。(民間住宅建設と輸出で成長率を稼ぐという形です)

それが来年度は1.2%になっています。つまり、インフレが収まるからその分実質消費支出が増えるという計算です。(インフレがおまく収まったくれますように)

閣議了解の段階では雇用者報酬の数字はありませんから、政府が賃上げをどう見ているかはわかりませんが、昨年度の消費支出の伸びが実質2.7%ですから、増えたと言っても来年度は昨年度の半分以下の伸びに止まるという事になります。

政府が賃上げを奨励し、最低賃金の大幅アップの方針を出し、主要労組が大幅な賃上げ要求を打ち出し、賃金上昇の期待がもたれ、更にインフレの鎮静化が予想される中で、昨年度の半分も実質消費が伸びないという政府の見込みは、一寸納得しにくいところです。

これでは、政府の言う「成長と分配の好循環」が、何時になったら回り始めるのか、国民の期待に応えられないでしょうし、演説は演説で、発表する数字は別という事になってしまいます。

子育てについては各種の給付金、教育の無料化の拡大、各種関連施設などの充実が言われ、高齢者福祉のための介護労働力などの待遇改善などが言われる中ですから、それでは政府の消費支出が増えるんかと見ますと、公需の寄与度は実質0.2%増で今年度と同じです。

民需の寄与度が実質1.2%で、合計1.4%でこれから外需の寄与度(貿易収支のマイナス)-0.1%を入れれば、実質経済成長率1.3%という事になっています。

民間住宅は落ち込んでいますが、民間企業の設備投資は実質3.3%の伸びで、内需寄与度の1.4%に貢献するという見通しになっているわけです。

元気なのは、企業の設備投資、これが相変わらずの主役、民間消費は貢献度は大きいが伸び率は企業設備より小さい、これでは、消費が牽引する成長経済にはまだまだ行き着かないという政府見通しのようです。

付け加えますと、就業人口は2024年も0.2%(前2年は0.3%)の伸びで、人口減少、高齢化でも、働く人の数は増えているのですから、人口構成が経済成長のマイナス要因にはなっていない(就業人口で見る限り)という事です。


2023年11月、消費者物価沈静化進む

2023年12月22日 17時10分02秒 | 経済
2023年11月、消費者物価沈静化進む
今朝、総務省統計局から11月の消費者物価指数が発表されました。
10月には千数百品目の一斉値上げがあり、未だ、生活必需品等の値上げ圧力は続くかと懸念していたところですが、11月は一転して沈静傾向になっています。 

具体的な動きは下図の通りですが、鎮静傾向と3本の線が1%ほどの範囲内にまとまって来ていることが解ります。物価を取り巻く情勢が平穏になって来たという事でしょう。

   消費者物価主要3指数の推移

           資料:総務省統計局「消費者物価指数」

「総合」、「生鮮食品を除く総合」の指数は下降に転じています。「生鮮食品とエネルギーを除く総合」はまだいくらか上昇傾向ですが11月は105.8から105.9への0.1ポイントの上昇です。この指数(いわゆるコアコア指数)がこの所一貫して消費者物価を押し上げてきましたが、ようやく国内インフレ要因が消えて来ているという所でしょう。

10月には生鮮食品が暑すぎた秋のせいで値上がりでしたが、それも落ち着き、政府が補助金を出して政策的に引き下げていた電力やガソリンも原油価格の下落などで沈静化して来た事があると思います。

コアコア指数の上昇が、一斉値上げなどの動きもあって心配されてきていましたが、調理・加工食品、飲料、調味料といった食品類、それにトイレットペーパーなどの必需品についても、値上がりすると買い控えが起きるといった現象が見え始めたようです。

今春闘の賃上げが思ったより小幅だった中での消費者物価上昇で、実質賃金の低下が19カ月連続といった状況では、そろそろ値上げも限界という意識が出てきたのでしょう。
この辺りを、対前年同月上昇率で見ますと下図です。

消費者物価主要3指数の対前年同月上昇率(%)

               資料:上に同じ

2月に電力ガスなどが政府補助金で下がり、緑色のコアコア指数が独歩上昇でしたが、それも夏以降は横ばい状態のなり、秋に入って上げ幅の縮小となって来ています。

11月には、生鮮食品、エネルギーが下げ、天候や、輸入エネルギーが下げ、残った食料、日用品などのコアコア指数も、値上がり→買い控えといった現象から安売りが頻繁に見られるようになるなど3本の線が揃って下がるという現象が出て来たようです。

一時の円安による輸入物価の上昇も、為替レートは円高に転じるようで、国内情勢の変化と相まって、消費者物価の上昇要因も次第に消えてきた、というのが現状ではないでしょうか。

こうした状況が続き、その上に、来春闘での主要労組の10000円を越える賃上げ要求が成果を出せば、日本銀行が望んでいるような日本経済のバランス回復、ゼロ金利脱出で、国民の目指す元気な日本経済に向かう可能性も出て来るという期待を持って年末年始の物価の動きを追いかけていきたいと思っています。
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<訂正>11月24日付の当ブログの10月分のコアコア指数の上昇率に誤りがありました。
今回の数字は訂正済みです。大変申し訳ありませんでした。

日銀は目指す日本経済の具体的イメージを

2023年12月21日 14時11分10秒 | 経済
先日の記者会見で日銀の植田総裁は、年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると発言されました。
確かに、我々もいろいろなニュースから、これから少し変化の時期なるような印象を受けています。

10年以上も金融緩和一本でほとんど動かなかった日銀も、何かしなければならない時期になると感じられ、出口政策論気が賑やかな中で、日銀総裁が「チャレンジング」といわれる気持ちもわかります。

所がマスコミでは、この「チャレンジング」という言葉ばかりが大きく取り上げられ、これは出口に向けて動くことの示唆だという意見から、ただ難しくなるという意味での自覚も含めての発言といい意見までいろいろです。

その結果、その筋の専門家からはそれぞれに多様な解釈や解説が示され、問題を益々コンガラガラせているような感じです。

円レートは140円と150円の間を行ったり来たり、日経平均は1000円幅の上下を繰り返すといった状況です
マネーゲーマーたちは、これがビジネスチャンスとばかり、ボラティリティ―を高めてキャピタルゲインを追求するための格好の材料にしています。

マネー資本主義の時代だから仕方ないという事でしょうか、実体経済には迷惑なこうした活動を助長するのは日銀としても本意ではないでしょう。

そうした意味では従来金融政策以外あまり口にしなかった日銀が、今回の会合では来年の春闘での賃金決定に言及している事は大変結構だと思います。

但し、「賃金の引き上げを伴う物価の上昇が2%になるまで」という政府日銀の常套句では国民の具体的理解は困難でしょう。
物価上昇には必ず名目賃金の上昇は絡んでいます。賃金インフレ、輸入インフレ、便乗値上げの3大要因で物価は上昇するのです。

日銀の言うのは名目の上昇が主体になって2%のインフレという事でしょうが、アメリカの金利が上れば円安で日本の物価は上がります。アメリカの金利が下がれば円高になって、円安の影響(輸入インフレ)は消えるでしょう。

その時、春闘で名目賃金が上がれば、賃金上昇主因の物価上昇になるでしょうが、円レートの正常化、安定化は「日銀の仕事」でもあるのです。待つだけでいいのでしょうか。

日銀には、来春闘後が絶好のチャンスになるかもしれないという意味で、チャレンジングなのかも知れませんが、そう上手く行かない可能性も残るでしょう。

この辺りを少しハッキリ説明をすることで、日銀の考えているイメージが解り易くなるのではないでしょうか。

学者専門家の言葉は素人には解りにくいですが、何と何がこうなれば日銀はこう動くという望ましい筋道とビジョンを国民に分かり易く示してほしいといつも感じるところです。

基幹労連12000円要求方針、鉄鋼隔年春闘方式見直しも

2023年12月20日 15時16分36秒 | 経済
来春闘に向けて基幹労連は、月12000円以上という要求方針案を示したという報道がありました。

12000円以上というのは今春闘の3500円に較べれば3倍以上、過日取り上げました金属労協の10000円を超える大幅なものです。

基幹労連は、鉄鋼、造船重機、非鉄金属を中心に、建設、航空宇宙、産業機械などの分野を要する基幹産業の産別労組です。
鉄鋼労連はかつては春闘のリーダーで、鉄鋼産業の賃金決定は春闘の全体に大きな影響を持つ存在でした。

第一次石油危機の際には、当時の宮田義二委員長(のちの松下政経塾長)が経済整合性理論を提唱、年率22%のインフレの克服を可能にし、「ジャパンアズナンバーワン」の基礎づくりにも貢献しています。

あの年、急激なインフレの中で、更なる大幅賃上げを求める労組が殆どだった中で、敢えて賃金インフレ抑制のために、大幅賃上げ論を抑え、日本経済の安定化を考えた決断は、経済整合性理論という言葉と共に、労使関係の歴史に大きな足跡を残しました。。

その鉄鋼労連を主要な核とした基幹労連は、世の大勢に流されるのではなく、その時代のあるべき姿に整合した理論と活動方針を持つという明確な意識を持っているようです。

連合が今春の要求に「以上」を付けただけの中で敢えて、今の日本に要請される労働組合の行動、適切な水準の賃上げ要求の重要性を認識しての方針決定かと思量するところです。

同時に、日本経済の安定、労使関係安定の中で試みた長期賃金協定を目指す隔年春闘も、内外情勢波乱の中では、単年春闘に切り替えるという方針も、臨機に状況変化に応じ適切な判断をするという意味では、同様な視点からのものと理解できます。

金属労協の10000円以上、基幹労連の12000以上という数字の中で、連合の定昇込み5%以上という方針は次第に影が薄くなりそうですが、多くの中小企業を傘下に持つ連合の組織を考慮し、些か慎重に過ぎたという感も持つのではないでしょうか。

勿論、金属労協としても基幹労連としても、個々の企業の労組は殆どが連合傘下でしょう。
連合も「以上」とついているからいくらでもいいという事ではないでしょうが、春闘のキックオフは新年に入ってからですから、何か意思表示が欲しいところです。

特に、「公正取引委員会」が、賃上げによるコスト上昇を価格転嫁する際の行動指針を発表しているというその後の状況変化も勘案すれば、中小企業の賃上げについては、「賃金支払い能力」の束縛は、来春闘では「取り払われた」という事でしょう。

中小企業労使のためにも、より柔軟な賃上げ要求基準を考えても良い、あるいは「考えるべき」という判断があってもいいのではないかと思われます。

中小企業の場合は、平均賃金水準の低さから、賃上げ率は高く見えても賃上げ額は低いのです。「公正取引委員会」の指針は、中小企業の人手不足、人材確保への対抗策に「お墨付き」が出たと言えない事もないでしょう。

これからも、種々新展開があるかもしれません。労使の賃金決定の生み出す活力で、日本経済を活性化の軌道に乗せられるか、年が明ければ始まる2024年春闘に期待したいところです。

大幅賃上げで経済は 繁栄?/衰退? 日本はどちら!

2023年12月15日 14時35分51秒 | 経済
このブログでは、平均賃金水準の10%引き上げで日本経済の活性化を、と論じて来ていますが、常識的には「そんなの無理」という感覚が大勢なのかと思います。

しかし現状の日本経済を考えればそうかなと思う方もおられるでしょう。多分その理由は「今までの賃上げで景気は良くならなかった」「企業業績と賃金のアンバランス」といった、状況観測からの合理的な判断でしょう。そのあたりを少し具体的に考えてみましょう。

先日、公正取引委員会が、賃上げでコストが上ったら、その分を「価格転嫁する際の指針」を出しました。このブログでも取り上げ、この指針は素晴らしいと述べました。

今の日本経済の中身を見ますと(2022年度)GDP:566兆円、雇用者報酬:296兆円(労働分配率(52.3%)です。
雇用者報酬というのは、皆様ご存じのように現金給与だけではなく企業の支払う人件費(社長以下のすべての従業員分で、企業の払う社会保険料や福利厚生費、教育訓練費などすべての雇用コストを含む)の合計です。

そこで、このグログの提言の様に、平均賃金水準を10%上げます。具体的には雇用者報酬を10%増やしてみます。296兆円×1.1で326兆円(四捨五入しています)になります。

増加した30兆円の分企業の利益が減ったら大変ですから、そんな事にならないように公正取引委員会は30兆円は「全部価格転嫁をしなさい」という指針を出しています価格転嫁すれば、利益に食い込むことはありません。

各企業の賃上げの結果は、それぞれの企業の売上高に加算されて最終的には消費者が支払うことになります。つまり、人件費の上がった分だけ物価が上がるという事です。

一般的な言葉でいえば「賃金インフレ」が起きたことになるわけです。
どのくらい賃金インフレが起きるかの計算は、賃金インフレで増えたGDP 566兆円+30兆円=596を、増える前のGDP566兆円で割れば出ます。
596/566=1.053 つまり5.3%のインフレになるという事です。

これが、平均賃金水準を10%引き上げて、その分を価格転嫁したときの結果です。賃金は10%上がり。物価は5.3%上がることで 新しい経済バランスが生れます。

利益は金額としては影響をうけません。しかし賃金が10%上げりますから労働分配率が上がり(これは上の数字から計算可能、52.3%→54.7%)、購買力が家計に移転してその分消費需要が増える可能性が大きくなり、多分これまでの消費不振経済は解消の方向に向かうという事です。翌年からは通常の賃上げに戻って、政府・日銀の2%インフレ目標、「実質成長率プラス2%インフレ分」ぐらいを目指せばいいのです。

ところで、何故そんな簡単なことがやれないのかという質問が出て来そうです。
原因は大きく2つでしょう。

第一は、国際競争力がなくなるという心配ですが、インバウンドの盛況が示すように日本の物価は安い、国際競争力は強い、それに今の円レートは円高と言っても140円(2年前は109円)、5%程度のインフレで国際競争力は失われる事はないでしょうという回答になります。

第二は、賃金・物価のスパイラルが起きる恐れの心配ですが、日本の企業は真面目で、賃上げしたと偽って便乗値上げが一般化するような恐れはない(公正取引委員会の指針を守れる)という企業の真面目さへの信頼感が回答です。

こんな事を「政労使」で話し合って、国民の納得を得て実行できるような日本(石油危機のころはそんな雰囲気がありました)であってほしいと思っています。

米国の金利政策の転換と円レートそして春闘

2023年12月14日 17時14分12秒 | 経済
岸田さんは記者会見で「先の事など考えられない」と言っていました。どんな場合でも総理がそんなことでは、一国の将来は危ないですね。
本当に、国・国民の事を考える政治家が出て来てほしいとつくづく思います。

経済政策は、常に先の事を考えないと出来ません。今、アメリカ経済はFRBの金利政策に大きく依存していますが、アメリカは、今、金利政策の転換点にあるようです。

アメリカの金利政策の舵を取る会議FOMCでパウエル議長は相変わらずインフレ懸念を指摘、政策金利引き下げ一辺倒ではない姿勢を示していますが、メンバーの雰囲気からすれば、金利は今がピークで来年、再来年、3年後にかけての予測のドット・チャートが示されました。

マーケットの方はすでに政策金利引き下げを見越して、ダウ平均は大幅高、為替市場では円レートが142円台前半といった円高に振れたりしています。

日銀の動きは慎重ですが、アメリカの金利政策が引き下げ方向に変われば、当然、円高は進み、日本の輸入関連産業は一息かも知れませんが、輸出産業で差益が差損に変わります。
株式市場はこの所の動きからも解るように下押しムードが強くなるでしょう。

日銀を困らせていた日本の物価上昇は、鎮静傾向となる可能性が高く、いよいよ長年の異次元金融緩和が終わり、金利の正常化(ゼロ金利脱出、金利の上昇)のプロセスに入る段階になりそうです。

長期的に見れば、経済実態に応じて金利が動くというのは、まさに経済の正常化ですが、ゼロ金利に慣れてきた企業の戸惑いもあるでしょう。

貯金に金利が付けば、喜ぶ家計も多いと思いますが、住宅ローンの金利の問題もあります。
また、国債にまともな金利が必要となれば、国債発行で可能になっていた政府の政策はどうなるのでしょうか。必然的に「先の事」を考える必要に迫られることになります。

アメリカの金利政策の変更は、これからの日本経済の在り方に、多様な形で大きな影響を与えるでしょう。
それは長すぎたゼロ金利の時代という異常な経済・金融政策の正常な金融経済への復帰ですが、企業も、金融機関も、政策当局もそれに慣れるのに少し時間がかかるでしょう。

日本経済全体がスムーズに回るための多面的調整の時間が必要でしょう。それは長期停滞から日本経済の成長経済への復帰のための時間かもしれません。

そのためにも、アメリカの金融政策の動きを的確に読み、国際投機資本の動きや円レートに対応して政府、日銀がどこまで適切な政策が打てるか、更には、その中で日本の労使がいかなる春闘の結果を生み出すか、それぞれ大きな課題を背負っているはずです。

この大事な時期に、この政治の醜態です。これでは政府に代って民間労使が余程確り
しなければならないという事のようです。

このブログでは日本経済再生に最も重要なのは、賃金水準を日本経済に適切な水準まで、早期に引き上げる事と指摘していますが、この水準の策定には、上で論じた問題は総て関係します。

FRBが3年後までの政策金利の予測を議論するのであれば、日本では、3年後までの賃金水準のシミュレーションを示すのもいいのではないでしょうか。

1974年石油危機に際しては、当時の日経連が3年後までの賃上げのガイドポストを出したことがありますが、この大きな転換期の中で、賃金、物価、経済成長などのシミュレーションの数字を出し、「成長と循環の好循環」などという言葉の遊び(失礼)だけではない議論が必要なのではないでしょうか

輸入物価上昇、国内物価鎮静、2023年11月

2023年12月12日 14時05分04秒 | 経済
政治の泥沼は底なしの気配ですが、今日は日本銀行から11月の輸入物価、企業物価が発表になりましたので、例月通り、東京都区部の消費者物価11月速報を加え、主要3物価の動きを見ておきたいと思います。

マスコミの報道は企業物価の上昇が僅か0.3%になったという沈静ぶりを指摘しています。ところが、企業物価に影響を与える輸入物価を並べてみますと、輸入物価はこの所上昇に転じています。

勿論ここで見ている輸入物価は円建てすから円安になると上昇することになり、このところの円安の影響は出ているのですが、契約通貨建ての指数もこの所上昇の気配もあります。

国際紛争激化の中で、国際資源価格の上昇などが起きれば、また世界経済が混乱する可能性が大きいので、何とか安定してほしいと思うところです。

日本では円高の気配もあり、円高になれば日本への影響は違ってきますが、為替も物価も安定する事が経済安定の基礎ですから、G7やG20の努力が期待されます。

現状で見れば、輸入物価の幾らかの上昇がありながら、日本の国内価格は企業物価も消費者物価もようやく落ち着き、来春闘次第では日本経済も長期低迷からの脱出が期待できるかという所に来ているように感じられます。

輸入物価、企業物価、消費者物価(東京都区部)3指数の動き

                  資料:日本銀行、総務省

主要3物価指数の動きは上図の通りで輸入物価はこの夏からじり高ですが、これは円安の影響が大きいので、今後のアメリカの金利動向の円レートへの影響も含めて、国内物価は安定の方向のようです。問題は消費者物価、その中でも食品中心の異常な上昇も含めて沈静に向かうという順調な推移を望むところです。

全国の消費者物価の先行指標でもある東京都区部の消費者物価の11月速報では、指数そのものも下げていますし 前年比の上昇率も、10月の3.2%から11月には2.6%の上昇と大きく下げたことが下の図からも見て頂けます。

    主要3物価指数の対前年上昇率の推移

                資料:上に同じ

賃金の動きがもう少し高くなって、実質賃金の連続下落記録も打ち止めになってくれれば、家計の雰囲気も、消費支出の元気度も徐々に良くなることも予想されますが、年末商戦、新年の消費需要の展開はどうなるでしょうか。

あまり楽観的な予想はしない方がいいのかもしれませんが、政治がこの惨状でも、日本は、国民が確りしているから大丈夫という事になるよう、国民の覚悟が必要というのが、この所の政治、経済のニュースの中から出て来る当面の日本の進路ではないでしょうか。

政治家の発言は嘘ばかりでも、日本の統計は(時にミスや不祥事もありますが)まだ確りしていると思いますから、統計を頼りに、政府の失政の実態を明らかにするような国民の努力も必要なのかもしれません。

日本経済の活性化:消費需要の拡大に注力を

2023年12月11日 16時24分13秒 | 経済

日本の政権が立派そうに見えながら、内実が解って、あきれ果てたところです。
そんな政権に国の経済政策などやらせられないですね。やっぱり民間が頑張らなければどうにもならないという事になるようです。。

民間の企業労使、消費者、国民が確りしないと、日本は堕ちるばかりでしょう。
という気持ちで、家計調査の分析を、来月を待たずに早目にやっておくことにしました。

さてどうするかですが、現状、最も不足しているのは政治家の倫理感、その次が、個人(家計)消費支出だというのがここでの視点です。

実質賃金が19カ月連続で実質前年比割れ、というのはマスコミの報道で皆様ご承知です。
賃金の上昇が少し、しかし物価が上がっているというのがその原因ですが、生活の現場の「家計」の動きを見てみたのが下の図です。

  2人以上世帯の消費支出の推移:名目と実質(2020年=100季節調整値)

                   資料:総務省統計局「家計調査」

図にはありませんが、「平均消費性向」は2015年ごろからずっと低下傾向で、それが消費不況の元凶でしたが、2022年に至りコロナの終息観測などから回復基調になりました。賃金上昇は小幅でも、コロナ脱出の解放感などもあったのでしょう。

家計調査の名目消費支出の動き(青い線)は、2022年は上昇傾向です。2022年には消費者物価の上昇も進みましたが、それを上回る消費支出の増加で、物価上昇を差し引いた実質は100以上を堅持しています。

しかし2023年(今年)に入りますと、2月から7月までは名目消費支出が減速、それに物価上昇が拍車をかけ実質消費水準(赤い線)は96に落ちます。(青線と赤線の差が消費者物価の上昇です)

ところが8・,9・10月と消費支出は再び増加に転じました。しかし、消費者物価の上昇が大きく実質消費は上りません。
その結果でしょう、11月15日、内閣府発表の7-9月のGDP速報(実質表示)では、消費不振が際立っています。

.こうして見てきますと、家計の消費意欲は、コロナが5類になって多少活発化の動きはあるようですが、消費者物価の上昇にどこまで邪魔されるか、消費意欲と消費者物価上昇のつばぜり合いの気配です。

このつばぜり合いに決着をつけるのは、本来は、来春闘での、家計に安心感を齎すのに十分な賃上げでしょう。このブログでは平均賃金の10%上昇を提言しています。

これは、過日取り上げました公正取引委員会の「賃上げの価格転嫁のための行動指針」の正確な活用によって十分可能で、日本経済の正常化、活性化の最も適切な近道でしょう。
 
賃上げが小出しでは、現在の日本の消費不振経済の立て直しは出来ないでしょう。
政府は何もしくてもいいのです。国内経済問題の解決は、基本的には労使の判断で可能なことなのです。
これからの3か月を労使の熟考と決断の時間として活用してほしいところです。